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異世界ミリオタ記  作者: 慶蘇 静明
日原(ひのはら)国編
1/6

一話 影から生まれし者









────真昼、背に身の丈ほどもある不恰好なボウガンを背負い、森の中を進む子供の姿があった。


身の丈は低く、6歳ほどだろうか。しかし、その体躯は年齢に反してそうと解るほどに鍛えこまれている。


未だ丸みを帯びた体ではあるが、太い手足と肩幅の広い骨格は大型の肉食獣の仔を思い起こさせた。


土と草を刷り込まれたボロボロの布を頭から被り、小枝や枯葉の散乱する森の中に置いても出来るだけ音を立てずに進む。



頭から被って首元を紐で縛り、フードのようになった黒ずんだ布は少年の姿を良く森の中に紛れさせる。


そして刷り込んだ草と泥の匂いが人間の匂いを殺す。


言わば急造のギリースーツのようなものだ。



「目標地点に到達。この辺りでいいか・・・・。」



またそう呟く小声には、6歳児らしからぬ確かな理性の煌きが宿っていた。


ペタペタと幼い手で触りながら木々を確認してゆく。目的に即した条件を持つ木を探しているようだ。


そして森に入ってすぐ適当な高木を見つけたようだ。



「・・・この木がいいか。」



目当ての形をした木の付近で子供は中腰でボウガンを構え、且つ機敏な動作で前後左右上空を確認する。


体ごと動き、いつでも照準を合わせて引き金を引けるようによく訓練された動きだ。



「・・・クリア!」



子供は周囲を確認し、敵性体が見つからない事を確認し終えた。


ゆっくりとボウガンを再び背負いなおすと、子供は深く息を吐く。


高低差の無い地上で仔鬼族の敵影が見えたなら、即座に踵を返し村へ帰還する腹積もりであったがその心配はなさそうである。


村までの距離も近い事を確認すると子供は小さな四肢を限界まで使い、するすると木を登って行く。


程なくして子供は樹高3メートルほどの位置に辿りついた。



「よし、これより作戦行動に移る。」



村から離れすぎぬよう、されど比較的大物を狙うために程ほどに深く。


ある程度の距離を保ちつつ背には常に村の結界を置き、高木に登り獲物を探す。


幼児の体で狩をするために彼が考え抜いた基本戦略だ。


実践するのはこれで四度目だが、ここまでは上手く出来た。問題は此処からである。



子供は木に登り終えると太い木の枝の上に陣取る。


そして背負った不恰好なボウガンを外すと、上手い具合に突き出た太い枝にボウガンのバレルを乗せた。


枝をフォアエンドに見立てた狙撃の姿勢だ。


いくら鍛えられているとは言え、子供の力で大きなボウガンを支えたのではブレが出る。それ故の構えだ。



太い木の枝の上でバランスを取り、膝立ちになった子供は前にあるもう一本の枝に合わせて体を動かしながら敵を探した。


この辛い体勢では、狙撃の可能な範囲角度は精々110度くらいだろうが、その範囲に獲物が見つかりさえすればいいのだ。


息を殺しながら、慎重にあたりを見回す。


幸いな事に今は昼間でこの森は比較的明るい。昼行性の動物はこの位置からなら良く見える。


じっと待つ。


これまで3回ほど同一の作戦を実行してきたが、未だ目当ての獲物は表れなかった。


兎やキジ程度なら、ボウガンでなくとも捕らえる事が出来る。


それをわざわざ強力なボウガンを作って敵影を探すには訳がある。



・・・・。


それから、三刻半の時間が過ぎた頃だろうか・・・4度目の今日にして遂に目当ての獲物を発見する事が出来た。


ガサガサと無警戒に動く仔鬼が、視界の中に一匹現れる。


