54話
5月6日 誤字修正
エルザに付いて寮の中に入った。ラインスちゃんやガス君も一緒だ。馬小屋はあるらしいのだが、ラインスちゃんを見て馬が怖がるかもしれないし、ワイバーンは賢いらしいので、一緒の部屋で住むことになった。コボルトは、まぁ、人型だし普通に大丈夫らしい。エルザはコボルトやワイバーンを見るのは初めてらしく、珍しそうにラインスちゃんやガス君を観察していたが、二人とも大人しかったため、寮に入ることを許可した。
この寮は3階建てで、俺の部屋となるのは3階の一番奥の部屋、入り口から一番遠い…。ま、まぁ、いい運動になるし、それでもいいか。
「この寮はこの学校の中でも一番大きな寮よ。平民の子が来るなんて今までなかったから驚いたけど、安心して。私はみんなと同じように接するから。」
なんか立派な寮らしい。両親とおじいちゃんががんばってくれたのだろう。確かに内装はなんだか豪華だし、床の絨毯はフカフカだ。廊下も広くて長いし…。ただ、不思議なことに扉の数は少なかったな。廊下の長さの割に扉は4つしかなかった。1階から3階まで同じつくりならこの建物には12部屋しかないことになるな。きっと一部屋が広いんだろう。牧場の家よりもたぶん広い。まぁ、ここに住んでいいって言われてるんだ。ありがたく住まわせてもらおう。
部屋の扉を開け、中に入る。中はリビングのようでテーブルが中央にあり、広い牧場の我が家と同じくらいだ。ソファなどの家具もある。部屋の壁には複数の扉があり、いくつかの部屋に分かれているようだな。とりあえず、順番に扉を開けていった。
とりあえず、部屋の構造は把握した。先ず、リビングとなる大きな部屋が1部屋。そして大きな寝室が1部屋。小さな寝室が3部屋。寝室にはそれぞれトイレがついており、また、家具なども一通りそろっている。リビングや寝室の他には厨房、と物置が2部屋の計8部屋+4トイレである。そして、至る所がキラキラしており、家具や部屋全体などに魔術が使われているようだ。
エルザはリビングで座ってくつろいでいるので、とりあえず部屋の割り振りと荷物の整理をしておく。大きな寝室を俺が使い、小さな寝室の一つをガス君にあげようとしたのだが拒否されてしまった。ベッドは落ち着かないらしいのでラインスちゃんとガス君はリビングで過してもらうことになった。
部屋に入り、荷物をおろし、着替えた。鎧はなんだかんだで窮屈だ。慣れたとはいえ服でいいなら服がいい。荷物を適当な家具にしまい、2つのベルトを肩に掛けてリビングへと向かう。もちろん盾様は手に持っており、木剣は背中だ。
「あら?荷物の整理は終わったの?」
(コクッ)
「じゃあ、次は学校の案内ね。先ずは校長先生にご挨拶に行きましょう。」
(コクッ)
ラインスちゃんとガス君はお留守番だ。
「……会いに行くのはいいんだけど、その盾、ずいぶんとデカいのね。レーヌが使うの?」
(コクッ)
「そう。剣も片手剣という大きさではないし。レーヌは手が4本あるのかしら?」
(フルフル)
「そうよね。手が4本もあったら、私、腰を抜かしちゃうわ。化け物ーって。」
(コクッ)
「あら?私、こう見えても強いのよ?あなたじゃ私に勝てないんじゃないかしら?」
(どうしろっていうんですか…。)
エルザとの会話を楽しみながら寮を出てある建物へとやって来た。あんまり大きくはない。ただ、扉の前は2人の兵士で固められていた。重要人物がいるみたいだな。
「ここは校長先生のお家よ。そうね、ちょっと待っててくれるかしら?」
(コクッ)
「いい子ね。」
エルザは笑ってそう言い、兵士の方へ行く。兵士と何やら話している。しばらくしてエルザは戻ってきた。
「許可が取れたわ。さぁ行きましょうか。あ、でも盾と木剣は兵士に預けてね?」
(コクッ)
俺は盾と木剣を外し、兵士に預けてからエルザに続いて校長先生の家に入った。
校長先生の家は寮よりは豪華ではないものの質素な荘厳さとでもいうのだろうか、そんな感じだ。部屋数はあまりなく、いくつかある扉の前でエルザが止まった。
「校長先生はここにいらっしゃるわ。準備はいい?」
(コクッ)
「じゃあ、入るわね。」
トントン
「どうぞ。」
扉を叩くと奥から男性の声がした。ちょっと高めの声だっだ。
「失礼します。」
「……しつれい、します。」
「…………………。」
中に入った途端、いや、正確には俺が声を発した途端、エルザは固まってしまった。やっちまったか?名前を教えるときは大丈夫だと思ったんだが…。エルザも俺の家族と同族らしい。
部屋の中にはテーブルを挟むようにしてソワァが2つ。その奥に執務机があり、一人の男性が座っていた。黒髪に黒目だ。懐かしい容姿だった。年はおじいちゃんと同じくらい、40代だろう。少しだけ白髪が混じっている。
「どうしたんだい、エルザ君?」
「…あ、いえ、何でもありません。」
「君のそんな姿は珍しいな。」
「すいません。」
「いや、いいよ、いいよ。たまにはそういう姿も見せてくれないとね。……で、要件はその子かな?」
「はい、レーヌを連れてまいりました。」
「赤毛のレーヌという娘、瞳はきれいな緑だね。うん、デフロットの言う通りだね。ありがとう、エルザ。」
(デフロット?)
「いえ。」
「さて、レーヌ、君には話しておくべきことがある。」
(?)
「私は席を外しましょうか?」
「いや、エルザ。君にも聞いておいてもらいたい。」
「…わかりました。」
何やら大事な話がある様子。何?ここまで来て入学できないとか?うーん、でもそれならエルザに話してしょうがない気が……。いや、入学はできないけど寮で暮らしてもらうから、とか?だったら帰るよ?俺。こんなとこただ住んでるだけとか意味ないでしょ。
「レーヌ、君はレオナール・ベルニエの娘だね。」
「……ベルニエ。」
(コクッ)
ん?お父様がなんか問題なのか?ちょっとヘンタイだけど優しいお父様だぞ?エルザもなんか呟いてたしな……。ちょっと嫌な予感。
「その様子だと本当に何も聞かされていないみたいだね。それじゃあ、君のお父さんの話をしようか。」
「………っ。」
(コクッ)
エルザは息をのみ、校長先生の顔は真剣だった。レオナールの話か…。そういえばレオナールの過去は知らないな。いい機会かもしれない。教えてくれるっていうだから聞こうか。何やら空気が重いがきっと大丈夫だ。レオナールがどんな過去を過ごしていようとレオナールはレオナールだ。




