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73話

 魔力と気力は使用禁止か。でも、バジルとマルコの武器にはそれぞれ気力が流れている。シモンもそうだったが、武器を持つとそこへ気力が流れてしまうらしい。しかもそれを感じることは難しく、止められないらしいしな。気力の使用は仕方がだろう。効果も武器の性能が少し向上するくらいだしな。まぁ、俺は気力が見えているから止めることができるんだがな。俺の場合は気力を流してると気法を使いかねないからな。気力は流さずに戦おう。反則負けだけは避けたい。


 

 バジルの装備は両手槍であるロングスピアーにレザーアーマー、ガントレット、ブーツだ。防具の下は長袖長ズボンの服を着ている。子供に金属鎧は酷だと思うので、防御重視の装備と言えるだろう。ロングスピアーも短めだ。2メートルあるかないかくらいだろう。まだ、身長が低いしな、これで3メートルのロングスピアーとか持ってたらびっくりする。自分の身長の約3倍なんだから。うまく扱えるとは思えない。

 一方、マルコは片手剣、ショートソードを二本持ち、防具はハーフレザーアーマーに手袋とブーツだ。防具の下の服は半袖半ズボン。こちらは動きやすさを重視した装備のようだな。二刀流、かっこいいな。持ってるやつが持ってるやつだけにちょっと残念な感じもするが、それでも二刀流はかっこいい。盾様二盾流とかどうだろうか。…無理だな。身動きが取れなくなる。


 教官の初めの合図とともにマルコが駆け出す。お手柔らかにはどうしたんだろうな。先ずは様子見とか考えないのか。それとも勝てると踏んだのか。まぁ、何れにせよ、その腕前、拝見させてもらおう。バジルの方は確か騎士を目指してるとか言ってたからな。何か参考になるかもしれない。



 その戦いは圧倒的な実力差を見せ、直ぐに終わった。勝者はバジルだ。負けたマルコは実力不足と判断され、初心者組へ行かされた。


 初めこそ、勢いよく飛び出したマルコだったが、バジルの槍を前に、どう対処すればいいのかわからず、槍を突き出されるたびに後ろへ下がってしまい、懐へ入ることができず、一方的にやられる形となってしまった。最後には尻餅をついて転んでしまい、試合終了である。


 やっぱり射程が長いほうが有利なのかもしれないな。俺の盾様はその大きさの割に射程は結構短い。拳よりは長いが、長剣よりは短いだろう。これは本格的に遠距離サブウェポンの件を考えないとな。それにはまず、お金だ。明後日は学校休みだし、動き出すか…。




「では次、レオポンド・アローロ、サミュエル・ナヴォワジル、前へ。」

「負けても恨むなよ?」

「ヘっ、そっちもな?」

「戦闘、始め!」


 今度はレオポンドとサミュエルか。両方ともロングソードを両手持ちにしている。防具もレザーアーマーにブーツで同じだ。ただ、片方はガントレット、もう片方は手袋をしている。どっちがどっちだかは知らない。全員の名前と顔は一致させてないからな。クラスで知ってるやつなんて6人くらいだ。


 

 レオポンドとサミュエルの剣捌きはシモンほど鋭くなく、遅い。二人で激しく打ち合っていたが、あれもただ単に力任せの振り回しているだけと言っていいだろう。ロングソードの戦いではない。重さを利用して叩き斬る両手剣やハンマーなどの両手鈍器の戦い方だろう。

 

 両者の力は拮抗しており、なかなか勝負がつかなかったが、最終的にガントレットを装備していた方が勝った。


「よっしゃ!俺の勝ちだな!」

「クソッ。もう少しだったのに!もう一回だ!」

「いや、その必要はない。」

「そんな……。教官!」

「レオポンド・アローロ、サミュエル・ナヴォワジル、両者、初心者組と合流しろ!」

「はぁ!?俺は勝ったんだぜ?どういうことだよ!?」

「誰が勝ち負けで決めるといった?儂は諸君らの実力で決めると言ったのだ。貴様らは実力不足と判断した。さっさと初心者組と合流しろ!一からやり直すんだな。」

「冒険者なんかに教えられてたまるかってんだよ!」

「そ、そうだ!俺は貴族なんだぞ!」

「ほう、ほとんど戦ったことがない貴族が何を抜かすか。冒険者は毎日のようにダンジョンに潜り、戦闘をこなしている。これほどまでの適任はいないと思うが?しかも今は授業中。貴族であることなど、何の価値もないわ!わかったらさっさと行け!」

「んだと!」

「お、おい、もう行こうぜ?」

「あー、わかったよ!行けばいいんだろ!」


 やれやれ、問題児が多いな。しかしさっきの戦いは俺の目からも実力不足が明らかだったからな。初心者組で当然だろ。しかし、別に勝たなくてもいいのか。それはよかった。気力を使用しないと俺は攻撃力不足が否めないからな。ただ、まぁ、ダミアンには戦いってやつを教えてやんなきゃいけないし、俺だってやるからには勝ちたいからな。本気でいかせてもらおう。



「では、次!ダミアン・クレール、レーヌ・ベルニエ、前へ!」

「罪人!その根性、叩き直してやる!」

「………。」

「何だ?ビビってんのか?女だからって手加減しないからな!」

「………。」

「戦闘、始め!」


その根性を叩き直してやるのは俺の方だ!手加減なんかするなよ?言い訳されると困るからな。



 始めの合図とともにダミアンが駆け寄ってくる。装備はロングソードにハーフレザーアーマー、ブーツ、手袋だ。スピード重視の戦士だな。先ずはお手並み拝見といこうか。


 俺は振り下ろされるダミアンのロングソードに盾様を横からぶつけ、『サイドフリックバク転コンボ』を行う。もちろん気力は流していない。この技は気力なしでも発動できるからな。ダミアンの剣は鋭いが、それでもシモンのそれよりも遅い。タイミングを計るなんてのは簡単だ。


