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86話

 午後の授業は何事もなく終わり、俺は先生の質問に対し、筆談で乗り切ったのだった。



 

 それから時は流れて、早11の月。最近はある話で盛り上がっている。それは学校対抗戦だ。国中の学校から代表者が5人ずつ団体戦をするためにこの学校に集まるのだ。条件は、小等部または中等部に通っていることで、高等部に通っている生徒は参加できないのだ。というのも高等部は王都の学校にあるだけなので、年齢差ができ、ずるいとのこと。そのため、中等部までの生徒が参加することになっているのだ。


 で、うちのクラスでは小等部1年なのにもかかわらず代表者が一人出た。それはルネである。まぁ、あの速さなら納得なのだが、俺には少し心配していることがある。打ち合ったことがある俺だからわかるのだが、ルネはパワーが極端に少ないのである。布の服くらいなら貫けるのだが、皮の防具だと確実に弾かれてしまう。腕と握力が持たないのだ。最近は気術で『ストレングス』を練習しているようだったが、未だに成功はしていない。そのため、あまり活躍できるとは思えない。

 さらにルネの弱点はもう一つあり、残身が長いのだ。槍を突き出してから大体10秒ほど硬直してしまう。何故だかわからないのだが、残身が長い。それがルネが速く動ける秘密につながっているのかもしれない。そのため、1対1ならばなんとかなるのだが、団体戦となると厳しいところがあるのだ。


 最近はルネと組んでることが多いオーギュストも気づいているようで、文句を言っていた。何故、俺が選ばれなかったのか、と。オーギュストは体格はいいが強さはそれほどでもない。中等部の人たちの方が強いだろうな。例えば、エデとか。そう、この学校対抗戦にはエデも選ばれたのだ。そのため、寮でもその話で持ちきりだ。

 エデは今回が2回目の出場らしく、また、去年は負けてしまったそうだ。しかも今年でエデは中等部を卒業する。ラストチャンスのリベンジ戦というわけだ。張り切らないわけがない。なので、朝の日課、俺たちの訓練にも顔をだし、一緒に訓練をしている。やっぱり勝って欲しいな。



 話は変わって、俺のこと。俺は相変わらず魔法の標的となっている。魔法の回数も増え、また、種類も増えている。そのため、俺も結構食らってしまうことがあるが、本当に危険なものは避けて必ず避けている。一番驚いたのは風の刃が飛んで来た時である。風の刃のスピードが遅く、魔力を溜めるのにもだいぶ時間が掛かっていたので何とか避けれたが、少しだけ袖を切ってしまった。

 あの時は本当にびびった。まさか風の刃が飛んでくるとは思わなかったからな。なんだかいつもより時間がかかってるくらいにしか思わなかったのだ。魔法が発動されたら机が幾つか崩れ落ちてしまったのだ。打った本人が一番驚いていたのかもしれないな。幸いけが人は出なかったが、フランクにこっぴどく怒られていた。

 それからは俺に掛けられる魔法は比較的安全なもの、範囲が狭いものになり、ちょっとだけ安全になった。で、今、一番強烈なのが、『ポストウォーター』だ。これは円柱状に水の柱が発生する魔法で、魔力は床にしか集まらない。ちょっと見逃すと食らってしまう。しかも発動している時間が長く、息を止めているのが辛いのだ。もがきながら外に出ることは可能だが、ちょうど息を吐き出した時に発動されると本当につらい。その日は一日中何もしたくなくなる。


 今日も学校に行き、自分の席を見ると驚いたことに、俺の席がない。いや、あるにはあるのだが、形が歪なのだ。よくこんな形でその体勢を保っていられるなというほど歪なのである。おそらく『ミラージュ』による幻影だろう。『魔視』のおかげでキラキラして見えるし、例え、『魔視』が無くてもあんなに歪なら誰でも気づく。よくあんなので成功すると思ったな。


 俺はキョロキョロして、自分の席を探す。あった、執事たちの後ろだ。とうとう執事たちも動き出したか。お前ら大人だろう。子供の遊びに手を出すなよ…。

 執事の後ろには机と椅子が二つずつあった。俺のと、もう一つはエリザベートのだ。エリザベートもたまに魔法の標的にされているし、今回もそうだろう。エリザベートの席があった所にも歪な幻影が見える。


「お嬢さま、お気を―――」

「キャッ。」


 は?お前馬鹿だろ。見ていないにもほどがある。イネスの忠告も間に合わず、幻影の椅子に腰を掛けようとして、そのまますり抜け、尻餅をつく。いや、これは絶対わざとだ。でなきゃおかしすぎる。


「はぁ、何なんですの、もう!誰ですの?こんなことしたのは!」

「エリザベート、お前馬鹿だろ。そんなの誰も引っかからないぞ?」

「オーギュストさんは黙っててもらえるかしら?誰なんですの?ただじゃ置きませんわよ?」

「あ?お前、俺になんて口利いてるんだ?お前、自分の身分がわかってんのか?」

「い、いえ、あの……。」


 あー、喧嘩になりそうだな。こいつはまずい。手助けしてやるか…。


「……オーギュスト、たいこうせん。」

「あ?お前今何つった?」


今のオーギュストに対抗戦は禁句だ。選ばれなかったことが相当悔しいようで、直ぐに絡んできてくれる。

 オーギュストは俺の胸倉を掴むとそのまま持ち上げた。身長差がかなりあるので、完全に宙に浮く。まぁ、痛くも痒くもないので問題ない。


「やっちまえー!」

「オーギュスト、いけー!『魔王』なんてコテンパンだ!」

「『魔王』なんて倒しちゃえー!」


 ヤジがうるさいな。まか、自分たちでは倒せないからオーギュストに頼むってことか。


「お前らうるせぇぞ!俺に命令するな!」

「「「………。」」」


 まぁ、そうなるよな。オーギュストは指図されるのが嫌いだ。しかもそれが自分より弱い相手となると尚更だな。


「チッ。冷めちまったぜ。」


 そう言って俺を投げ捨てる。そんな荷物みたいに扱わないでほしい。俺は床を転がる。追撃はないようなのでそのまま身を任せる。痛くないので無理して止まる必要はない。

 と思っていたら、囲まれた。蹴りを入れられる。痛くもかゆくもないが、服が汚れる。なので足を掴んで蹴りを止める。



ゴン



おい、今、頭蹴ったの誰だ。いい音響いたぞ。


「な、なんだよ!」

「ク、クソッ、覚えてろよ!」


俺が睨むとそそくさと離れていった。睨まれたくらいでやめるなら初めからやらなきゃいいのに。しかも体勢は向こうの方が有利。何故、そこで諦めるのか。俺にはわからないな。



 俺は立ち上がって席を戻す。ちょうど登校してきたセリーヌが手伝ってくれた。エリザベートの分もついでに運んでやる。エリザベートはオロオロしてたが、まぁ、いいや。


 


 今日は朝から散々だったな。




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