83話
5月19日 誤字修正
昼食を終え、教室で待っていると授業の初めを告げる鐘が鳴り、しばらくしてフランクが入ってきた。
「レーヌ、付いて来い」
入って早々そう告げてきたフランクに俺は付いて行く。間違いなく無属性の件だろう。俺の否定を信じていないようだ。まぁ、そうだよな。自分の属性を知らなかったようなやつだし、魔術の使用経験だってない。そんな奴の言葉が信じられるわけないだろう。
やって来たのは校長先生の建物。どうやら校長へ報告するらしい。校長はたぶん俺の魔力がないことを知っていると思うし問題ないだろう。少し心配していたが、大丈夫そうだ。俺はフランクに付いて、中に入って行く。
コンコン
「どうぞ。」
「失礼します。」
「しつれい、します。」
「よく来たね。レーヌの事だね?」
「はい、校長はレーヌが無属性だと知っていたんですね。」
「うん、まぁね。」
「何故『精霊に愛されなかった者』が学校にいるんです。一体どうするんですか?」
「そうだね。…フランク、レーヌと二人で話したいんだが。」
「しかし!………わかりました。私も授業がありますのでこれで。」
「あぁ、わざわざありがとう。」
「いえ、これも教師の務めかと。」
「そうだね。それでも、ご苦労様。」
「ありがとうございます。では、失礼します。」
フランクが部屋から出ていき、俺と校長の二人になる。
「やっぱりレーヌ、君は無属性と判断されたんだね。」
(コクッ)
「まぁ、でも安心してくれていいよ。本当に無属性ってわけじゃないから。」
(コクッ)
「そうだね。君は魔力が無いんだから属性なんて存在しないよ。」
(コクッ)
「…これから?」
「ん?あぁ、もちろん、ここに居て貰って構わないさ。デフロットの孫だもの、雑には扱えないよ。」
俺のおじいちゃんには結構デカい借りがあるみたいだな。流石おじいちゃんだ。まぁ、俺が入学できた時点でこんなことは織り込み済みだったんだろう。
「ところで君は無属性についてはどれくらい知っているんだい?」
(?)
「…あんまり知らないみたいだね。まぁ、平民だと無属性は悪い存在って程度にしか知らないか。それも当然かな。」
(コクッ)
「それじゃあ、今日の後半の授業は無属性についての講義をしようか。」
(コクッ)
校長は無属性について教えてくれるらしい。これから俺がどんなふうに扱われるのか、勉強が必要だってわけだ。
「無属性、別名『精霊に愛されなかった者』だね。先ずは、名前の説明をしようか。」
(コクッ)
「魔力は精霊に与えられたものされている。そして、属性っていうのはどの精霊から魔力を与えられたのかってことだ。だから無属性っていうのはどの精霊からも魔力を与えられていない、即ち『精霊に愛されなかった者』と呼ばれてるんだよ。まぁ、この理由だと『精霊に愛されなかった者』は無属性っていうより、属性無しの方が正しいんだけどね。そう言う意味では君は正しく『精霊に愛されなかった者』なのかもしれないね。」
正しく『精霊に愛されなかった者』か。ちょっとショックだ。つまりは神に愛されていない。世界に見放されたとかそういうものだろ?確かに、ローヌが死んでしまったり、学校でぼっちだったりといろいろ不幸かもしれないな。
「ははは、そんなに落ち込まないでよ。冗談だよ、冗談。『精霊に愛されなかった者』っていうのは別の理由もあるんだ。まぁ、それは後で説明するとして、ここまでで何か質問はある?」
(フルフル)
「理解が早くて助かるよ。じゃあ、次は無属性の魔法についてだよ。」
(コクッ)
