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去りぬ想い、去りぬ世界。  作者: 猫樹政也
16/29

ただ一人の親友に身を任す


帰宅後。


若干、変な雰囲気になっていた。

その雰囲気になった理由は、仲春はわかっていない。


「なにかあったのか、つぐみ?」

「なにかって、なに?」

「それがわからないから訊いてるんだよ」

「大丈夫、なにもないから……」


つぐみは自分の部屋に向かった。


「んー……」


仲春は一人で悩んでいた。


そんな時、携帯の着信音が鳴り響いた。


「南風か……」


ディスプレイに自分の友の名前が映し出されていた。


「もしも―――」

「助けてくれ仲春!」


その緊迫に満ちた声に仲春は驚いた。


「ど、どうしたんだ」

「来やがった。俺のところに『司者』が来やがった」

「ッ!―――今どこにいる!」

「今、学校にいる!頼む早く来てくれ!」

「待ってろ!」


仲春はジャージ姿のままで外へ出た。


つぐみはそれに気付かなかった。




しばらくして、夜の学校に着いた。


既に学校には誰もいない。


だが、校舎から灯りが見えていた。


「火の『司者』だよな」


仲春はその灯りのもとへ向かった。




目的地に着いた。だが、誰もいなかった。

そこには宙に浮いたままの火の玉があった。


「どこだ……」


その時、下の階から爆音が聞こえた。


仲春は急いで向かった。

爆音がした場所に近づくと、煙が見えた。


「あそこか」


足音が響くことも気にせず、そこへ走っていく。


煙のもとに近づいた瞬間、


「仲春、来るな!!」


そこから火の玉が襲い掛かってきた。

が、南風の注意のおかげで、すんでのところで回避できた。


「南風、こい!」

「お前の姿が見えねぇ!」

「くそっ!」


仲春はその教室の中へ向かった。


「どこだ!」

「こっちだ!」


声のする方へ向かった。


だが、


「がはッ!?」


誰かに、腹部を蹴られた。


煙と暗闇のせいで、相手がどこにいるのかわからない。


「くそ……」


仲春は立ち上がり、忍び足で南風に近づく。


そして、やっとたどり着いた。


「大丈夫か?」

「あぁ、なんとかな……」


そう言って、南風は仲春に憑依した。

仲春の見た目に変化はなかった。


南風が憑依をし終えたとき、煙が晴れた。


「あんたが、『司者』か」


目の前の男を睨み付けた。


月光が差し込み、姿は確認できた。


「あぁ、そうさ」

「学校をめちゃくちゃにしやがって」

「どうせ、もうすぐ世界はやり直されるんだからかんけぇねぇだろ」

「なんで、やり直す」

「なんでだぁ?面白いからに決まってんだろ。人を殺せるんだぜ?しかも、殺されたら姿は消える。

 ただの行方不明扱いで、完全犯罪だぜ。サイコ―におもしれぇじゃん」

「そんだけの理由でか……」

「話はこんぐらいにして、さっさと殺されてくんねぇか?いや、待て。お前邪魔だな。

 お前を殺したらめんどくさいことに……いや、だれにも見られてないから大丈夫か……」


男は掌に火の玉を浮かべ、それを仲春に投げつけた。


それはとても遅くに見えた。

かわすことはとても容易かった。


だが、それは爆発した。


爆風に巻き込まれ、仲春は外へ吹き飛ばされた。


三階から落ち、地面に激突しても仲春は死ななかった。


男があとを追って飛び降りてきた。


「ぐっ……」


ゆっくりと立ち上がる。


「やばいな。外だと人が気づきやすいかもな……。おい、さっさと出てこねぇか。じゃないとこいつを殺すぞ」


南風は少し悩み、憑依を解こうとした。


だが、仲春がそれを静止した。


「やめろ」

『なにがやめろだ。お前も死ぬぞ!』

「お前だけ死なせるなんて、友達じゃねぇよ」

『なにが友達だ!今はそんなのかんけぇねぇだろ!お前にはつぐみちゃんがいるだろ!どうするんだよ!』

「あいつなら、わかってくれると思う」

『兄妹ぶってるんじゃねぇよ!お前は好きなんだろ!』

「あぁ、そうさ。好きだよ。だから、あいつは俺のことを理解してくれると信じてるんだ」

『なんだよ……どうなっても知らねぇぞ』

「承知の上だ……」


その時、仲春の髪が緋色に染まる。

髪型も南風と同じになり、それは完全憑依の証だった。

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