97話
5月25日 誤字修正
アミラが落ち着いたのでラインスちゃんを呼び、対面させる。少し驚いていたが、俺がワイバーンを所有していることは王都で有名だ。気絶したりはなかった。
しかし、アミラはフラフラだ。森の中を走り回っていたのだろう。しかも気力を結構使ったはずだ。気術は使っていないはずなので気力の消費による欠乏症は無いだろうが、それでも気力を使い慣れてない人が気力を使うと非常に疲れるのだ。幼児期の俺がそう。俺の場合は気絶してしまったからな。
ここからアミラを連れ出すのは無理そうだ。ラインスちゃんももう人を乗せて飛べない。アミラは盾様や鎧を身に着けているわけではないのでそれなりに軽いと思うのだが、俺よりも大きい。身長とか胸とか、ね。なのでラインスちゃんに乗せて運べないのである。もちろん俺にも運べない。『ストレングス』を使えば運ぶことは可能なのだが、盾様とかいろいろ邪魔なので運ぶときは引きずってしまうことになる。それに俺の両手がふさがることは避けたい。ストーンウルフに襲われた場合、素早く立ち回れなければアミラが危ない。ラインスちゃん1人で対処できない場合だってあるのだ。確実にアミラを守るために両手は空けておきたい。
木の根もとで座りながらそんなことを考えていると隣で座っていたアミラは寝てしまった。今夜はここでやり過ごすか。ギガースがちょっと怖いが最悪、俺がおとりになって、ラインスちゃんにはアミラを引きずって行ってもらおう。
俺はラインスちゃんと交代で警戒をしながら木の根もとで過した。アミラのために暖を取るために火を焚きたかったが、目立ちそうでギガースに襲われると思い、火は焚かなかった。その代わり、ラインスちゃんにアミラを包んでもらい、暖を取ってもらった。
夜間はストーンウルフが出ることもなく、ギガースにも襲われなかった。ストーンウルフはラインスちゃんのブレスが相当応えたらしいな。気配すらしなかったぞ。ギガースについてだが、ドスン、ドスンと言う足音が遠くで聞こえていたがたぶんそれがそうだろう。だが、その姿は確認できなかった。運がよかったな。
翌朝、明るくなってからアミラを起こし、ダンジョンの外を目指してゆっくりと移動する。明るくなって分かったのだが、アミラは全身に細かい傷があり、それも森を走り回ったのだから仕方ないか、と思う。一体なんで1人になったんだろうな。俺ならまだしもアミラだ。1人で放置されるなんてめったにないだろう。しかし、それを訊こうにも相当怖かったのか、昨日、ギガースの足音が聞こえたあたりからすっかり怯えてしまって訊けそうにない。思い出させるのも酷だしな。昨日もあんまり休めなかったみたいだしとりあえずはダンジョン外に出ることを優先させよう。
アミラのスピードに合わせ、途中何度も休憩をはさみながらダンジョンの外へ向かった。昨日同様、魔獣と遭遇することはなかった。このダンジョンの魔獣は夜行性らしい。今はそれがありがたいな。
無事ダンジョンから出られたのは昼過ぎ。食糧とか持ってこればよかったな。身一つで飛びたしちゃったし……。今回の反省点だな。人を助けに行くときはいろいろ持ってくこと。
ダンジョンから出るとエリザベートが駆け寄ってくる。
「レーヌ!」
バシーン
引っぱたかれた。その目は腫れている。いやぁ、心配かけちゃたかなぁ。ただ、その前にアミラをどうにかしないとな。
俺はイネスに目配せをしてアミラの治療をしてもらう。治療と言っても傷薬を塗るだけだ。1本銀貨10枚もしたんだが、この際仕方ない。持ってるだけじゃなく、使わなければ意味ないからな。
「レーヌ、心配しましたわ。黙って出ていくなんて!イネスに事情は聴きましたが、それでも私を起こしてくれてもよかったんじゃありません?」
「……ごめん。」
「起きたらレーヌはいませんし、ラインスもいませんでしたわ。イネスはレーヌが1人でダンジョンに向かったと言うし、後を追うにもガスとイネスに邪魔されましたわ。朝になっても戻らない。待たされる身にもなってくれませんこと?」
(コクッ)
「私たちはその……、と、あ、アレですわ。」
(?)
「っ。そ、それより、無事でよかったですわ。一体何があったんですの?」
俺はエリザベートに一部始終を教えてやった。
「そうなんですの……。アミラが1人になってしまったの理由はわかりませんのね。詳しくはアミラが起きてからにしましょう?レーヌも疲れてるのではなくて?休むといいですわ。」
俺はエリザベートの提案に従い、休むことにした。体は元気なんだが、眠気がな。まだまだ体は子供だ。よく寝ないといろいろ育たない。俺はガス君を抱き枕に寝ることにした。ガス君はエリザベートのおかげですっかり毛並みがよくなり、非常に気持ちいい。ゆっくり寝れそうだ。




