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29話

27日7時11分 誤字修正しました。

 雨季が終わり、夏が来た。今年もヴァーノンたちが牧場に来て、種牛を置いて行った。もちろん値切り交渉はしていない。


「来年の今頃はレーヌちゃんも一緒に行ってしまうのね~。寂しいわ~。」


ローヌがそんなことを言い出した。そういえばあと2年で学校に行くことになっていた。この世界の学校はどんなだろうな。友達ができるといいな。それまでには少し言葉数をしゃべれるようにしないとな…。1日5言では意思の疎通はさすがにキツイ。しかし喋るのは疲れる。特に舌と喉が。まぁ、なるようになるだろう。その時考えよう。


「レーヌちゃんと一緒にいられるのも~、あと1年ちょっとなんだし~、学校に行く前にちょっとだけ予習をしときましょうか~。周りの子に馬鹿にされちゃうかもしれないわ~。」

(コクッ)


予習かぁ。勉強はあまり得意ではないんだが仕方ない。周りは貴族ばかりらしいしな。確かに馬鹿にされるかもしれない。それがきっかけで虐めへ、そして引きこもりに…、なんてことは避けなければ。そう思い、首を振って了承した。


「ちょうど刈取り用の牧草も伸びてきた頃だし~、雨季も終わったわ~。お外へ行きましょうか~。」

(コクッ)


外?青空教室だろうか?しかし牧草か、学校では意外とこういう平民の暮らしについての勉強があるかもしれないな。下々の暮らしを理解するのも上に立つ者の役目ー、とかなんとか。

 俺は黙ってローヌの後について歩いた。


 しばらくして、俺とレーヌは家からちょっと離れた刈取り用の牧草のある草地へ来た。この草地は冬場、雪は降らないとはいえ、草の量は減少するため、それを補うための草地だ。刈り取った牧草は乾燥して小屋にしまうらしい。らしいというのもまだ一度も実際には見たことがないためである。結構広いのだが、手作業だろうか?1日で終わる気がしない。


「じゃあ、今から魔法を使うわね~。レーヌちゃんは『魔視』があるから実際に見せた方がわかりやすいと思うの~。」

「………まほうって?」


どうやらここで魔法を使うらしい。周りには牧草のみ、安全と言えば安全だ。ただ、魔法についての知識を得たいので、ここでは素直にうなずくことはせず、貴重な1言を消費して魔法について訊くことにした。


「そうね~。レーヌちゃんは魔法って何か知らなかったのね~。ごめんね~、順番を間違えちゃったわ~。」


こちらの意志を汲み取ったらしいローヌは魔力の説明を始める。



 ローヌの話によると、この世界には『力』と呼ばれるものが2つあるらしい。一つは『魔力』、そしてもう一つは『気力』である。そして『魔視』や『気視』はそれぞれ、『魔力』と『気力』を見ることができる能力らしい。

 『魔力』とは魔法や魔術を使うためのエネルギーで猿人族や獣人族などの知的生命体には必ずあるものらしい。『魔力』は常に体から外へ漏れ出ており、『魔視』の能力を持つ者はその漏れ出た『魔力』を見ることができる。

 魔法や魔術は火や水、風などを生み出したり、操作したりすることができ、各人で『属性』の適正があるらしい。『属性』はたくさんあるが基本的には光、闇、火、水、風、土、雷の7種類らしい。ちなみにローヌは風属性、レオナールは光属性だ。属性は親のものを受け継ぐことが多く、俺は風か光だろうとローヌは予想していた。

 魔法や魔術を使う際には魔力を体外に出し、消費する。無くなった魔力はしばらくすると回復し、また、少しだけ量が増えるとのこと。つまり、魔力は使えば使うほど増えるらしく、それならば魔法使いたい放題じゃないかと思うのだが、魔力の枯渇は命に係わり、また、増加の限界値も存在し、その限界値には個人差がある。魔法や魔術を得意とする人は魔力操作と魔力量の限界値が多いことが必要らしい。

 『魔法』と『魔術』の違いだが、『魔法』は純粋な魔力のみを使ったもので、『魔術』とは何か媒体に魔力を通して使うものだそうだ。


 『気力』とは、猿人族や獣人族などの知的生命体以外にも牛や羊、熊といったすべての動物が持つエネルギーで、『魔力』と同様、体外に漏れ出ている。『気視』はこの漏れ出た『気力』を見ることができる。

 『気力』を使った技には気術と気法がある。これらの技は気力を体外に出す必要があり、気力を体外に出すには大抵の人は手から、人によっては足や頭などから剣や靴、兜といった別の媒体に移す必要がある。『気力』はその媒体を強化したり、媒体から別の媒体に移ることで別の媒体に効果を与えたりする。媒体に移動した『気力』も『気視』は見ることができるそうだ。

 媒体に移し消費した気力は時間とともに回復するが、魔力のように量が増えることはない。しかしその回復速度は魔力よりも早い。気力の総量は体の大きさに比例して多くなり、一生一定とされている。

 『気術』と『気法』の違いだが、『気術』は先人達が考え、伝えられている気力による技のことで、『気法』とは、個人が独自に考えた気力を使った技のことらしい。


 ここで、説明は終わりである。何とか知識を引き出すため質問をしていたが、既に5言使ってしまった。「まほうって?」から始まり、「ぞくせい?」、「まりょく、ふえる?」、「きりょく?」で終了である。無理をすればもう1言くらいはいける気がするが、今から魔法の練習である。無理はよくない。詠唱とかあったらどうしよう。1言で済むかな…。ていうか俺の喉と舌って詠唱あったら致命的だ…。


 

「じゃあ~、行くわよ~。よ~く見ててね~。」


説明を終え、一息ついたローヌがそういった。憧れの魔法体験のスタートである。



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