104話
俺はギガース達の攻撃を避け、ギガースに接近する。今からやる気法の射程はほぼゼロだ。しかもギガースの鱗に弾かれてしまうかもしれない。だから至近距離でギガースの肌に当てる必要がある。
俺は攻撃を避け続け、タイミングを見計らう。攻撃を受けてもダメージはないが、吹き飛ばされるからな。距離を詰められない。
(今だ!『リーフカッター』!)
俺は飛び上がり、ギガースの脚の付け根、鱗のない部分を斬りつけた。俺の初めての気法によって。再びこの気法を使うとは思わなかったな。あんまりこの気法にいい思い出ないし……。
ザシュッ
木の葉はギガースの腿に深く突き刺さり、大きな傷を残す。刃は通るようだな。いや、この場合は葉が通るか?まぁ、どっちでもいいか。
とりあえず攻撃手段を得たわけだが、こりゃあ相当時間が掛かるな。俺の体力とお前たちの体力、どっちが先に尽きるか、持久戦といこうか!
その後も俺たちは斬る、蹴る、殴る、を繰り返した。やはり『リーフカッター』も鱗は通らなかった。ただ、斬る度に俺は飛び上がっているわけので、攻撃は通る。そのかわり、飛び上がっている最中に蹴られるよく飛ぶ。なので接近が面倒だ。
あたりは暗くなってきている。暗くなると夜行性の奴らの方が有利だ。俺は気力の靄が見えているため暗くても大丈夫だが、エリザベートは違う。もし、エリザベートが戻ってきても援護は期待できないだろうな。ますます俺が不利になっていく。ここら辺で大きな一手を投じたいところだ。
ドン
横から木の幹をぶつけられる。考え事に集中しすぎて戦いが疎かになっていたようだ。横に飛び、木に叩きつけられる。が、俺はすぐに体勢を立て直し、追撃を避ける。
どうするかなぁ。せめて首まで届けば頸動脈を切って一発なんだが……。頸動脈の場所は一番最初のギガースで確認済みだ。問題はどうやって背の低さをカバーするかだ。木に登るか?いや、登ってる間に落とされるな。わざと殴られてその勢いを利用する?そんな神業俺にできるのか?よし、挑戦だけしてみよう。
俺はタイミングと確度を調節し、ギガースの攻撃を待つ。来た。ギガースの木を振り回すの攻撃だ。俺は飛び上がり、木の幹を両足で蹴る。振り回しの威力と相まって、俺は素晴らしい跳躍を見せた。しかし、その先は木。俺は頭から木に激突することになる。
ふむ、角度調節が難しいな。やはりここは堅実にギガースの腿を切りつけて立てないようにしてから仕留めるしかないようだな。
俺は攻撃する1体を決めた。最初に攻撃が通ったアイツだ。俺はソイツに攻撃を集中させる。最初の一発は綺麗に決まったからな。あんまり動けてないようだし、動けなくなるのももうすぐか?
攻撃を片方の足に集中させ、動けなくなるのを待つ。
3発目の『リーフカッター』が深く入った。それによってギガースは大きく体を傾かせる。体勢を崩すギガースの流れをそのままに、葉を首の軌道上に置き、『リーフカッター』を発動させる。
(『リーフカッタ』!)
ギガースの鮮血が俺に降りかかる。これで一体。次はどいつだ?俺は周りを見渡すとギガース達は一定の距離を置いてこちらに近づいてこない。どうやら仲間を倒された所を直接見たせいで、俺に恐怖しているようだ。これは好機。俺はギガース達を睨み、威圧する。自分の半分よりも小さい奴に脅されるのはいったいどんな気分なんだろうな?俺は精一杯の威圧感をだし、ギガースを脅した。
脅されたギガース達は後ずさりしながらその場から離れていく。ふぅ、何とかなった様だな。さすがにあと9体は無謀だ。できれば戦いたくない。
「レーヌ!?大丈夫ですの?」
(コクッ)
「貴女、酷い格好ですわよ?」
エリザベートが駆け寄ってくる。どうやらエリザベートも回復したようだ。これで帰れるな。あと、酷い格好とか言われても困る。まぁ、頭からギガースの血を被ったんだし、酷いのはわかる。でも、今は真っ暗だし、あんまり目立たないんじゃないかな。戻ったら洗い流せばいいだろう。
後は、どうやって2体のギガースを運ぶかだな。1体はガス君が運んでくれるとして、残り1体はどうするか……。
そう考えているとガス君が2体のギガースを引きずりはじめる。どんだけ力があるんだ、ガス君は!ただ、運べるっていうならありがたく運んでもらおう。
俺たちはズルズルという音を響かせながら帰路についた。
ダンジョンを出る際、係員の人が俺の姿を見て随分驚いていたが、ガス君の引きずる物やエリザベートの説明で事情を理解したらしく、『ウォーターボール』でギガースの血を洗い流してくれた。まぁ、代わりに俺はビチョビチョになったんだが、血が乾いてカピカピになってたからな。俺的にはカピカピよりはビチョビチョの方がマシだから問題ない。係員さん、ありがとう!
「……お疲れ様です。」
イネスが俺の姿を見て、一言、そうくれた。ホント、お疲れ様だよ!何回地面とキスしたり、木にダイブしたか……。俺ってそんなに自然を愛していたのか?
「これがギガースですか。初めて見ました。……大きいですね。」
(コクッ)
イネスがギガースを見てそう告げる。ちなみに、アミラは既に就寝中らしい。あんなに見たいっていてたのにな。まぁ、気術の練習頑張ってたし、疲れたんだろう。
「まったく、大変でしたわ。大きすぎて魔力の消費が多くなってしまいましたもの。」
「おつかれさま。」
まったくだな。エリザベートは今回魔力の消費が多かったならな。労いの言葉くらい言ってやらないとな。俺は最後の一言をエリザベートのために消費した。
「あ、ありがとうございますわ。レ、レーヌも、お、…………いえ、何でもありませんわ!」
なんか怒鳴られた。ちょっと悲しい。まぁ、いつものことなので気にしないことにする。
せて、寝る前にこいつらをなんとかしないとな。俺は2つの死体を見て、ため息をついてから解体を始めた。今日はもう寝むたいが、今やってしまわないとな。皮だって結構な時間放置してたからな。ちゃんと冷えてるかどうか怪しい。なるべく早く冷やしておきたいからな。今やってしまわないと。
俺は眠たい目を擦りながら解体を済ませ、就寝した。ガス君と一緒に寝ようと思ったら既にエリザベートに取られており、ならばラインスちゃんとと思ったのだが、ラインスちゃんはアミラの元にいた。俺は寂しく1人で寝ることになったのだった。俺、今日は結構頑張ったと思うんだけどなぁ。




