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賢者ユーグス  作者: natsu
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--5--

「さ、あとはこの一本道を進むだけでございます。まっすぐ進むと約10分ほどで泉が見えてくるでしょう。迷うこともないでしょうから、それで、あの・・・」

「わかりました。ここまでで結構です。道も簡単でしたから迎えも結構ですよ。われわれが宿泊する施設の準備だけお願いできますか。それと食事も。」

「あ、はい。わかりました。では、賢者様、アルフレッド様。どうぞよろしくお願いいたします」

泉にはできるだけ近づきたくないのであろう村長の意向をくんでこれ以上の案内を断ると明らかにほっとした様子を見せ、何度もお辞儀をしながら帰って行った。




10分ほど歩くとレントン村長のいっていた通り泉が見えてきた。

「わ~。見えてきたよ、ユーグス。」

アルフレッドが指差す先には確かに泉があった。

「確かに、レントン村長の言った通り。凍っている風には、見えないな」

「そうだねぇ」

そういって歩を進め、泉まで数歩と言ったところでようやく泉が凍っていることが見て取れた。

「わぁ~お。確かに、凍ってるねぇ。こんな近くまでこないとわかんないなんて・・・」

つるつるとした泉の面をなでながらしきりに感心した様子でアルフレッドがつぶやく。

「なるほどな」

ユーグスもその感触を確かめながら得心が言ったように深いため息をついた。


「え?なになに?もしかしてこの原因何かわかってるの!?」

「まぁな」

「うっそ!なになに?ちなみに僕はここに来るまで氷系のスライムが泉に大量発生したのかと思ってたんだけど。」

「うむ。だったらよかったのだがね。私もそれに一縷(いちる)の望みをかけていた」

「じゃぁ、なんなの?」

「ドラゴンだ」

「へ?」

「スノードラゴンであろう。私も見たことはない。だが、古い書物にある事象にそっくりだ。」

「な、なななな、なんだって~~~!?」

「わっ!ばか!!」

驚きのあまり大声を出したアルフレッドの口をあわててふさぐ。泉は相変わらず静寂に包まれており安堵のため息をついた。

「ご、ごめん。でも、ドラゴンだなんて」

いつもののほほんとしたほほえみを消してすっかり青くなったアルフレッドはうろたえた。

無理もない。ドラゴンは人類の歴史上数えるほどしか確認されていない。それも何人(なんぴと)も決して立ち寄れない超自然の中に住んでいる。住んでいる場所が場所だけにそれは推測でしかないが、ともかく、ドラゴンは圧倒的な力を持ち、人智をはるかに超えた存在として認識されており、人生の中でまずお目にかかる事のない超貴重種なのだ。


「この泉が凍っているのはなんでなの?」

おそるおそる、といった風でアルフレッドが尋ねた。

「私の記憶では、産卵、だな。おそらくこの氷の下にドラゴンとその卵が眠っているのだろう。泉は濁っているからな。水底まで見えなかったのは村人にとって幸いだ。ドラゴンの姿が見えようものなら発狂する。」

もはやアルフレッドは言葉もなくぱくぱくと口を動かして、顔色は真っ白だ。

「うるさく騒がなかったのだろうことも懸命だったな。機嫌をそこねさせてしまったら、一瞬であたり一面氷漬けだろう。アル、叫ぶなよ」

ユーグスがアルフレッドに忠告するとあわてて口を両手でふさいだ。


「ね、ねぇ、どうするの」

「一番良い方法はこの地を撤退することだな」

「うぅ~~。でもこの村は銀の採掘場所でもあるし・・・。王女が許さないよ。どうしよう、ユーグス。勝てない?」

「無茶言え。まぁ、戦ったことなどないからわからんが。」

「じゃあ」「君は私を殺す気かね?」

お願い、と続けようとしてユーグスに遮られた。

「はい・・・すみません」しょんぼりとその場にすわりこんだアルフレッドは解決策を見いだせぬまま頭を抱えた。


「ひとつ、方法がない訳ではない」

やれやれといった風にユーグスが語りかけた。

「え」

アルフレッドの目が輝く。

「うむ。直接交渉すればよい」

「え゛」

固まった。


「ちょ、直接ってどういうこと」

「あまり知られてはおらんが、ドラゴンはしゃべれる。しゃべるというより頭に直接語りかけるという方が正しい。テレパシーのようなものだな。スノードラゴンではないが別種のドラゴンとしゃべったことがある。まぁ、ドラゴンからの一方的な会話ではあったし、やつらの考えることは崇高すぎて、というか、抽象的すぎてよくわからんかったが。スノードラゴンもしゃべれれるかはわからんが、まぁ、大丈夫だろう」

「君はホントびっくり人間だね・・・」

ドラゴンと対峙した人間など聞いたことがない。ましてや話をしたなんて。ユーグスは本当に賢者なのだと改めて痛感したアルフレッドであった。


「さて、時間が惜しい。早速取り掛かるとしようか、アル。」

「は?て、まさか僕も!?」

「当たり前だ。この依頼を持ってきたのは君だろう。責任を持って手伝いたまえ。」


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