第二章 第一部 湯気と喧騒、氷の融ける街
命を燃やすとは、ただ剣を振り回し、死地へ飛び込むことだけを指すのではない。
焼け野原となった泥の上に種を蒔き、水をやり、芽吹いた小さな命を不器用な手で慈しむ。明日生きる保証などどこにもない短命な種族だからこそ、彼らは「今日この瞬間」に食べる温かい飯の味を、隣で笑う友の体温を、魂に深く刻み込もうとする。
第一章での激絶な死闘を越え、結界という絶対的な盾を得た黄土の街には、長命種が数千年かけても理解できなかった「変化と営みの熱」が満ち溢れていた。
西の最果て、崑崙の地下での死闘から数ヶ月。
『泥濘の王』の分身体を退け、絶望の底から生還した黎たち『泥の連合軍』は、故郷である黄土の街へと無事に帰還を果たしていた。
季節は冬を越え、柔らかな春の陽射しが大地を温め始めている。
黄土の街の空には、あの日から変わらず、透明な『半球状の銀色の結界』が美しいドームを描いて街全体をすっぽりと覆い隠していた。結界の外でどれほど泥濘の王の瘴気が吹き荒れようとも、この内側だけは、大陸で唯一の絶対的な「春」が約束されているのだ。
「……すごい人ね。それに、このむせ返るような匂いと、熱気……」
朝靄が晴れかけた大通りの片隅で、白銀の長髪を揺らしながら、一人の少女が目を丸くして呟いた。
かつて銀葉の森で『白銀の巫女』と崇められ、崑崙の底で孤独な封印を続けていた長命種の少女、凛である。
彼女の身を包んでいるのは、冷たく高貴な魔力を帯びた蒼い羽衣ではない。黎の副官である春華が見立ててくれた、上質な綿で織られた淡い翡翠色の胡服(こふく・人間が着る動きやすい丈の短い着物)だった。尖った耳は布でふんわりと隠しているが、その透き通るような白い肌と人目を引く美貌は隠しきれていない。
「黄土の街は今、結界の庇護を求めてきた遊牧民や、温厚な亜人たちも受け入れて、前よりもずっと人が増えてるからな。……歩きにくいか? 凛」
隣を歩く黎が、彼女が人波に飲まれないよう、そっと庇うように立ち位置を変えながら尋ねた。
十八歳の若き英雄は、今日は気鍛の黒剣を腰に帯びてはいるものの、いつもの血と泥に塗れた防具ではなく、清潔な藍色の長着を纏っていた。戦場での鬼気迫る気迫は鳴りを潜め、その横顔には、年相応の穏やかで少し不器用な優しさが滲んでいる。
「歩きにくくは、ないわ。ただ……少し、戸惑っているだけ。エルフの森は、何千年経っても音一つしない、静かで凍りついた場所だったから」
凛は、活気に満ちた大通りを見渡した。
道の両脇には、反り返った黒瓦の屋根を持つ木造の店がひしめき合い、店先には色鮮やかな野菜や、捌かれたばかりの川魚、竹細工の籠などが所狭しと並べられている。
「そこのお嬢ちゃんたち! 採れたての春筍はどうだい! 泥を落としたばかりで甘いぞ!」
「道を空けろォ! 木材が通るぞ!」
商人の甲高い客引きの声、荷車を引く牛の嘶き、そして、家屋の修繕を手伝う人間と虎人の職人たちの豪快な笑い声。
それは、長命種が「無秩序で穢れた泥の営み」と蔑んできた世界。
しかし、実際にその只中を黎と共に歩いている凛の胸に湧き上がっていたのは、嫌悪感ではなく、不思議なほどの『温かさ』だった。
「ほら、黎。あれを見て」
凛が珍しそうに指を差した先では、巨大な体躯を持つ狼牙族の戦士・牙狼が、不器用な手つきで人間の子供たちに肩車をして遊んでやっていた。かつては互いの血を求めて殺し合った種族が、結界という一つの屋根の下で、共に笑い合っている。
「牙狼の奴、すっかり街の子供たちの人気者になっちまったな。……まあ、あいつらも本来は、戦うよりも腹一杯食って、ただ生きたいだけの奴らなんだ」
黎は目を細めて笑い、凛の歩幅に合わせてゆっくりと歩を進めた。
「お前も、黄土の街の暮らしには少し慣れたか?」
「ええ。春華の淹れてくれるお茶は、森の朝露よりもずっと香りが強くて驚いたわ。燕の言葉遣いにはまだ慣れないけれど……剛の作る木彫りの動物たちは、不恰好だけれどとても温かみがあるの」
凛はふわりと微笑んだ。氷のように張り詰めていた彼女の心が、この街の泥臭い熱気に当てられ、少しずつ春の雪解けのように溶け出している。
「……グゥ」
