17話
5月2日 誤字修正
ヴァーノンたちが牧場を訪れてから約4か月がたった。今日は9の月2週目の3日だ。夏の暑さは去り、過ごしやすい気温になった。
種雄や仔牛は無事ヴァーノンさんたちに引き取られた。無事に目的地へ着くことを願った。
さて、魔力?についてだが、訓練は順調で総量は増えている。すでに全身いっぱいになっており、そのままでは集められないので、集めるときは圧縮して集めている。全身いっぱいになっても流れはちゃんとあり、絶えず全身を巡っている。
全身いっぱいになってからも量は増えているが、体が弾けるわけではなく、密度が濃くなっていくだけだ。圧迫感もない。常に圧縮しなければいけないという心配は杞憂だったようだ。
そんな魔力?だが、最近少し変化があった。今までは体の中心(全身にいっぱいなので既に中心を流れているとは言えない。中心の方が濃く、外に向かうほど薄い。)を流れていたのだが今は体表面を流れるものと中心を流れるものに分かれている。明確に分かれているわけではないのではっきりしないが、体表面側を流れる魔力?の方が流れが遅い気がする。魔力?の量が増えたため、体が何か対策を講じたのだろうか。よくわからないが注意して観察をしていこうと思う。
魔力?の復活の時間は大体30分くらいだろうか。非常に早くなったため、常に訓練を行っている。ながら訓練である。あまり集中しなくても魔力?の塊を10個同時操作が可能で、常に10個の魔力?の塊が体の中をうろうろしている。
体に関しては順調に成長しており、座ったり、立ったりできるようになった。所謂おすわりやたっちである。初めて立ち上がったときの両親の喜びようはハンパなかった。言葉で尽くすことが難しいほど喜んでおり、一言でいうならまさに、ドン引きである。もちろんその日は『レーヌ 初めての起立記念日』となった。ちなみにそれは8の月3週目の1日である。
おすわりやたっちの他にあんよ、つまり歩くのも少しならできるようになった。しかし、手放しでのあんよはできない。ものにつかまって歩くのである。まぁ、魔力?の訓練と同時進行でつかまり歩きは行っているのでそのうちできるようになるだろう。早く自分の世界を広げたいものである。
さて、昼食の時間である。最近は歯も生えてきたためちょっとした固形物を噛めるようになったため、離乳食も固形物が入ってきた。母乳の割合も減ってきて、離乳も順調である。そんな中昼食を食べていると
「ローヌはおるかー。」
突然扉開けて40代くらいの金髪のおじさんが入ってきた。
「ローヌ、お前は連絡ひとつもよこさんで!」
「ごめんなさい、お父様~。すっかり忘れてたわ~。」
「お前というやつは、これだから、まったく。」
どうやら俺のおじいちゃんらしい。忘れられてたとかかわいそうである。そんな俺もすっかりその存在がいることを忘れていたのだが。にしても見た目若いな40代でおじいちゃんか。でもローヌも若く見えるから妥当なのか?
「孫の顔も見てせもらえんとは、俺がどれだけ孫の顔を楽しみにしておったかわかるか?検査のために町に来るであろう3の月1週目の1日は一日中店に待機できるように仕事を調整したし、その前後1週間もローヌが顔を出したらすぐに俺のところに連絡をよこすように言ってあった。にもかかわらず待てども待てども一向に来ない。で、気がついたら半年たっておる。もう我慢できんと仕事を置いてきてしまったわい。で、検査はどうだったんだ?」
気づいたら半年って…。まぁ、忙しい人みたいだし来るに来れなかったんだろう。
「ごめんなさいね~。レーヌちゃんの検査の結果で頭がいっぱいだったの~。」
「『気視』、『魔視』持ちらしいな。」
「あら~?知ってたの~?」
「あぁ、カラム先生に聞いた。そんな大事なことも知らせんで…。」
「だから~、ごめんなさいって~。」
「まぁ、いい。で、これからどうするんじゃ?」
「どうするって~?」
「レーヌのことだ。『気視』と『魔視』両方持ってるとなるとどこの貴族に連れてかれるかわからんぞ?」
「そうね~。学校に行ってもらおうと思ってるの~。身の振り方とかいろいろ覚えてもらわなきゃいけないと思うし…。」
「そうか、学校か。ただ、周りは貴族ばかりだぞ?」
「うん~。だからね~、『気視』と『魔視』については隠しておこうと思うの~。」
「まぁ、それがいいだろうな。そういうことなら学校側へは俺が連絡しておこう。近々王都へ行く用事があるしな。学校長には能力について話しておくぞ?出なければ入学は認められんだろう。もともと貴族用の学校だ。平民の娘なんぞ入れられん。」
「そうね~。わかったわ~…。」
「何、心配するな。学校長は信頼できるやつだ。」
「うん~。」
大事な話をしているらしく、真剣だ。え?貴族に連れてかれる?拉致ですか?そして奴隷として売られるとか…?それだけは何としてでもまぬがれなければ…。異世界に来て奴隷で終わるとかやだよ?『気視』、『魔視』については知られないようにしないとな。まぁ、無口だから自分の口から知られることは少ないと思うが…。
「まぁ、それはさておき、だ。」
「ん~?」
「レーヌ、会いたかったぞぉぉ。そのかわいらしい姿をじっくりと見せておくれぇぇぇ。」
こいつも強烈だな。すぐに抱きかかえられほっぺをふにふに、頭をなでなでくるくる回ってのほっぺすりすりだ。オッサンにやられるとか気色悪いだけなんだが…。ここは嫌がっておこうか。
おじいちゃんの頬を両手で押しのける。するとおじいちゃん嫌がっていることが分かったのかだまってベッドに俺を下すと
「レーヌに嫌われた。俺をおじいちゃんとは認めてくれないらしい。」
「当然よ~。今日初めて会ったんだから~。」
「そうだな。おじいちゃんになる価値なんてないよな。俺帰るわ…。」
「バイバーイ~。」
落差激しいな。ていうかお母様よ、そこは引き止めろよ。仮にも父親だろ?まぁ、俺にも責任はある。引き留めてやるか。
「あぅあ~」
「「………。」」
まぁ、固まるよな。うん、予想はついてた。少しは大丈夫かも、とか思っちゃったけど世の中そんなに甘くないよな。これからますます喋りづらくなるな…。別に恥ずかしいとかじゃない。興奮して倒れられたら困るからだ。そう、恥ずかしいわけじゃないのだ。
「レーヌちゃんが喋ったぁぁぁぁぁ!」
「レーヌぅぅぅ、かわいいなぁぁぁ!」
二人同時に叫んだ。ていうか俺、転生してから慰めるためにしかしゃべってないな。どうなんだろうか。




