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6話

 転生発覚から100日ほどたった。といっても、昼夜関係なく寝て起きて送り返していたため、1日の長さがわからない。目が覚めて、明るくなって、暗くなったら1日経過としてカウントしたが、正直、何日たったかなんて覚えているのはめんどくさい。なのでたぶん100日くらいだろうという感じである。

 体は順調に成長し、大きくなっている。目ははっきりと見えるようになり、首もしっかりしてきたため周りを観察できるようになった。まだ動けはしないが、それでも自分の世界は広がったと思う。

 言語はある程度分かるようになり、簡単な日常会話なら聞き取れ、理解できるようになった。しかし、まだ話すことはできないし、文法も理解できているとは言えない。単語の羅列や体の動き、顔の表情やその時の状況から意味を推測しているにすぎないがおそらくそれほど間違ってはいないだろう。


 この100日ほどで分かったことがある。


 先ずは家族のことである。目がはっきりと見えるようになったため、母親や父親を観察することができるようになった。

 母親は金髪の女性で、スタイルはスレンダー身長はそれほど高くはなく、尺度を示すものがないため確実ではないが170cm弱ではないだろうか。髪は肩の付近まで伸びており、また、ウェーブがかかっている。前髪は上にあげられ、カチューシャのようなもので固定されていた。顔は美人さんで、綺麗というより可愛いという表現が合いそうだ。世界一は無理でも村一番くらいは十分狙えるだろう。瞳は明るい緑色で、黄緑と表現してもいいかもしれない。名前はローヌ・ベルニエいうらしい。年齢は見た目で判断するなら18歳くらいだろうか。しかし、正直わからない。女性の年齢って難しいよね。

 父親は赤い短髪で、直毛。赤とは言っても少しくすんだ赤紫に近い色合いの赤である。身長は170cm強あり、体格はそれなりにがっちりしている。ガチムチではないが、筋肉質である。顔は雰囲気イケメンという感じだ。ブサイクではないがどちらかといえばイケメンである。ただし、鋭い目を持っており、そこが特徴的だ。瞳は黒く見えるがよく見ると赤であり、非常に暗い赤となっている。名前はレオナール・ベルニエというらしい。年齢は40歳くらいだと思う。

 血縁者はこの二人だけである。しかし、3人家族ではなく、あと2人追加の5人家族だ。あと2人というのは父親の幼馴染の子供という兄妹だ。この幼馴染という人はシルヴァン・ゲーユという名前で、結構強かったらしい。しかし、3年前にあったという戦争で亡くなり、また、その妻はゲーユ兄妹が小さいころにすでに亡くなっていたらしく、ベルニエ夫婦がゲーユ兄妹を引き取ったらしい。ベルニエ夫婦とゲーユ兄妹はシルヴァンがなくなる前から付き合いがあり、戦時中はレオナールとシルヴァンは兵士として戦場に徴兵されていたため、ローヌとゲーユ兄妹の3人で暮らしていたらしい。兄はシモン・ゲーユ、13歳で茶髪、茶瞳の好青年である。妹はベル・ゲーユ、10歳でこちらも茶髪、茶瞳の少女である。ゲーユ兄妹はどこにでもいそうな青年と少女である。性格もよい。シモンは頑固ではあるが、他人を思ってのことである。思いやりがある優しい青年だ。ベルの方は明るく、元気で、いつも笑顔だ。仕事にも熱心に取り組んでいる。3歳年上のシモンと同じ量の仕事をこなしているらしい。

 ゲーユ兄妹は一緒の家にはおらず、隣の家にいる。ベルニエ家族の家族水入らずを邪魔したくないとかで一緒の家には住んでいない。ベルニエ夫婦は何度も同じ家に住むように説得しているようだがシモンが譲らないらしい。また、生活費も自分で稼ぐと言い、稼いだお金から食費などの生活費を引いてほしいとのことである。夫婦に負担はかけたくないらしい。夫婦はそんなことは気にしなくてもいいといったのだが、やはりシモンは譲らない。そこで、家の仕事をゲーユ兄妹に手伝ってもらい、その対価として賃金を払い、そこから生活費を引くというシステムが出来上がった。


 次に家についてである。ベルニエ家は牧場主であり、飼っている家畜は牛が約100頭、羊が約50頭である。牛は主にローヌとゲーユ兄妹が、羊はレオナールが世話をしている。広大な土地を持っており、そのほとんどが牧草地だ。また、近くを小川が通っており、そこから水を引いている。牧草地は柵で3つに区分けされており、4分の1が羊用、2分の1が牛用、残りの4分の1が冬場の乾草のための刈取り用となっている。牧草地のまわりは柵で囲われているが、その奥は木々に囲まれており、森になっている。森には狼や狐、熊などが住んでおり、たまに家畜を襲うという。危険なので近づいてはだめらしい。まぁ、まだ自力で動くことはできないんですけどねー。

 牛は乳肉兼用種で、赤茶の毛に覆われており、前の世界の牛と姿かたちはあまり変わらない。角は除角されておりどの牛も持っていなかったが、どうやら白色の小さな角が生えているのが普通らしい。性格はおとなしく、ヒトに従順なためローヌやゲーユ兄妹でも簡単に扱えるらしい。繁殖期は決まっており、初夏らしく、仔は春先に産まれるとのこと。基本的に雌は乳用に、雄は肉用に育てるらしい。