その時、凛の細いお腹から、小さく、しかしはっきりとした可愛らしい音が鳴った。
凛の足がピタリと止まり、その真っ白な頬が、見る見るうちに林檎のように真っ赤に染まっていく。
「あ、あの……今のは……」
「……ははっ。そういえば、朝から見回りに付き合わせちまって、まだ飯を食ってなかったな」
黎は吹き出しそうになるのを必死に堪えながら、道の先から漂ってくる猛烈に良い匂いの方へと凛を促した。
「エルフは、森の魔力さえ吸っていれば何日も食事が要らないと聞いたが……ここは人間の街だ。魔力よりも、胃袋に直接熱を入れた方が力が出るぞ。美味いものを食わせる店があるんだ」
黎が案内したのは、大通りの交差点にある活気あふれる屋台だった。
巨大な竹の蒸籠がいくつも積み上げられ、そこからモクモクと白い湯気が立ち昇っている。恰幅の良い女主人が、手際よく蓋を開けていた。
「おおっ、黎の若隊長じゃないか! 今日も街の見回りかい? ……おや、そっちのべっぴんさんは、見ない顔だねぇ。隊長のお嫁さんかい?」
女主人がニヤニヤと笑いながらからかうと、黎は「ぶっ」とむせ返り、凛はさらに顔を赤くして俯いてしまった。
「ち、違う! お袋さん、変なこと言わないでくれ。彼女は……その、俺の命の恩人で、大事な客なんだ」
黎が慌てて否定しながら小銅貨を数枚手渡す。
「一番熱々の『肉包』を二つ、竹の皮で包んでくれ」
「はいはい、わかってるよ! 熱いから気をつけてお持ちな!」
黎は湯気を立てる肉包(肉まんじゅう)を受け取ると、一つを凛に手渡した。
「ほら、食べてみろ。黄土の街の朝の味だ」
凛は、手の中の温かい包みを不思議そうに見つめた。
フカフカに発酵した白い生地からは、小麦の甘い香りと、中に包まれた豚肉と香草(八角や生姜)の濃厚な匂いが混ざり合って漂ってくる。森の果実や澄んだ水しか口にしてこなかった彼女にとって、それはあまりにも暴力的で、強烈な『命の匂い』だった。
凛は黎の顔をちらりと見て、彼が美味しそうに大きくかじりつくのを確認してから、自分も恐る恐る小さな口を開け、白い生地をはむっとかじった。
「……っ!」
瞬間、凛の翡翠の瞳がまん丸に見開かれた。
フカフカの生地の中から、溢れんばかりの熱い肉汁が口の中にジュワッと広がる。肉の強烈な旨味、筍のシャキシャキとした食感、そして身体の芯から温まるような香辛料の刺激。
それは、エルフの冷たい魔力とは全く違う、胃袋から直接魂に火を点けられるような、泥臭くも圧倒的な『美味しさ』だった。
「……どうだ? 口に合わなかったか?」
黎が心配そうに覗き込むと、凛はコクコクと何度も無言で頷き、無我夢中で二口目、三口目とかじりついた。熱さでハフハフと息を漏らしながらも、その手は止まらない。
あまりの熱さに、彼女の白い頬がほんのりと桜色に上気していく。
「美味しい……。こんなに熱くて、味が濃くて……なんだか、身体の奥から力が湧いてくるみたい」
凛が、口の端に少し生地をつけたまま、満面の笑みを浮かべて言った。それは、太極の淵で見せた哀しい笑顔ではなく、一人の等身大の少女としての、心からの笑顔だった。
黎は、その無防備で可愛らしい姿を見て、思わず自分の心臓がドキンと大きく跳ねるのを感じた。
「あ、ああ……そうだろう。俺たちの街の自慢の飯だからな。……口、ついてるぞ」
黎は無意識に手を伸ばし、凛の口元についていた生地を親指でそっと拭い取った。
その指先の温もりに、凛の動きがピタリと止まる。
拭い取った黎も、自分がとてつもなく恥ずかしいことをしてしまったことに気づき、顔を真っ赤にして勢いよく視線を逸らした。
「あ……す、すまん! その、無意識に……!」
「う、ううん……ありがとう。……黎の手、とても温かいのね」
凛は俯きながら、黎の指が触れた自分の口元をそっと押さえ、嬉しそうにはにかんだ。
春の陽射しの中、行き交う人々の喧騒に包まれながら、二人の間だけ、まるで甘い砂糖菓子のように甘酸っぱく、柔らかな空気が流れていた。
戦いの中で魂の底から結びついた二人の極星は、こうして不器用ながらも、日常という名の温かい泥の中で、確かに互いの絆を育み始めていたのだ。
「——おいおいおい! 朝っぱらから大通りで、見せつけてくれるじゃねェか、うちの隊長殿はよォ!」
