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48話

 俺は羊たちを見渡し、その位置を把握する。綺麗な五角形だ。これでは5頭のうちどれか1頭に集中することはできないな。なぜならそれをすると先ほどと同じように地面へとダイブだ。必ず背後に2頭いることになる。どうやら俺の方が足が遅いらしく、羊にたどり着く前に羊にたどり着かれてしまうというなんだかよくわからない状況だ。

 こうなればカウンター狙い。あまり時間をかけるわけにもいかないが、親衛隊の中にリーダーがいるかもしれないのだ。王女を守るのは私の役目とかなんとか騎士道精神を見せてくれているかもしれないからな。とりあえずはこいつらを片づけようか。小屋も近いし、倒したら他の親衛隊が運んでくれるだろう。


 俺は羊たちを挑発することにした。しかし、声を出すことはできない。残りあと3言だ。あまり無駄遣いはできない。では、どうやって挑発するのかというと、隙を見せればいい。

 相手は羊だ。人ではない。つまり、隙を見せればそれだけで突っ込んでくるだろう。罠かもしれないと考えるだろうか。答えは否だ。もう一度言うが相手は羊だ。狩る側の存在ではなく、狩られる側の存在だ。攻撃には慣れていない。つまり、隙を見せれば逃げるか攻撃をして危険を倒すかだ。多くは逃げるを選択するだろう。しかしここは小屋の前、小屋には大切な女王がいる。ここで逃げるわけにはいかず、しかしできるだけ早く危険を遠ざけたい。つまり隙を見せれば俺を排除しようと攻撃を仕掛けてくるはずだ。それを罠だとは考えずに。


 俺は隙を見せるために盾様を地面に置いた。盾様と離れるのは名残惜しいが、これは隙を出すためだ。盾様を離すと俺は一気に小さくなる。強さの簡単な指標、大きさの優位性が盾様を失うことによって失われるのである。『超悶絶!』を使うのならば何も盾様でなくてもいい。俺は今手袋をしているのでそれを媒体にして気力の塊を羊に送ればいいのである。

 

 盾様を地面に置き、盾様から離れる。俺が移動するのに伴い、羊たちも俺が中心になるようにその綺麗な五角形を移動させる。


 ある程度盾様から離れたところで俺は立ち止まる。それと同時に羊たちも立ち止った。しかし、羊たちが飛びかかってくる気配はない。どうやら羊は俺が考えていたよりも賢いようだ。ならば仕方がない。次の作戦に移行しよう。


 俺は気力の塊を両手に5個づつ用意し、目の前の羊に向かって走る。既に2回、この状態で俺は後ろからの攻撃を食らっているのだ。これならば最低でも1頭は俺に向かってくるはずだ。今は盾様もないから軽量化されている。もしかしたら羊に追いつかれる前に羊に追いつけるかもしれない。


 走り出してすぐに後ろに気配を感じて振り返ると目の前には羊の頭だ。振り返る動きに合わせて体を捻り、それを避ける。もちろんそれと同時に羊の頭に触れて気力の塊を送って衝突させた。

 羊を避けると羊のすぐ後ろにもう1頭羊が追従していた。どうやら2段構えだった様子。2頭目の羊の体に手を触れさせて同じように気力の塊を送って衝突させた。


 2頭の羊はそのまま数歩フラフラと歩き、その後立ち止まったかと思うと四肢を震えさせ始める。震え方は最初の1頭、つまり頭に気力の塊を送った羊の方が激しかった。どうやら気力の塊を衝突させる位置で悶絶度合いが違うようだ。

 体に気力の塊を送った方は全身を振るわせることなく、全身を突っ張らせて倒れた。きっと白目を剥いていることだろう。

 頭に送った方はもう1頭が倒れてから全身を振るわせ始め、しばらくしてから全身を突っ張らせて倒れた。


 その様子を観ていた残りの3頭は雄たけびをあげながら俺の方へ向かってきた。鳴き声はメェーではなく、グルルァァァだ。アルフレッド君を連想させるが、アルフレッド君のような可愛さは微塵もない。その声には怒りと憎しみが宿っていた。


 俺は3頭の雄たけびに一瞬だけ怯んだ、そう、一瞬だけだ。一瞬だけ怯んだが、直ぐに立て直し、羊達に両手を向ける。

 3頭が同時に正面からきているので、真ん中の1頭を体で受け止め、残りの2頭にそれぞれ左右の手から気力の塊を送る。なるべく苦しませたくなかったが、体に触れている余裕はない。頭から突っ込んできているので頭に触れるしかなかった。

 2頭に気力を送り、今度は両手で挟むようにして残りの1頭に触れる。そして両手に残った1個づつの魔力の塊を真っ直ぐに送り出し、衝突させた。


 3頭の羊は他の『超悶絶!』を受けた羊たちと同様の症状を発症し、倒れた。もちろん白目を剥いている。ちょっと怖い。うん、ちょっとだけ。



「「「「「メェー」」」」」


 そうそう、羊の声はこうじゃなくては。周りから羊の鳴き声を聞き、俺は少しだけ安心する。グルルァァは怖すぎる。やはり羊はメェーでなくては。

 安心したのも束の間、俺は事態を把握した。

 

 周りを見渡すとたくさんの羊に囲まれている。羊の悶絶に目を奪われていて気付けなかったらしい。しかし、たくさんの羊たちは俺を取り囲んでいるだけで特に何もしてこない。今の中にリーダーがいたのか?そう思い俺は羊たちに命令してみることにした。


「…もどれ。」

「「「「「………。」」」」」

(………。)



 俺が虚しさと悲しみを感じていると目の前の羊の壁が割れ、他の羊よりも大きな羊が歩き出てきた。


 



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