7話
俺が女だったことが発覚した。つまり、俺TUEEE!からのハーレムは無理である。作ろうとして逆ハーとか耐えられない。この世界での夢が崩れ去ってしまった。実に認めたくない内容だった。ただ、女として生まれてしまったからには仕方がない。女として生きることにしようと思う。ただ、結婚とか正直無理だろうなぁ。男を好きになれって…。
俺TUEEE!からのハーレムはできないと分かっても訓練はやめられない。この世界で約4か月続けていたのである。もはや癖である。やめられるものではないし、ここでやめるのも癪である。なので続けている。訓練のおかげか、最初は手首までだった魔力?の塊は右手に集めようとすると肘まで集まった。もちろん、魔力?の密度をあげれば右手、さらには爪の大きさくらいに圧縮できるが、最初と同じ程度の密度だと指先から肘までである。体外に出すのは全身からにじみ出ている以外は成功していない。にじみ出る量を増やそうとしても全く増えないのだ。新たな発想が必要なのだがなかなか思いつかない。こういうひらめきは考えれば考えるほど煮詰まってしまいいい答えが出ないものである。なので気長に待つことにした。決してあきらめたわけではない。面倒だからでもない。断じて違う。そう、違うのだ。遠距離魔法のロマンへの熱が冷めてきているはずがないではないか。
魔力?といえば、どうやら俺は体外ににじみ出ている魔力?を見ることができるらしい。体の表面から3cmくらいの白っぽい黄色の靄が出ている。目が見えるようになるにつれて、靄もはっきりと見えるようになった。この靄は服を着ていてもその外側に出てくる。さっきは体の表面と表現したが、皮膚だけでなく、人が着ている服や持っているものからも出ていた。魔力?がにじみ出ているのは人だけではない。牛や羊からも出ていたことから、動物からも出ていたことや植物からは出ていなかったことから、魔力?は人を含む動物にあるものなのだろう。ただ、人と動物では靄の見え方が違っていた。人からにじみ出ている靄は白っぽい黄色の靄がキラキラしていて、動物ではそのキラキラがない。キラキラといってもまぶしいわけではなく、とりあえずキラキラが一番わかりやすいだろうと思いキラキラといっている。キラキラってなんか女の子っぽいじゃない?冗談はさておき、不思議なことに俺からにじみ出ている魔力?は動物と同じでキラキラしていなかった。転生によるまさかのハンデもちである。だってあるのと無いのだったらある方がいいじゃん。しかも動物と同じだよ?これはもうハンデとしか考えられないでしょ。このハンデを補うためにも訓練は欠かせないのである。
そろそろ両親が起きてくる時間である。この世界には時計というものがなく、時間は大体太陽の角度で見るのだが、うちの両親の起床時間は早い。朝日が昇る前の空が少し明るくなってきた頃に起きだす。牧場の朝は早いよね。なぜおれはこんな早くから起きているかというと、ちょっと目が覚めてしまって、寝るのも嫌だったので今までのことを振り返っていたのだ。決して怖い夢を見てもう一度寝るのが怖かったわけではない。幽霊に追いかけられる夢を見たわけではない。必死に逃げるもはいはいすらうまくできないので動けず、幽霊に襲われる寸前までいったわけではない。早く起きないかなぁ。
両親が起きだしたようだ。レオナールは起きるとこちらに顔をだし
「レーヌー、今日もお仕事がんばってくるよー。先ずは羊の小屋出しだぁ。」
と手を振りながら家を出て行った。起きてすぐ、元気のいいことで、目覚めがいいってのはうらやましい限りです。
レオナールが起きて、その声で起きたのか、ローヌが起きてきた。
「レーヌちゃんはもう起きてるの?早いわね~。」
とこちらに声をかけてきた。
「じゃあ、行ってくるわね~。牛さんのミルクをもらってくるの~。」
簡単に準備を整えたローヌは家を出て行った。しばらくすればローヌは帰ってきて朝食の準備を始めるだろう。
朝食ができるまで暇なので魔力?の訓練をする。いつもは朝食ができてから起きているのでこの時間に魔力?の訓練をすることはないが、体力もついてきたようだし、訓練で気絶することもなくなったため、訓練の時間を増やしても問題ないだろう。
先ずは右手に魔力?を集める。手先から肘まで魔力?でいっぱいになったところで次はこの魔力?を圧縮する。肘から手先側へと圧縮していき、最終的に人差し指の爪あたりまで圧縮する。圧縮したまま魔力?の塊を右手人差し指から、中指、薬指、小指、親指、と移動していく。次に左手へ移動させ、同じように人差し指、中指、薬指、小指、親指へと移動させる。再び右手へ移動させ同じようにやる。これを疲れるまで繰り返し、まだまだ朝なので余裕を持って訓練を終わらせた。終わらせるときは圧縮を解除し、分散させると勝手に体の流れに沿って元の動きに戻る。この魔力?は一度操作するとしばらく操作ができなくなる。どんなに集中しても動かせないのである。ただ、分割して操作すれば操作できるため、動かなくなるのは直接操作した魔力?だけのようだ。時間がたてば操作できるようになるので問題ない。
この訓練では、魔力?の圧縮に体力を使うことに加え、圧縮した魔力?の操作は非常に難しく、集中力も鍛えられる。魔力?を分割して訓練に使わないのは一度に圧縮した方が効率がいいからである。今は魔力?を使えなくても困ることはないし、時間がたてば復活するので一気に消費してしまった方がいいのである。ただ、すべてを消費することはできないらしく、ある一定量の魔力?が必ず体を循環するようになっており、その分の魔力?は操作対象外になるみたいだ。まぁ、操作停止中の魔力?がそれを担ってくれるので圧縮を2回に分けてもいい気がするが、もう少し体力がついてからにしようと思う。
「ただいま。」
「お帰りなさい。レーヌちゃん、朝ご飯ですよ~。」
どうやらすでにローヌが帰っていたらしく、レオナールを迎えていた。朝食の準備も完了したとのことだ。集中していたから気づかなかった。
今日の献立は黒パンに溶けたチーズを乗っけてあり、そのほかには何か肉や野菜の入ったスープ、牛乳となっていた。それなりにおいしそうだ。いいにおいもしていて食欲をそそる。まぁ、俺はまだまだ母乳だが…。