 羊は少し前の世界とは違う。見た目はほとんど同じで、毛の色は薄く青味がかかった白である。肌の色も白で、目は平たい黒目ではなく、白目の部分が見えない程クリクリとした黒目を持っている。性格は荒く、凶暴だが、上下関係がはっきりしている。群れに一頭雄がいて、その雄がリーダーである。また、雌は女王羊と働き羊がいて、働き羊によってリーダーと女王羊は世話をされている。女王羊は仔を生むためだけに特化されており、移動すらできないため、働き羊に引っ張られながら牧場内を移動する。雄は世話をされていると言ってもほとんど自分でできるためされることといったら餌場の優先権くらいなものだろう。女王羊はリーダーと秋ごろに交尾をし、妊娠、春先に10頭ほどの雌を産むらしい。仔の乳は女王羊ではなく働き羊が与えるらしい。妊娠してないのに乳が出るとは不思議なものである。

 このような話を外へ散歩に連れられ牧場を眺めているときにされる。しかもほぼ毎回。顔をじっとみていると話し出す。それはもう熱心に。レオナールは羊の話を、ローヌは牛の話をしてくれる。こちらも聴き取るのに必死で集中して聴いているので話す方も楽しいのだろう。こんな話赤ん坊が理解できるはずもないのだがそれはもう詳しく何度も話してくれる。まぁ、こちらは理解できてしまっているし、言語の勉強の反復練習にもなるので問題はないが…。牛や羊が好きなんだなぁと感じた。シモンやベルは仕事が忙しいのか、遠慮しているのか時折姿を見るだけであまり話せてはいない。この二人とも仲良くやっていきたいなぁ。


 次はこの世界のこと。

 1年は325日である。1週間は5日で、5週間で1か月となり、13か月で1年となる。季節は、春、雨季、夏、秋、冬があり、春夏秋冬はそれぞれ3か月、雨季は1か月と大分できる。1年は春からスタートして、1の月、2の月・・・・・・12の月、13の月となる。週の数え方は1週目、2週目・・・5週目となる。

 東西南北は存在し、太陽は東からのぼり、西へ落ちる。そして驚いたのが、月が2個あるということである。2個ある月のうち、一個はほぼ毎日夜にのぼるが、もう片方は月の初めと終わりにしかのぼらない。毎日見れる月をジョロの月、月に2回しか見れない月をブートの月と呼んでいる。

 お金の種類は銅貨、大銅貨、銀貨、金貨、があり、銅貨100枚で大銅貨1枚、大銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨1000枚で金貨1枚、となっている。また、銅貨の中央には穴が開いており、そこに紐を通して10枚、50枚単位で扱うことが多いようだ。買い物をしたことがないため銅貨1枚がどれほどの価値なのかはわからないがそのうちわかるだろう。月に1度くらいで買い物にも行っているみたいだし。


 さて、最後に自分のことである。自分のことを最後にしたのにはわけがある。やはり認めたくない部分があるのだろう。現実逃避である。しかし、この世界で生きていく以上受け入れなくてはならない。そう、受け入れなくては…。

 自分の髪は赤色でレオナールと同じである。髪はだいぶ伸びてきたので視界に入り、色がわかった。触った感じくせ毛はない。そして瞳の色はローヌと同じ緑らしい。鏡がないため自分の顔についてはわからないのだが、瞳の色に関してだけはローヌが


「私と同じ緑の目~♪」


とか歌ってたのでそうなんだろう。その後に


「髪は俺と同じだよなー。」


とレオナールが張り合っていたがローヌは


「目は似なくてよかったわよね~。だって怖いんですもの。」


とかいってレオナールが落ち込んでたが気にすることはない。俺としても怖い目は似なくてよかったと思っている。

 この100日間で俺は言葉をある程度理解できるようにはなったがまだまだ小さな赤ん坊だ。言葉を理解しているそぶりを見せないために無表情を貫いている。また、声を出すことはできるがしゃべることはできなく、意味のない言葉をわざわざ発するのも嫌なのでほぼ無言である。両親も別段不思議がっている様子はない。しかし、話しかけられても全く反応を示さないというのもかわいそうだし、話しかけてくれなくなるかもしれないので話しかけられたらじっと相手を見るようにしている。

 どうにかこうにか話を核心部から逸らせてきたがどうやらネタが尽きてしまったようだ。認めないわけにはいかないので腹をくくることにしよう。○○は度胸である。

 首が座って周りを見ることができるようになった俺は体を洗ってもらっているとき、ふとそれを見てしまった。すると、そこにあるべきものがない。なんど見直してもなかった。そのとき、転生発覚からそれまでで自分に向けられる言葉の中でよく聞く単語があったことを思い出した。誰かの名前だったのだが、よくこの人のことを話すなぁ、まだ会ってないけど誰なんだろうと思っていた。どうやらそれは自分の名前だったようだ。この時俺は自分が幼女レーヌ・ベルニエであると認識したのだ。

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