二人の温度差
「家ってどういう意味だったっけ?」
「『廃屋』」
「絶対違う!」
そんなやりとりを思わずしてしまう程一縷の家——廃屋は酷かった。
屋根は一部欠損しているし、木造の壁は所々剥がれ落ちている。
色は全体的に木を腐らせたような嫌な色であり、心霊スポットとして紹介されそうな場所だ。
その廃屋の隣には澄んだ川がサラサラ流れている。
「ホントにここに住んでる訳?」
「ああ」
訝しそうに尋ねるアルテミスにしれっとした様子で答える一縷。
アルテミスは廃屋に歩いていく一縷に衛生面は大丈夫でしょうね? と問いたくなる気持ちを抑えてついて行く。
ドアを開けるとそこは割と綺麗な部屋であり生活臭というものが全くない。拍子抜けだ。
この落胆にも似た気持ちは、意外にも別世界のように汚い部屋を楽しみにしていた証拠なのかもしれない。
真ん中に木製のテーブル、部屋の端にはドラム缶が寂しげに立ってある。その直ぐ上に蛇口が取り付けられてある。
木製のテーブルには赤色のテーブルクロスと雑巾、ライター、新聞、鉛筆、雑誌が載っていた。
「まあ座れよ」
いつの間にか移動していた一縷が椅子を引きながら言う。
まず間違いなく一縷はここで住んでいない。
こんな所で住める者なんていないだろう。
しかし、掃除をしている所を見ると何かしら使っているに違いない。
(私をまだ信用している訳じゃないってことね。もしくは罠に掛けるつもりなのか……とにかく用心した方がいいわね)
と、アルテミスは甚だ見当違いの事を考える。
「ええ」
頷きながら、どこまで話すのかを心の中で算段する。
ここからが本番だ。
◆◆◆◆◆◆◆
「あなた、その力を持っていたい? それとも消したい?」
アルテミスは机の雑誌を横目で見ながら尋ねる。クロスワードパズルだ。
「どうでもいい」
一縷はやる気なさそうに頬杖をついて答える。
実際、この力に拘る理由もなければ消す理由もない。
アルテミスが欲しい、と言うのならばすぐさまあげようとも思える。
アルテミスは少し狼狽したかのように表情を変化させる。
「ああ、そうそう。重大な情報って何な訳?」
一縷はそう言えばそんな事言っていたなーと思い尋ねる。
「え、あっと……さっきの話と、能力を持ってるデメリット……まあ可能性なんだけどね……」
言いづらそうにじれったい間を開けてから、
「死ぬかもしれない」
そう言った。