表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/125

96話

5月25日 誤字修正

 さて、エリザベートが起きるまで何をしようか……あんまり離れるわけにもいかないしな。こいつを担いで入り口に戻るか?一人で戻れる気がしない……。うーん、素振りでもするか。


 俺は盾様を構え、いつものように素振りをすることにした。素振りが終わると次は鎖を投げる練習だ。『スローチェイン』があるとはいえ、それでも練習はするべきだ。すべてを気法に頼っていたらいざという時対処できないかもしれないからな。 


 しばらく鎖を投げて、納得のいく投擲ができたところで休憩にする。しかし、よく寝るな。いつまで寝てるんだ?結構な時間が経ったはずだが?まさか、魔力の使い過ぎか?おいおいおい、待ってくれよ!魔力欠乏症なんて冗談じゃない!頼む、死ぬなよ!


 俺は心配になりエリザベートに駆け寄り、手を伸ばす。


「どうしたんですの?レーヌ。まさか、私を襲おうと…………。」


誰がお前なんか襲うか。幼児体型のお前なん何興奮はしないさ。襲うならクラエスとかクリスとかだろう。エデは身長はあるがなぁ。まだまだ子供っぽいしい。他は論外だ。しかし、よかった。魔力欠乏症ではないようだ。エリザベートも元気そうだしな。


「さて、休憩もできましたし、行きますわよ!レーヌ、急ぎなさい!夜までに稼ぎますわよ!」


確かに夜に森の中と言うのは危険だしな。このダンジョンにも夜があるのかどうかは知らないが……。ただ、お前が言うなよ!休憩長いんだよ!




 それから、俺たちは森の中を歩き回った。途中、ポイズンリーフを採取したが、それ以外はこれといったイベントはなく、夕方になってしまった。どうやらこの森にも夕暮れはあるようで、それなら夜もあるだろう。俺達はダンジョンを出ることにした。


 ダンジョンを出て、ガス君たちと合流する。今日の稼ぎは赤い実423個とポイズンリーフ2束だ。端数がどうなるかわからないのでアレだが、銀貨10枚ほど、移動に1日掛かったとすると稼ぎが少ない。魔獣が一体も出なかったしなぁ。どういうことだ? 



「そう言えば、エリザベート様とレーヌ様が入って行かれた後に御学友の方々が入って行かれました。中でお会いになりませんでしたか?」


夕食を済ませ、休憩しているとイネスがそう言ってきた。エリザベートは既に就寝だ。慣れないたびで疲れてしまったらしい。ベッド以外で寝たことなかったらしいからな。あまりよく眠れなかったのだろう。でも、冒険者として生きていくなら慣れなきゃいけないことだな。

 しかし、御学友、ね。森の中では会ってないな。まぁ、森は広かったみたいだし、会わなくても当然だろう。会わなくてよかったとも言えるな。ダンジョンの中でやい『魔王』だの、『罪人』だの騒がれたら堪ったもんじゃない。しかし、今の時間になっても外に出てないところを見ると、夜もダンジョン捜索をするつもりか?クラスの連中はそんなに強くなかったはずだが、他にも一緒に行った奴がいるのか?


[会ってないよ?まだ出て来てないけど大丈夫なのかな?]

「そういえばそうですね。夜のダンジョンは危険だと聞きますし、みなさんまだ、子供でしたから心配ですね。」


全員子供か……。ちょっと心配だな。探しに行くか?


「どうやら皆さんでてきたみたいですよ……?入っていったときは5人だったと思ったのですが。おかしいですね今は4人しかいません。数え間違えたのでしょうか?」

 

 何だと?4人?イネスの数え間違いならいいんだが、イネスがそんなへまをするとは思えないしな。気になるな。アイツらに会うのは嫌だが、ちょっと聞いてみるか。


「な、何だ、『魔王』。お、お前も来てたのか。」

[人数が少ないようだけど?]

「に、人数?何のことだ?俺たちはよ、4人だぜ?これで全員だ。」


コイツは確か……サミュエル、だったか?覚えてないや。他の3人も確かにクラスメイトだった気がするが……。

 そんなことはさておき、コイツの挙動がおかしい。焦っているような感じだ。他の3人もこちらと目を合わせようとしないな。これは何かを隠している。おそらく1人置いてきたのだろう。何故だかは知らないが、クソッ!夜の森で1人だけとか、危険すぎる!助けに行くか。助けられるかもしれないのに助けないのは目覚めが悪い。しかもそれが知り合いである可能性が高い。例えそれが俺をいじめてるやつだとしてもだ。


 俺は一旦イネスのところへ戻り、事情を伝える。


[森の中に一人だけ置いてきたみたい。]

「え?どういうことですか!?」

[詳しいことはわからないけど、ちょっと行ってくる。]

「き、危険です、レーヌ様!」

[エリザベートが追ってこないように見張ってて。危ないから。]

「しかし!」


 俺はイネスの返答を効かずにダンジョンの入り口へと駆け出す。説得している時間が惜しい。ラインスちゃんが俺の様子に気づき、付いてきた。ガス君も付いて来たそうだったのだが、エリザベートにがっちりホールドされており、抜け出せそうにない。ガス君にはエリザベートのお守りをしていて貰おう。



 ダンジョンの入り口で銀貨10枚を払い、ラインスちゃんと一緒にダンジョン内に入る。勿体ないが、今はそんなこと言ってる場合じゃない。


 ダンジョンに入り、俺はラインスちゃんの背に乗る。少しの間なら装備を付けたままの俺を乗せて飛べるようにまでラインスちゃんは成長している。ほんの5分ほどだが、それでもその間のスピードは桁違いだ。俺が走るよりは極めて速い。ラインスちゃんに乗って、残された1人の捜索を始める。


 捜索を始めてすぐにラインスちゃんが何かに気づいたらしく、そのスピードを上げて目的の場所へと進んだ。


 目を凝らすとそこにはアミラがいた。全速力で走っている。後ろには数十頭の狼。色はくすんだ黄色で額に橙赤の石がある。ストーンウルフだ。ストーンウルフの石は銅であり、鉱石を採取できる魔獣の1つだ。

 アミラはブーツに気力を溜めており、その速度を上げているようだ。足から気力が出ることを教えて貰ったみたいだな。ただ、気術はまだ教えて貰っていないはずだ。気術を教えて貰えるのは初心者組では武術専攻の中等部からだ。アミラは確か座学専攻、気術を教えて貰うのには教官に実力を認められなければならない。アミラにそんな実力があるわけもなく、月に2回程度の武術訓練しかやってないはずだ。


 このままだとアミラが危険だ。俺はラインスちゃんに狼たちを追い払うように合図する。

 俺はラインスちゃんから降り、『ラッセルチャージ』でアミラとの距離を詰めた。


「きゃっ」


ラインスちゃんのブレスに驚いたアミラが軽く悲鳴を上げる。恐怖で声が出にくい様子。ブレスを見たアミラは若干放心状態だ。


 アミラが止まってくれたおかげで追いつくことができた。


(チョンチョン)


俺はアミラの肩をたたく。アミラはゆっくりと後ろを振り向き、俺を見ると抱きついて、わんわん泣き出した。怖かったんだろうな。俺は手をまわして背中をゆっくりとなで落ち着かせた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