109話
翌日、学校に行く。服装は新装備だ。二代目が少し邪魔だが、まぁ、仕方ない。扉とか超不便だが、仕方ないのだ。盾様のノリでいくと必ず引っかかる。
教室に入り、席に着く。今日の前半の授業は算術だったはずだ。今日も簡単な掛け算かなぁ。それにしても今日は一段とヒソヒソしてるな。予想はつくが……。
「おい、あれ、耳生えてるぞ?」
耳はもともと生えてる。おかしくはない。それにお前らが耳だと思ってるやつはカチューシャだ。本物じゃないぞ?
「あ、あぁ。それにあの盾。なんてデザインだよ……。」
それは俺も同意する。このデザインは正直怖い。禍々しいよな!
「悪魔に魂でも売ったんじゃないか?」
悪魔に魂ねぇ。この世界にも悪魔はいるんだよな。聖典にもちょっとは出てきたし。でも、俺の中では悪魔は狼よりも山羊のイメージなんだが……。
「……だから耳が生えたのか。」
いや、だから生えてないって!
「……アイツの強さはそういう事だったんだよ!」
「どういうこと?」
うん、どういうこと?
「悪魔に魂を売って手に入れた力だったんだ!」
「「!!!」」
「!!!」じゃねぇよ!これは俺が努力によって手に入れた力だ。お前らが生まれて、ビービー寝いてる間に俺は気力に訓練をしてこの強化皮膚を手に入れたし、盾だって毎日振り回してるんだ。努力の結果だぞ!
「そ、そうか。悪魔の力でアイツは強さを手に入れたんだな。」
だから、努力の成果だって……。
「あぁ。だから俺たちの攻撃が全然効かないんだ。」
まぁ、強化皮膚を悪魔の力って言うなら間違いじゃないな。俺が強化皮膚を持ってなかったら怪我とか風邪とかやばかったと思う。
「それで、耳が生えてきたのは?」
「お前は馬鹿だなぁ。悪魔に乗っ取られて来てるんだよ。」
「そ、そっか。じゃあ、あいつ近づいたら危ないんじゃ?」
安心しろ。そんな兆候はない。俺はいつも通りだし、変な囁き声は聞こえない。俺の知らないところで俺が発見されたっていう話も聞かないし。
「馬鹿!完全に悪魔になる前に倒さないと不味いだろ!」
「え?え?」
まぁ、確かに、本当に悪魔に乗っ取られているなら、それが完全になる前に仕留めないとな。
「そうだな。完全に悪魔に乗っ取られたら今以上に脅威になるもんな。」
「もっと強くなるの!?」
え?まだまだ成長期だよ?強くなる、強くなる。身長とか伸びてるもんね!……たぶん。
「そうだ。だから、今のうちに倒さないと!」
「この、悪魔め!食らえ!」
「おい、一人で行くな、よっ!」
「ぼ、僕も!」
はーい、魔法が3つ飛んできましたよー。風の刃一つに水の球二つですねー。掛け声有ったし、これは二代目を構えて防ぐ。全然早くないしな。余裕だ。
あーあ、床がびしょ濡れになっちゃった。まぁ、いつものことなんだがな。それに魔法でできた水は直ぐに無くなる。蒸発しやすいのか、魔力がないとそれを維持できないのか知らないが、まぁ、『魔視』で見る限り後者だろうな。だから、俺が水の球を食らってびしょ濡れになってもすぐに乾くのだ。
「おい!防ぐなよ!」
「そうだそうだ!ずるいぞ!」
「こうなったら、……えいっ!」
防ぐな、ずるいって、俺サンドバックじゃないんだけどなぁ。それに、弓が飛んで来た。こんなとこで放つなよ!先端が潰してあるとはいえ危険だろ?目とかに当たったらどうすんだ!後ろは壁と窓しかないから大丈夫だとは言え、失明したら責任とってくれんのかよ!そんなこと考えちゃいないだろうけどな!
「おい!矢は危ないって!」
「先生に見つかったら不味かったぞ!」
「う、うん、ゴメン……。」
お、ちゃんとわかってるやつがいるみたいだな。でも、矢は駄目で、魔法がいい理由とか知りたい。特に風の刃。あれは危険だろ!俺の毛皮をさっそく修理に出さないといけなくなる。
「でも、いい攻撃だったぜ?」
「ホント?」
「あぁ、いい攻撃だった。」
「ありがとう!」
確かに、危うく当たるところだったが、ここは褒めちゃダメだろ。反省しなくなる。
「あれー?レーヌちゃん!耳が生えてるー!」
アミラが来た。俺の耳は元から生えてるぞ?それに、これはカチューシャだ。
「わー、かわいいー!ね、触ってもいい?」
(コクッ)
アミラが俺のカチューシャをモフモフし始めた。
「尻尾もあるんだー。」
そう言いながら尻尾も撫でる。
「お、おい!アミラ!悪魔に近づくなよ!危ないぞ!?」
「そ、そうだ!離れた方がいいぞ?」
「え?悪魔?レーヌちゃん、悪魔だったの?」
(フルフル)
『罪人』、『魔王』と来て次は『悪魔』か。ちょっとランクダウンだ。ただ、『罪人』、『魔王』はまだ人の可能性があったが『悪魔』は人である可能性が低い。等々人間扱いされなくなったか。まぁ、『魔王』も大概だが。
「そうだよねー。こんなにかわいいんだもん。悪魔なわけないよね?」
「見た目に騙されちゃだめだ!その見た目で油断させるつもりなんだ!」
あれ?さっきと理由が違くね?子供なんてそんなもんだと思うけど。
「ふーん、そうなんだー。でも、レーヌちゃん、これどうしたの?」
[新しい装備だよ?]
アイツらはアミラが近くにいるから攻撃できないと判断して離れていった。とりあえずひと段落だ。
「へー。すごいね!あのストーンウルフ?」
(コクッ)
アミラにしては察しがいいじゃないか。そう、素材はあの時のストーンウルフのはずだ。二代目はギガースの骨も入ってるが。
「それにこの盾大きいね。前のより大きいよね?」
(コクッ)
大きい盾は今や俺のトレードマークだ。これがないとしっくりこない。まぁ、まだこの大きさには慣れていないんだがな。
「そっかぁ。じゃあ、レーヌちゃんは『大盾の悪魔』だね!」
(?)
「だって、大きな盾を持った悪魔でしょ?だから、『大盾の悪魔』!……それに、その盾、ちょっと怖いし。」
(コクッ)
まぁ、アミラがそう決めたのならそれでいいが、『大盾の悪魔』かぁ。それってどうなんだろうな。
「『大盾の悪魔』、レーヌにピッタリですわ。レーヌと対峙した者はよくガクブルしてますし。」
あぁ、『超悶絶!』ね。確かにガクブルしてるが、恐怖でじゃないぞ?それとエリザベート、平然と会話に入って来たが、あれだろう?逃げてきたんだろう?俺に攻撃が来なくなれば次に狙われるのはエリザベートだしな。アミラが近くにいるとアミラに当たることを恐れてあんまり攻撃されないからな。
ゴーーーーン
ん?もう授業が始まるみたいだな。さて、今日の算術もきっと簡単だろう。早く武術の授業にならないかなぁ。算術の授業はつまらないからな。今更九九とかやってられん!