せっかくの甘い雰囲気をぶち壊すように、屋台の裏手からわざとらしいほどの大きな拍手と冷やかしの声が飛んできた。
黎と凛が肩をビクッと跳ねさせて振り返ると、そこにはニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべた燕と、呆れた顔で大きな木材を担いだ剛、そしてクスクスと口元を手で隠して笑っている春華の三人が立っていた。
「え、燕……! お前ら、いつからそこに!」
黎が慌てて肉包を背中に隠すが、完全に手遅れだった。
「『口、ついてるぞ』……クゥ〜ッ! 痺れるねェ! 百戦錬磨の泥の若大将は、エルフのお姫様を口説く手口も一流ってわけか!」
燕が、黎の先ほどの仕草を大げさに真似しながら爆笑する。
「や、やめろバカ! からかうな!」
黎の顔はもはや、湯気を立てる肉包よりも赤く茹で上がっていた。
凛もまた、両手で顔を覆い隠し、耳の先まで真っ赤にして小さくうずくまってしまったのだった。
『口、ついてるぞ』……クゥ〜ッ! 痺れるねェ! 百戦錬磨の泥の若大将は、エルフのお姫様を口説く手口も一流ってわけか!」
「や、やめろバカ! からかうな燕!」
黄土の街の大通り、活気あふれる屋台の裏手。
燕が大げさな身振り手振りで先ほどの黎の甘い仕草を真似すると、黎は耳の先まで真っ赤にして怒鳴ったが、その声は完全に裏返っていた。
凛に至っては、両手で顔を覆い隠したまま、しゃがみ込んで小さな石ころのように固まってしまっている。
「はっはっは! 隊長殿も隅に置けねェな! あの泥濘の王の分身をぶった斬った時の鬼みたいな顔からは想像もつかねェや!」
剛が、担いでいた巨大な修繕用の木材をドスンと地面に置き、腹を抱えて豪快に笑う。
「もう、二人ともその辺にしておきなさいよ。黎くんも凛ちゃんも困ってるじゃない」
春華がクスクスと笑いながら歩み寄り、しゃがみ込んでいる凛の肩を優しく撫でた。
「大丈夫よ、凛ちゃん。この野蛮な男たちは、照れ隠しで茶化してるだけだから。ほら、立って。服が汚れちゃうわ」
春華に促され、凛は指の隙間から恐る恐る燕たちを見上げ、ゆっくりと立ち上がった。その白い頬はまだ熱を持ち、翡翠の瞳は恥ずかしさで潤んでいる。
「……おはよう、燕、剛、春華。その、朝からごめんなさい。私、人間の食べ物に少し驚いてしまって……」
凛がもじもじとしながら小さな声で言うと、燕は意地悪な笑みを引っ込め、ポンと軽く凛の肩を叩いた。
「気にするな、お姫様。美味え飯を食って驚くのは、生きてる証拠だ。エルフの森で霞ばかり食ってたお前さんには刺激が強かったかもしれないが、この街の飯は、俺たち泥の部隊の命の源だからな」
「おう! 腹が減っては戦はできねェし、家も建たねェ! お前さんも、隊長の隣を歩くなら、バクバク食って少しは肉をつけねェとな!」
剛がニッと白い歯を見せて親指を立てる。
彼らの言葉には、長命種への畏れも、異種族への警戒も全くない。
かつては神話の存在として雲の上にいたはずの凛を、彼らは同じ街で暮らし、同じ飯を食い、背中を預け合う「ただの仲間(家族)」として完全に受け入れていた。
その泥臭くも裏表のない温かさに、凛は胸の奥がキュッと締め付けられるような、しかしひどく心地よい感覚を覚えた。
「……うん。もっと、色々なものを食べてみたいわ。この街の味を、全部」
凛がふわりと微笑んで頷くと、今度は燕と剛の方が、そのあまりの神々しいほどの愛らしさに言葉を失い、顔を見合わせてゴクリと喉を鳴らした。
「おい剛……俺、エルフの寿命の長さがちょっと羨ましくなってきたぜ……」
「奇遇だな燕……俺も今、全く同じことを考えてたところだ……黎の野郎、羨ましすぎるぜ」
二人が小声でブツブツと呟いていると、黎が咳払いをして強引に話題を変えた。
「ごほん! そ、それで、お前たちはこれから防壁の修繕作業か?」
「ああ。結界のおかげで魔物は入ってこねェが、あの時に崩された南門の壁の補強が終わってなくてな。亜人の大工たちと一緒に、土鬼の連中から教わった新しい版築の製法を試すんだとよ」
燕が肩をすくめて答える。
「私も、診療所のお手伝い。結界の外から逃げてきた人たちの怪我を診てあげなくちゃいけなくて」
