106話
翌朝、目を覚まし、訓練、水浴び、朝食、片付けをし、王都に向け再び出発した。
エリザベートの文句をみんなで流し、イネスが説得をし、休憩を減らすことでなんとか日が沈む前に王都に着くことができた。これで夕食はおいしいエルザの料理が食べられる。別にイネスの料理がまずいって言ってるわけじゃないぞ?ギガースの肉が不味いって言ってるだけだ。
俺たちは先ず、ギルドへ向かうことにした。早くこの荷物を処理してしまいたいのだ。
ギルドへ行き、先ずは依頼を完了させる。ギガースの目2個、ギガースの皮2枚、赤い実423個、ポイズンリーフ200枚、ストーンウルフの皮28枚、ストーンウルフの石28個を順に渡していく。
「申し訳ありません。赤い実23個、ストーンウルフの皮、石、それぞれ8つずつは条件を満たしていないため、報酬は出ません。こちらで買い取ることもできますが、どういたしますか?」
融通が利かないな。別に端数を受け取ってくれてもいいじゃないか。依頼者だってたくさんほしいんだろう?だって反復可の依頼だし……。
「レーヌ、どうしますの?私は売っても構いませんわ。」
(フルフル)
まぁ、受け取ってもらえないのなら仕方がない。赤い実は食べられそうだし、エルザに渡すことにする。ウルフの皮と石も使う予定があるし、それでいいか。
「畏まりました。それでは報酬の銀貨462枚を振り込みます。等分配でよろしいですか?」
(コクッ)
「では、そのように致します。他にご用件はございますか?」
俺たちはウルフの骨を見せる。
「ストーンウルフの骨ですね。28体分で銀貨28枚となりますがよろしいですか?」
[25体分でお願いします。]
「畏まりました。振り込みますか?」
(フルフル)
「では、現金ですね。ではこちらが銀貨25枚になります。お確かめください。」
(コクッ)
その後、同じようにして、ギガースの骨も1体分を売り、手元に銀貨30枚が集まった。
皆に相談があると黒板に書いて説明し、ギルドの隅の机を囲む。
「いったいなんですの?」
[報酬のことなんだけど、余った素材が欲しいんだよね。だから残りの銀貨は二人で分けて?]
「ストーンウルフはレーヌが1人で狩ったものですし、ギガースも1体はレーヌが1人で仕留めましたもの、私は別にかまいませんわ。ただ、どうして2人何ですの?」
「そうだよ。私、何にもしてないよ?」
[ここまで荷物を運んでくれたお礼ってことで受け取って?]
ここまで一緒にいて、何もあげないっていうのは気が引ける。確かにアミラは何もしていない。ここまで付いて来たのだって護衛が目的だ。しかも無償の。普通なら、アミラがこちらに支払うことになるのだが、今回の俺の提案は逆のものになる。
「レーヌ、貴女は馬鹿ですの?アミラは何もしてませんし、レーヌはアミラの命を救いましたわ。荷物を運ぶくらいは当然ではなくって?銀貨は私が貰いますわ。」
「うん!私はただ、恩返しがしたいだけだよ!」
エリザベートよ。何銀貨全部貰おうとしてるんだよ!本当だったら、ギガース1体分の骨、銀貨5枚の半分、銀貨2枚と大銅貨50枚しかもらえないんだぞ?
[エリザベート、この報酬は銀貨2枚と大銅貨50枚以外は全部私が稼いだものだし、文句があるならなにもあげないよ?]
「レ、レーヌ、それはあんまりですわ。」
[冗談だよ。でも、いいよね?銀貨は二人で分けて?]
「……わかりましたわ。」
[アミラは?]
「私は貰えないよ。命を助けて貰って、さらにお金も貰うなんてできない。」
[私はアミラにお金をあげたいんだ。私を助けると思って、ね?]
「わかった。じゃあ、お金をもらうから、それを護衛代として、みんなにあげるね?」
(フルフル)
この後も、お金あげる、貰わない、全部いただきますわ論争は続き、結局アミラの言った、受け取るけど護衛代として返すという案に落ち着いた。銀貨30枚はエリザベートが20枚、イネスが5枚、俺が5枚だ。
無事話がついたところで、ギルドを出てアミラ宅へと向かい、アミラを送り届ける。出迎えた執事は何故、こんなにも遅くなったのかと心配してたが、アミラは何も答えなかったので、それ以上追及することはなかった。
アミラ宅を離れ、寮に向かう。辺りはすっかり真っ暗だ。まぁ、結構話し込んでたし仕方ない。俺たちは急いで寮へと向かった。やっとギガースの肉から解放される。その喜びから、自然と足が速くなる。今日の夕食は一体なんだろうな。
寮に着き、エルザと会う。
「おかえりなさい。遅かったわね。心配したわよ?皆だって心配してたわ。ここ数日は雰囲気が暗かったし……。でも、これからは大丈夫ね。」
あぁ、そうだな。でもそんなことより夕食だ。俺のお腹はペコペコで、早くギガースの肉以外の料理が食べたい!
「夕食はありますの?」
ナイス質問だエリザベート。
「まだ、食べてなかったのね。ちょっと待ってて、今作るから。」
もう少し時間が掛かりそうだな。先にお土産を渡しておこう。俺は赤い実とギガースの肉、ウルフの干し肉をエルザに渡した。
「あら、ありがとう。ダンジョンで獲ってきたのね?じゃあ、作ってくるわ。」
さて、どんな料理が出てくるのか。楽しみだ。
俺はウキウキ気分で自分の部屋に荷物を置き、食堂で待つことにした。エリザベートもそわそわしながら食堂で待っている。エリザベートも楽しみなんだろう。
「おまたせ。どうぞ召し上がれ。」
しばらくしてエルザが持ってきたのはハンバーグの様なもの。上には赤いソースが掛かっている。また肉か。でも、ギガースの肉じゃないだけましか。
「レーヌが持って来てくれたものを使ったわ。ギガースを狩ったのね。すごいわ!」
ですよねー。えぇ、わかってましたよ。で、この赤いソースは赤い実から作ったんでしょう?ギガースの肉から解放されると思ったんだが、まぁ、お土産を渡すタイミングが悪かったな。エリザベート、スマン。俺のせいでこんなことになってしまった。
エリザベートはしっかりと俺を睨んでいる。貴女のせいですわという気持ちが伝わってくる。本当に申し訳ありませんでした。ただ、折角エルザが作ってくれたんだ。食べないわけにはいかない。俺は恐る恐る料理を口に運んだ。
臭みがない!ちょっと硬いが、それでもおいしい。ギガースの肉もちゃんと料理すればおいしくなるんだな。
俺の様子を観て、エリザベートも料理に手を伸ばし、一口目は恐る恐るだったのが、二口目からはものすごい勢いで食べていた。まぁ、俺も似たようなものだったがな。
直ぐに食べ終わり、俺たちは満足して就寝したのだった。さすがに翌朝も同じものが出てきたときはテンションが下がった。その様子を見たフェリシー以外のみんなに体調が悪いのか、怪我をしたのか、といろいろ心配されたが理由を知っているエリザベートと共に俺たちはため息をついたのだった。