太陽が傾いてきたため、夕暮れを警戒し拠点へ帰還することを考え始めていた子供は、逸る鼓動を抑えつつも前方に目を凝らした。



「・・・12時の方角、仔鬼の成体を一体確認。」



急にバクバクと緊張に早鐘を打つ心臓をなんとか鎮めて、真北凡そ80M程の地点でマヌケにもどんぐり拾いなどしている仔鬼をみやる。


醜い犬のつぶれたような顔に、貧相な体つき。人間の子供くらいの身長のバケモノだ。


かなり距離はある。姿もあまり大きくは見えない。


だが姿を隠す気もなく、こちらに気付いていない。そしてなにより、"一匹"・・・・だ。


理想的な獲物である。



狙いは頭部だ。距離もありスコープも無い。手作りのボウガンは精度もそこまで良くは無い。


だが、一撃で倒せるか倒せないか。その一点が明暗を分ける。


外せば相手は気付くだろう。矢は一発しかもって来ていないし、子供の力ではボウガンを短時間で再装填できない。


逃げずに向かってくる可能性もある。


村までたどり着く前に追いつかれれば、死もあり得る。


だが威力は十分。当たりさえすれば70メートルの距離でも頭を十分にかち割れる。



賭けになる。殺すか、殺されるか。生存戦争である。


じっとりと汗ばむ手。カタカタと震える手が照準を狂わした。



ドクドクと流れる血潮が全身を巡る。


世界には、己と獲物しか居なくなる錯覚。70メートルを隔てる距離が薄皮一枚に変わる幻。


薄暗くなりつつある森の中、極限に研ぎすまされて行く魂で、子供はゆっくりと引き金を引いた。



ビュンッッ!!



風を切って仔鬼の元へ矢が急いだ。続いてドスっと鈍い音が響く。


だが刺さった対象が仔鬼か地面かまではわからない。


子供は草と泥で汚したボロ布ごと身を乗り出し、状況を確認しようとする。



「・・・・・・やったか!?」



だが遂にいよいよ薄暗くなってきた森の中で、ドサリと前のめりに倒れるヒトガタが何とか見えた。


体の何処に当たったかまでは良く見えないが、即死のようだ。ぴくりとも動かなくなった。


それを眺めると、何か熱いものが胸をよぎる。


ついで、達成感だけではない圧倒的な充足感が子供の体を満たしていった。



「これは・・・おお、遂にか・・・きたきたきた・・・・!!」



待ち望んだ出来事に、小声で子供は感嘆を漏らす。


体に活力が満ち、肉体が進化を始める。




あなたの レベル が上がりました。


ステータスを 更新します。



名前:葛原秋一(6歳)

称号:見習い狩人

職業:----

Lv :15(12→15)


HP :132/181(157→181)

MP :20/32 (20→32)


力 :64   (50→64)

速度:35   (16→35)

反射:39   (30→39)

抵抗:33   (15→33)

知能:119   (119→119)


ボーナスポイント 18


【パッシブスキル】

・兵士の心得(偽)  Lv11

・環境適応能力    Lv6

・悪食        Lv5

・学士        Lv9

・狩人の心得      Lv5


【アクティブスキル】

・狙撃      Lv15

・槍術        Lv14

・槌術   Lv14

・陰行        Lv10

・投擲        Lv19


【魔法】

・----




頭の中にメッセージが流れ、集中するとゲームのようなステータス表示画面が脳裏に浮かんだ。


レベルがいきなり3つも上がったのは、かなり各上の相手を倒したからだろう。



(・・・・いきなりレベル3も上がったか!!元が低かったとは言えこれは予想以上に美味い!!)