 走った勢いのまま俺を斬りつけてきたダミアンの重心は前にあり、さらに、俺の初撃で体勢を崩していたため、続く蹴りを当てることができた。その後の盾様の振り上げは外してしまったが、バク転によって振り上げた脚は再び俺を斬ろうと構えたダミアンに当たる。結構命中率の低い技なのに四撃中三撃も当たったので正直俺は驚いている。

 『サイドフリックバク転コンボ』は基本的に最初の盾様の横弾き以外は当たらないのだ。しかも今回は気力抜き。スピードだって出ていない。それでも避けられないダミアンって……。まぁ、6歳児だし?仕方ないかな。


 俺は盾様をかぶり、とりあえず待ってみる。するとバンバンと盾様を叩く音が。横から攻撃すればいいのにどうやら正面から斬りつけている様子。本当にあの決闘を見てなかったみたいだな。見てたら横から攻撃なんて直ぐに思いつくだろうに…。

 いつもならこのまま『ラッセルチャージ』で弾き飛ばすのだが、今は気力を使えない。なので『ラッセルチャージ』はお預けだ。『ラッセルチャージ』は気力を使わないとできないからな。


 俺は盾様の位置が動かないように立ち上がり、音によってタイミングを計り、不意を狙って盾様を押し出して、直ぐに後ろへ下がり、ダミアンが見えるように盾様を構えなおす。

 ダミアンは俺が盾様を押し出したために、それを下がって避けたようで、俺とダミアンの間には距離が開いていた。


「なかなかやるじゃねぇか。だが、勝負はまだまだこれからだぜ?」


本気はここからだ、ってか?じゃあ、俺も本気といこうかね。


 今度は俺から攻撃を仕掛ける。盾様の縁を何度もダミアンにぶつける。勢いを殺さないように、流れる様に、たまに蹴りやフェイントを混ぜながら、盾様を振り回す。これはいつもやってることだ。盾様を振り回すのは毎朝の訓練でやっている。日々の反復練習の成果だな。

 ダミアンはこれを防ごうと何とかロングソードを構えるが、スピードに乗っている盾様をロングソード一本で抑えるのは難しい。俺は、蹴りを入れるなどして隙を減らしているので斬りかかることもできないようだ。それでも何とか防いでるようで、蹴りは何度か当たっているが盾様自体はダミアンの体に当たってはいない。ダミアンもそれなりに強いようだ。


 ただ、俺の方が実力は上だった。しばらく俺が攻撃し続けていると、ダミアンの体力が尽きてきたようで、息が上がり、動きが鈍くなってきている。そろそろ終わりだな。


 俺はダミアンの体ではなく、ダミアンのロングソードに狙いを定め、力いっぱい盾様をぶつけてやる。初めからロングソードを狙った攻撃に疲労の溜まったダミアンの握力は勝てず、ロングソードを手放してしまった。


「やめ!」

「俺の負けか。クソ、罪人に負けるなんて!」

「ま、まぁ、ダミアンもがんばってたさ。」

「でも、バジル。負けたら意味がないだろう?ここが戦場なら俺は死んでる。」

「ははは、その言葉好きだねぇ。でも、今は生きてる。次がんばればいいさ。」

「……そうだな。じゃあ俺は初心者組と合流してくる。一からやり直さないとな。」

「あぁ、それでこそ俺の親友だ。」

「待て、ダミアン・クレール。貴様もここに残るんだ。先程も言ったが勝敗ではなく、実力で決める。貴様にはその実力があると判断した。」

「ありがとうございます、教官!」


 確かに、ダミアンの剣捌きはシモンには及ばないが初心者組に行った奴らと比べればその差は歴然。こっちに残るのは当然だろうな。

 それにしてもここが戦場なら俺は死んでる、か…。武器を手放したくらいで何を。勝てないと踏んだら逃げればいいだろう。確かに、武器を失えば確実にその生存率は下がるかもしれないが、それでもまだ、逃げる、という選択肢が残っている。しかも今回の場合、相手はデカい盾を持った奴だ。軽装であるダミアンが全力で逃げれば逃げ切れる可能性はある。

 あとは、盾で人って殺せるのかと言う疑問が残るんだが、何度も殴打しないと無理だよな。無力化してひたすら殴打か。あんまりいい気分じゃないな。


 俺はそんなことを考えながらダミアンには言わない。俺が言ったって関係が悪化するだけだろう。そういうのは親友のバジルが言ってくれるんじゃないか?


 

 考え事をしているうちに次の試合が終了した。今度は両者とも初心者組に送られた。なんだか二人とも半泣きだ。何があったんだろうな。


「……では、次、アミラ・ネグラオ、セリーヌ・モンタニー前へ。」


 お、次はクラスのアイドル、アミラちゃんと才女、セリーヌか。まぁ、両方とも勝手に言ってるだけなんだが。これは楽しみだな。セリーヌは万能型っぽいし、アミラちゃんは魔力操作がだめだったからな。実は戦闘が得意とか言う……、俺と被るね。それはちょっと避けたいかな。まぁ、でもこの試合は期待だ。何か参考になるかもしれない。


 

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