お菓子屋さん
三題噺もどき―きゅうひゃくごじゅうさん。
自動ドアをくぐると、どこか聞き覚えのある音楽が聞こえてくる。
それをアレンジしたものだろうけれど、軽やかで楽しげのある曲だ。
元はクラシックに分類される曲だったと思うが、アレンジが加わるとこんなに雰囲気が変わるんだなとなぜか感心した。
「……」
全体的にオレンジ色の暖かなライトが照らす店内には、あまり人はいない。
時間が少々遅いからか、それとも単に平日だからなのか。
あまりこういう店の客の出入りって想像がつかないよな……。
「……」
そりゃ、季節ごとの限定とかがあるからそういう時は多いだろうし。
けれど多分、閑散期というのはありそうだし。
だが、こう、毎日、誰かの誕生日ではありそうだし。
「……」
でもまぁ、ケーキ屋さんってここだけではないからな。
むしろ、昔からあるケーキ屋さんではないから、少ないのかもしれない。
少し離れた位置に、地元では有名なケーキ屋さんがある。
この辺りにずっと住んでいる人は、そこに行くこともあるだろうし。
「……」
けれど、比較的値段は手に取りやすいし、他のお菓子も充実しているし、何よりチェーン店なのでその強みはあるだろうけれど。
ケーキは季節ごとに可愛らしいものが並んでいる。今日はハロウィンが多めに見える。一個だけお月見のウサギがいるけれど。
「……」
定番のショートケーキや、チョコケーキが並ぶ。
チーズケーキもあるし、モンブランも並んでいるようだ。
ハロウィン関連はかぼちゃと黒猫と、アレはミイラだろうか。あとは、いつも並んでいるプリンアラモードのハロウィンバージョン。
大き目のケーキもハロウィン仕様のものがあるらしい。可愛いけど、我が家ではホールケーキを買うことはない。全員見事に違うモノを食べたがるので。
「……」
こういう季節ものとか、そうでなくても何かとテレビに出て、売れていくだろうし。
お菓子が豊富なのは、かなり強いと思う。
ケーキって、ご褒美とか誕生日とかのイメージしかないが、お菓子はお土産に持っていくには丁度いいモノばかりな気がする。数もしっかりと入っている物が多いし、季節ごとに変わっているものもある。
「……」
ここはそう、アイスもある。
有名なのはむしろこちらのほうかな。
私はあまり冷たいものが得意ではないし、溶けると汚れるのが解せないので―面倒くさいと私も思う―食べることはそうそうないのだけど。
妹が好きで、ここに寄った帰りには買ってくるまで食べている。
「……」
それをすこし貰うことがあるのだけど。
これは確かに、あの触感と程よいチョコの甘さは人気になりそうだと思った。
最近は更に食感を強めたものも売っているが、これは食べたことがない。
妹が買わない限り食べないし。
「……」
和菓子もしっかりあるから、なんか案外客入りはしっかりありそうだ。
私はここのヨモギ餅が好きでたまに手に取ることがある。
店の端に、他の商品と同化して置かれている値引きされたやつを。
どうせその日のうちに食べるから、安くて味もさして変わらないならその方がお得だ。
「……」
今日は残念ながらなかった。
冷蔵の方にお化けの乗ったあんみつが置かれているのと、プリンとコーヒーゼリーが並んでいた。なんか食べたいんだけどなぁ。
「……」
シュークリームでも買ってもらおうかな。
ここのシュークリームも結構おいしくて気に入っている。一番は、普通のそこら辺のスーパーとかで売っている100円にもならない皮の薄いやつなんだけど。
「……」
今日はチョコの方にしよう。
クリームも美味しいけど、家に帰ってカフェオレと一緒に食べるとしたら、今日はこっちの方が食べたい。まぁ、ホントに今日中に食べるかどうかは帰って夕食を食べてどうなるか次第なんだけど。朝は食欲ないのに、夜は結構食べられてしまうから食べるかもしれない。
「…「――、何にするー」
あ。忘れていた。
今日はケーキを買いに来ていたのだ。こんな悠長に見ている場合ではない。先にケーキを選ばなければ。
お題:溶ける・モンブラン・同化