子供は口をにんまりと吊り上げると、いよいよ夕方に差し掛かった森から撤退を開始する。


たかが仔鬼一匹。されど仔鬼一匹だ。この年であれを仕留められる人間がどれほどいるか。



「・・・・・任務達成。これより帰投する。」



にやけた口元を何とか噛み殺すと、子供はするりと木から降りると一目散に村の門へと急いだ。


夜になればあのマヌケな仔鬼族等比べものにならないおそろしい獣が森をうろつく。


今の自分のレベルではそれらの恐ろしい獣には太刀打ちできない事を子供は十分承知していた。


だが差し当たり結界の中に入りさえすれば安全だ。


姿勢を低くし、枝葉を踏み抜きながら子供は走り続けた。



*



森を抜けると草原のど真ん中に村の門がある。


結界は巨大で、ここの辺りの村や町を丸ごと覆う結界は大体直径10km程はあるらしい。


形状は基本的に真円で、最外円の円周上に幾つかの門が設けられている。


基本的にこの門が出入り口だ。


ゴツイ鳥居のような門で、入り口には大量のお札が貼られている。


いかなる効果によるものかよほど強い魔物でもなければ人間以外はこの門をくぐる事は出来ないらしい。


そしてこの巨大な結界の中に村・町・畑・城、そして草原や山や森さえも。人間の営みに必要な全てが収められているのだ。


この世界に置いては、これが常識なのである。



俺は結界内の草原を超えあぜ道を行きながら、ついにゴブリン・・・みたいなものを倒した感慨に浸っていた。


もう二年、だがまだたった二年だ。


あの日からここまで来るのは中々骨が折れた。



・・・ある日目を覚ますと、俺はは己が一介の幼児となっている事実を発見した。


始めは周りの物全てが巨大になったのだと錯覚。


ついで己が極端に小さくなっている事を理解した。


されど、見渡す限り木で出来た古めかしい家屋に見覚えは無い。


己が幼児になった事実はあれども、このようにまったく見覚えもなければ探しても見つからんような場所に居る理由にはならないだろう。



あの時ばかりは本気で途方にくれたものだ。気でも違えたかと思った。


今でこそ一人前に地に足つけて行動することが出来るようになったが、二年前は家族に随分迷惑をかけたものだった。



「ただいま。帰ってきたよ父さん、母さん。それと姉さん。」


「今日も遅かったな。また、草原で狩りをしていたのか?程ほどにして置けよお前はまだ小さいんだから。」


「お帰りなさい秋一。あんまり危ないことはしないでね。」



父と母、それと義理の姉。この三人に、まだ一歳の妹が一人。


彼らがこの世界での俺の家族だ。みな良い人間である。



「うん。危ない事はしないよ。出来る事だけ。」



・・・・俺には前世と言うものがある。と言ったら誰か信じてくれる者は居るだろうか?


今は意図して幼い口調にしているが、実はこの六歳児の頭の中身は二十歳相当だと言って笑わない人間は居るだろうか?



