110話
6月5日 誤字修正
時は流れて6の月、夏真っ盛りだ。周りが暑さにやられている中、俺だけは何もないまま普通に学校に行っている。こういう日にぶつけられる水の球は気持ちがいいので食らうことにしている。当てる方も喜ぶのでどちらにとってもいい話だ。
「レーヌ・ベルニエ、ちょっといいか?」
そんなことを考えながら廊下を歩いているとクリストフ教官に呼び止められた。今は特に用事もないし、何も問題はない。別に迷っていたわけじゃないからな。
(コクッ)
「では、付いて来い。」
クリストフ教官に付いてある部屋に入った。会議室のようなところだ。ような、ではなく、会議室なのかもしれない。
「レーヌ・ベルニエ、貴様は学校対抗戦について知っているな?」
(コクッ)
もちろん知っている。毎年欠かさずに見に行ってるからな。残念ながらここ数年俺たちの学校は勝ててはいない。
「貴様には今年の学校対抗戦に出て貰おうと思うのだが、いいな?」
(コクッ)
やっと来たか。俺はいつ出れるのかなーと思っていたのだが、中等部二年でやっとだ。ルネは小等部一年で出てたし、オーギュストは中等部1年で選ばれている。なのに俺は選ばれていなかった。これでも武術専攻では上位に入っているんだがなぁ。
「うむ。それで、貴様にはチームリーダーを任せようと思う。」
いきなりチームリーダーか……。荷が重いな。ちょっと緊張する。
「何、硬くなるな。チームリーダーと言ってもやることはメンバーの選出と作戦の考案、後は戦闘時の指揮くらいだ。簡単だろう?」
いや、まったく簡単じゃないんですが……。責任重大じゃないですか!
「ただし、これ以上の負けは許されんぞ?」
そんな怖いこと言わないでくださいよ!プレッシャーがぁぁ。
「ふむ。さすがだな。これだけの重圧に動じないとは。これは期待できそうだな。」
いや、表に出してないだけで超動揺してますよ?いや、ホントに。
「まだ時間は大丈夫だな?」
(コクッ)
まぁ、次は武術の授業だし、多少遅れても問題はない。やることは二代目を振り回すだけだしな。
「では、先ずはメンバー選出を行う。誰かいるか?」
誰かって言われてもなぁ。俺の人脈を嘗めて貰っちゃ困る。寮生とクラスの一部しか知らん。でも、シャルは去年も出てるしな。一緒に戦ったこともあるし、付き合いも長い。連携を取りやすいだろうしシャルは決定だろう。
えーと、シャルの本名は何だったけなぁ……。
[シャルロット・クレーはどうでしょうか?]
「ふむ、確かに彼奴は去年も出ているしな。問題ないだろう。他にはいるか?」
チームとしての連携を考えるならエリザベートだろう。なんだかんだで、俺との共闘は一番多いからな。
[エリザベート・カリエールですかね……。]
「……理由は?」
「はい。彼女とはよくダンジョンに潜っているため、連携が取りやすいです。それに、彼女の魔力量は他の人に比べ、多いです。なので戦力としては十分なのではないでしょうか?」
「なるほど。貴様がやり易いと言うならばそれで行こうか。」
(コクッ)
「残り二人だが、他には?」
全部俺から訊くの!?ちょっと待って!俺の人脈は少ないんだから……。教官も誰かいい人いないのか?というか、リーダーが選抜メンバーを決めるんだな。これなら俺は選ばれないわけだ。人脈ないし、嫌われてるしな。
[教官は誰を推しますか?]
「ふむ。先ずはオーギュスト・ルシアンボネだな。彼奴の戦闘能力は目を見張るものがある。」
確かにそうだな。あいつは強い。それだけは確かだ。だが、チーム戦となるとどうだろうか。性格的にはあいつはリーダー気質だ。それもワンマン社長的な。俺がチームリーダーをやる場合、確実に衝突する。今決まっているメンバーだとエリザベートも衝突するだろう。だから俺としてはオーギュストは避けたい。
[他にはいますか?]
「そうだな。ルネ・パルリエはどうだ?速さは言うまでもないだろうが、彼奴は攻撃の正確性が高い。最悪、相打ちで一人は削れるぞ?」
ルネか。確かにチームワークは乱さないだろうな。残身が長いのが気になるが、それでも、俺にない速さを持っている。何か策を講じればいけるかもしれない。
クラスの連中以外にはいないんだろうか?
[他学年や小等部には?]
「中等部三年にブレーズ・ベーラーがいる。彼奴は弓が得意だ。また、剣の扱いもなかなかで様々な場面で対処してくれるだろう。」
オールラウンダーか。遠距離二人は決まってるからな。遠距離を増やすにしても後一人だ。他校がいつもと同じ作戦で来るなら囲まれる可能性が高い。俺が前を守るとして、後ろを守るやつがもう一人欲しい。
ブレーズの腕前がどんなものかわからないが、主体が弓ならヒットアンドアウェイだろう。守りながらの戦闘は向かないんじゃないか?
オーギュストは論外として、ルネだな。ルネは速さを活かした遠距離一気に距離を詰めて攻撃するから、近距離装備だけど遠距離攻撃の部類だと考えられるな。
ルネかブレーズを入れるとして、後一人、近距離タンクが欲しいな。
[近距離戦闘で味方を守りながら戦える人はいますか?]
「守りでいえばやはり貴様が群を抜いている。他を挙げるとすれば、やはり近距離戦闘で強いオーギュストだな。」
[他には…?]
「ふむ、オーギュストでは駄目か。となると、中等部三年のボリス・カッセル、ジョージ・ドレルム、後は……セリーヌ・モンタニー、ダミアン・クレールだな。」
ダミアンかぁ。確かに腕はあるが……俺をいじめてくる筆頭だし、却下だ。
「ボリス・カッセルは片手剣に盾だ。盾は貴様ほど大きくないが、それでも盾の扱いは上手いだろうな。だが、剣の腕は期待できん。」
攻撃力なしか。俺と被るな。それに、攻撃手段がたくさん使用できない魔法に頼るのはよくないな。近距離火力も捨てがたい。
「ジョージ・ドレルムは片手にパタを装備している。もう片方は魔法の制御や投擲だな。」
アシルと同じスタイルか。アシルほどの強さがあれば問題ないんだが、まぁ、期待は出来んだろうな。
あとはセリーヌか。小等部の頃は実力者組にいたが、今は座学専攻。あまり武術訓練ができていない。それでも、もしかしたら……。
[そうですね……。実際に戦ってみて決めたいと思います。シャルロット、エリザベート、ルネ、ブレーズ、ボリス、ジョージ、セリーヌ、それと、オーギュスト、ダミアン、バジルを連れてきてください。]
「バジルもか?……わかった。日程が決まり次第連絡する。」
バジルを呼んだのは人数合わせだ。五対五の団体戦をやってみようと思うのだ。ダミアンがいるならバジルがいても問題ないだろう。
さて、どんな戦いになるのかな。結構楽しみだ。