「無属性の魔法っていうのは他の属性の魔法とは大きく異なるんだ。普通の属性魔法っていうのは魔力を何かに変えて、例えば水や光、風などだね。その何かに変えて魔法を発動させるんだ。でも、無属性は違う。魔力を純粋に魔力なまま魔法を使うんだ。魔力を『魔力』という形のまま体外に放出するんだね。魔力を魔力のまま使うから、属性魔法よりも無属性魔法の方が格段に威力が大きいんだ。まぁ、それだけならいいんだけど、この『魔力』っていうのが曲者でね、魔力のまま魔力の操作をするのはとても難しいんだよ。魔法っていうのはイメージが大切で、イメージを明確にしていないと魔法が発動しないんだ。だから属性魔法は水や光、風といったイメージしやすいものを使う場合が多い。でも無属性魔法は違う。『魔力』をイメージしないといけないんだ。今まで一度も見たことがない、触ったことがない魔力をどうやってイメージしろっていうんだろうね。君みたいに『魔視』を持っていればイメージなんて簡単なんだろうけど、能力を持ってない人は難しいんだ。しかも、失敗すると他の属性魔法と違って、発動しないってわけじゃない。中途半端に発動してしまうんだ。これが無属性魔法の怖いところだね。もともと威力の強い無属性魔法が制御不能の状態で発動されたらどうなるか。想像に難くないね。非常に甚大な被害が出るよ。しかも、発動した本人は自分の魔力だからなのか、体内にそのまま吸収されて、被害を受けないんだ。もし、これを悪用するものがいたとしたらどうだろうか。だから無属性者は『精霊に愛されなかった者』と言われ、嫌われてるんだ。そして、無属性者っていうのは魔法の使用が禁じられているんだよ。ここまでで何か質問はあるかい?」
(フルフル)
なるほどな。だから無属性は嫌われるのか。でも、俺は属性無しであって無属性じゃないからな。そんな危険なことにはならない。安心だな。しかも『魔視』持ちだ。たとえ無属性であったとしても魔力のイメージはしやすい。
「じゃあ、続きを話すよ。今までに無属性魔法を悪用した人はいっぱいいる。そういう人たちのせいで無属性魔法には悪いイメージが定着しちゃってるんだけど、その悪用した人たちのことをこの世界では『魔王』って呼んでるんだ。もちろん、無属性魔法をしっかりと使いこなして役立てた人だっているし、無属性者でも一生魔法を使わずに過ごした人だって多い。何も無属性魔法自体だけが危険っていうわけじゃないんだよ。その『魔王』って人たちは定期的に現れる。それはもう、人の宿命なんだろうね。だから、君はこれから『魔王』と罵られるかもしれないけど、気にしないことが一番かな。」
(コクッ)
「うん、君なら大丈夫そうだね。最後にとっておきの秘密を教えてあげるよ。君は魔力なしだ。その事実は変わらないけど、他にも魔力なしがいたらちょっとだけうれしくないかい?自分と同じ人がいるって。その魔力なしだけど、この国にはそれなりの人数がいるんだ。まぁ、これは国家機密でほとんどの人が知らないんだけどね?君にも黙っていてほしいんだ。いいかな?」
(コクッ)
「絶対だよ?でないとこの国が崩壊しかねないから。まぁ、これを教えるのは君の安全を考えてってこともあるんだけどね。とりあえず、他言は無用だ。君なら言葉数が少ないからほとんど情報が外に漏れる心配は無いと思うけど。」
(コクッ)
「ははは、君もそう思うかい?それじゃあ、とっておきの秘密を教えるよ?この国の王族のほとんどは魔力なしなんだ。中には気力なしのものもいる。この世界の生命体としては不完全なものが多いんだよ。それがこの国の王族。まぁ、中には気力も魔力もある者が生まれるんだけど、ソイツは危険だからって王宮から追い出されるんだよね。だから、王宮には魔力なしや気力なしがいっぱいいるってわけさ。だから、君が魔力なしだってばれると、一部の王族の秘密を知っている連中に悪用されるかもしれないね。だから注意した方がいいよ?」
(コクッ)
「さぁ、これで今日の後半の講義は終了。気を付けて帰るんだよ?」
(コクッ)
俺は校長がいる建物から出て、家路についた。魔力なしをばらしてはいけない理由が増えたな。いっそのこと俺は魔力なしで、無属性じゃないってことを説明しようかと思ったが、それはそれで危険らしい。ここは自分が無属性であることを貫くしかないようだな。はぁ、学校に来てからというもの、どんどん居心地が悪くなっていくなぁ。