だが聞いて欲しい。俺はかつて前世では日本と言う国で大学生をしていた人間だ。


頭がおかしくなった訳でも、夢を見ているわけでもないと思う。


厳然たる事実として俺は死後この世界にやってきたのだ。幼児の姿で。



唯一救いとなったは、俺は突如この世界に来てこの幼児の体を乗っ取ったわけではなくキチンと母の胎から生まれていたらしい事か。


落ち着いて思い出してみれば俺は突然この世界に来たんじゃなくて、実際には4歳までこの世界で暮らした記憶を持っていたのだ。


だからこそ、今では彼らをなんの気負いもなく家族と呼ぶ事が出来る。


突然前世の知識や常識が蘇ったせいで混乱したが、この世界の四年間の記憶のおかげで割りと順応出来ているのだった。


この世界での俺の名前は、姓を葛原。名を秋一と言う。



「今日はキジが一匹獲れたよ。それと兎も一羽。」



そう言ってぐったりと動かない兎とキジを掲げてみせる。


あれから、俺は帰りの道すがら見かけた獲物を適当に捕まえて置いた。


レベルが一気に上がったおかげで、前なら一日かけてなんとか捕らえられたような相手が簡単に獲れるようになったらめだ。


勿論道具の力あってこそだが、この力はすごい。


Lv15と言えば、大体村の一般的な12歳程度のレベルだ。


齢6にして12歳並の身体能力が発揮できるようになると、長い梃子で無理に引いていたボウガンの弦が簡単に引けるようになった。


もう少しレベルが上がれば、道具を使わなくても引けるようになるかもしれない。


もしかすると、ボウガンでは無くただの弓でも十分な殺傷能力を得られる可能性もある。



とは言え、ゴブリンのような姿をした仔鬼族の死体には、一応今回は近寄らないようにしておいた。


血の匂いを嗅ぎ取った仲間が居るかもしれないし、別に食べたりするわけでも無いからだ。



基本的に人はサルは食わない。ならば類似するヒトガタの生物を食するのも抵抗があるのは当然の事だ。


となるとLvUpのためだけに殺したと言う若干罪悪感の残る結果となり兼ねないが、どの道やつらにはよく村の人が襲われるのだ。


積極的に殺して間引く事に躊躇う事は無かった。必要な事である。


惜しいと言えば奴等の身に着けている道具が惜しいといったくらいのものか。



「また獲ってきたのか、凄いなお前は。父さんがお前くらいの頃はそんなこと出きなかったぞ。」


「あらあら、最近はすっかりお肉を食べるのも普通になってしまったわね。腕によりをかけてお料理するから、ちょっとまっていらっしゃい。」



そう言って父さんは俺の頭をガシガシと撫で、母さんは兎とキジを捌きに行った。


これまで純粋な6歳児の力で兎だのキジだのを捕獲できたのは、ひとえに現代で培った知識の賜物と言える。



俺は現代の世界ではかつて大学2年生のミリオタであった。


成績は低迷していたが雑学は要らんほど頭に入ったし、趣味のサバゲーはそこそこの強さ。


それだけは俺の胸をはって言える特技と言えた。



もちろんそんなものに基本的に価値がつく事など無いが、この世界に来てからはその雑学に助けられる事がとても多いことに驚く。


そしてその雑学の中には、ある漫画で紹介されていたボーラという二つの石を紐で結んだ道具があり、俺はそれを使って狩りをしていたのだ。


紐を編んで中の石が出ないようにするのに手間取ったが、出来てしまえば非常に優秀な狩り具だ。



「何が食べたい?シュウちゃん。」


「きのこ鍋がいいな。まだ昨日父さんが取ってきたなめこと椎茸が残ってるでしょ。」


「ええ、たくさん取ってきてくれましたからね。それじゃあ、きのこ鍋にしましょうか。」



そう行って母さんはキジの首を落として土間に吊り下げたあと、兎の皮を剥ぎ取り始めた。


これまで20匹以上獲ってきているので、もう皮を剥ぐのも慣れたものだ。


ボーラで足を絡め取った後、棍棒で殴って殺しているので傷が少ないいい毛皮になる。



「・・・・シュウちゃんは凄いね。私はまだ兎には追いつけないよ。どうやって捕まえるの?」



両親がそれぞれ料理に縄ないにと、それぞれの仕事にもどるとイチ姉さんが話しかけてきた。


黒髪も艶やかなかなりの美少女で、将来を待つまでも無くそこらの武士にでも求婚されそうな勢いの美人である。



市姉さんは俺の三歳年上の姉ポジションの人で、さる筋からの預かり子らしい。レベルは20。


まだ成長期でない内は純粋な成長によっては中々レベルが上がらないらしいが、この姉は規格外である。


一般的にレベル20相当といえば15歳相当くらいなのだが、姉さんはまだ9歳だ。


兎に"まだ追いつけない"等と言っているのあたり、すぐに追いつけそうな感触はあるらしい。


末恐ろしい。



「石を投げて捕まえるよ。それで弱った所を棒で殴る。」



・・・嘘は言ってない。


ただボーラの存在をぼかしているだけだ。その内村の皆に広げようとは思っているが、今はまだ秘密にしておくべきだろう。


切れるカードは多いほうがいい。



「へー、でも石ってそんな簡単に当てられる?」


「練習すれば出来るよ。一杯投げればだんだんこつが解ってくる。」



かつて何度も何度もボーラを投げているうち、コツが掴めて来た所でアクティブスキルとやらを習得する事が出来た。


手に血豆が出来るほど投げた結果だが、「スキル:投擲」を取得する前と後では技術の習熟の早さが段違いだった。


故にこれも間違いではない。



「うーん、私もやろうかな。」


「・・・・止めといたほうがいいと思うけどな。姉さんどんくさいし。」


「なんですって~?そういう事をいうお口はこうしちゃうわよ!」


「いふぁふぁ、いふぁいよ。」



ぐいぐいと頬を引っ張る市姉さん。


こういうコミュニケーションは前世で一人っ子だった自分には中々新鮮な経験である。



「できたわよ~。市ちゃん、シュウちゃん。ご飯よ。」


「あ、いい匂い。」


「美味そうだな、これは。」


「ふぉうでもひいけど、ふぉおがふぉとにふぉどらないひょ(どうでもいいけど、頬がもとにもどらないよ)。」



姉さんはきのこ汁の匂いがすると、俺の頬からぱっと手を離して囲炉裏の周りにいそいそと座った。


俺もそれに続く。


家主である父さんが最初にご飯をよそられ、一応長兄である俺が次。


社会的な立場はおそらく上であろうが、一応女性で子供の立場である市姉さんが最後になる。


結界の端に住む一農家に過ぎない家でも、割と厳格な教育が行われている事にはすこし驚いたものだ。


こういう所は前世ではまったくとは言わないが習っていなかった事なので、本気で子供並の行動をよくしてしまう。



「それじゃ、頂きます。」


「「「頂きます。」」」



父が最初に手をつけてから、皆碗によそられたきのこ汁を啜る。


きのこ汁とホカホカの玄米飯が実に美味い。狩りとトレーニングで腹をすかせていた俺は、とにかくそれらを腹に掻き込んだ。


だが単に食い意地が張っているだけではない。これも頑丈な肉体を作るための、一つの修行だ。


いくら食べたってたかが6歳児の食べる量などしれているが、それでも俺は限界以上に食べる。


食うに困らないだけの稼ぎがあるのはありがたい。


富んでいるとまでは言えないまでも、村の中でもそこそこの稼ぎがあるので遠慮なく食うことが出来る。



「ガツガツガツ。」


「・・・・秋一はいつも良く食うなぁ。大きくなるぞ、お前は。」



父さんが呆れ混じりに頭をなぜる。


基本的に、この時期によく食べよく動きよく休む事が後々の体格を決定する要因になる。


俺が積極的に狩りに出るのも、レベルアップのためでもありタンパク質確保のためでもあった。


幼児の体に大人の意識と、現代のスポーツ科学が宿るが故の反則である。



「お行儀悪いよ、シュウ。」


「むぐむぐ・・・・姉さんが良すぎるんだよ。あと箸の持ち方間違ってる。」


「えっ、嘘。」


「うん、嘘。」



喋りながら食べるのも大概行儀が悪いらしいが、まぁ所詮ウチは一農家に過ぎないのでこんなものであった。


それに無言で汁を啜るよりも皆で和気藹々と食べたほうが飯が美味い。



「こら、シュウ。・・・もうっ!」



姉さんはからかいやすくて困る。


大人気ないと思いつつも、可愛らしくむくれる顔が見たくてついつい突付き回してしまうのだ。


行儀を注意した手前食事中に手を出す事の出来ない姉さんはむすっとしながら箸を進めた。


それを一才になる妹に、消化の良い良く溶いた粥を与えている両親が微笑ましげに見ている。


それに気付いた市姉さんは余計に顔を赤くしながら箸を早く動かした。



日常の一風景である。



今日も何事もなく一日が終わろうとしている。


俺の始めての魔物狩りの成功と言うイベントも、気付けば日常に埋没して明日が来る。


俺は右も左もわからぬ異世界で生き抜くために、今日も頭を捻るのであった。





つづく。






























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