春華が医療箱の紐を握り直す。
「そうか。俺と凛も、街の中央区の見回りが終わったら手伝いに行く。……みんな、無理はするなよ」
黎が隊長としての顔に戻り、静かに告げる。
「へいへい、わかってますよ隊長殿。じゃあな、凛。お前も黎にばっかり甘えてねェで、たまには俺たちの作業場にも顔を出せよ!」
燕がひらひらと手を振り、剛が巨大な木材を再び担ぎ上げ、三人はそれぞれの持ち場へと歩き出していった。
その日の午後。
見回りを終えた黎と凛は、南門の修繕現場で汗を流す剛たちに差し入れの水を届けた後、統星楼の近くにある小高い丘——街全体を見渡せる緑の公園へと足を運んでいた。
かつては魔物の襲撃に備えた物見櫓があった場所だが、結界が張られてからは、子供たちが遊ぶ平和な広場へと姿を変えている。
春の夕暮れ。
西の空がオレンジ色に染まり、頭上の銀色の結界が夕日に反射して、街全体を琥珀色の淡い光で包み込んでいた。
「……ふう」
黎は芝生にドカッと腰を下ろし、大きく伸びをした。
凛もまた、汚れを気にすることなく、黎のすぐ隣にちょこんと膝を抱えて座った。
「疲れたか、凛。エルフの身体には、人間の街の喧騒は少し毒だったかもしれないな」
黎が横目で凛の顔を覗き込む。
「ううん。少し目が回ったけれど、とても楽しかったわ。……あの子たち、私の髪の色を不思議がって、お花を編み込んでくれたの」
凛は嬉しそうに、自分の白銀の髪に飾られた、小さな黄色い野菊の花飾りを指差した。
「似合ってるよ。氷の巫女ってより、すっかり街の村娘って感じだ」
黎が笑うと、凛は少しだけむくれて、黎の腕を軽く小突いた。
「もう……黎はいつも、私を子ども扱いするのね。私の方が、あなたより何百年も長く生きているのに」
「寿命の長さなんて関係ないさ。飯を美味いって笑って、花飾りを喜んでるお前は、ただの『凛』だ」
黎は、夕陽に照らされた黄土の街並みを見下ろした。
あちこちの家の煙突から、夕餉の支度をする白い煙が立ち昇り、風に乗って肉を焼く匂いや、温かいスープの匂いが漂ってくる。遠くでは、家路を急ぐ人々の声が微かに聞こえる。
「……なあ、凛」
黎の横顔が、ふと真剣な色を帯びた。
「俺は、あの崑崙の底で王の分身を倒した時、俺たちの使命はすぐにでも王の本体を倒しに行くことだと思ってた。でも、炎城主に『遠征軍をさらにデカくしろ』と言われて、この数ヶ月間、街の復興を手伝いながらみんなと暮らしてみて……わかった気がするんだ」
黎は、自分のゴツゴツとした、傷だらけの右掌を見つめた。
「霍隊長が、命を燃やして俺に何を託したのか。俺たちが、何を護るために戦っているのかを」
凛は静かに黎の言葉に耳を傾け、彼の右手に、自分の白く冷たい手をそっと重ねた。
「泥から生まれて、泥に還る。俺たちの命は短くて、あっという間に燃え尽きちまう。……でも、だからこそ、今日一日を笑って生きるために、明日の温かい飯を誰かと一緒に食うために、這いつくばってでも生きていたいって思うんだ」
黎は、重ねられた凛の手を優しく、しかし力強く握り返した。
「俺は、この街の連中がバカ笑いしながら肉包を頬張る、この『今日』を……お前と一緒に生きるこの時間を、絶対に誰にも奪わせない」
凛の翡翠の瞳が、夕陽を受けてキラキラと揺れた。
彼女の胸の奥で、エルフとして生きてきた数百年間のどの瞬間よりも、今のこの『一瞬』が、愛おしく、そして手放したくないほどに重いものだと感じていた。
「……黎」
凛は、黎の肩にそっと自分の頭を持たせかけた。
「私……氷の結界の中で、ずっと一人で世界を視ていた時、命なんてただの循環する魔力の一つに過ぎないって思ってた。でも、違うのね。あなたの熱に触れて、この街の匂いを嗅いで……初めて、もっと『生きたい』って思ったわ」
黎の心臓が、朝の屋台の時よりもさらに大きく高鳴った。
肩に伝わる凛の温もり、鼻をくすぐる清廉な花の香り。それは、凄惨な血の匂いと瘴気に塗れた戦場を駆け抜けてきた黎にとって、何にも代えがたい救いだった。
「ああ。生きて、美味い飯をいっぱい食おう。……王の本体をぶっ倒して、結界なんかいらない、本当の平和な世界を取り戻すまでな」
「ええ。約束よ」
琥珀色の夕暮れの中、若き英雄と白銀の巫女は、互いの体温を確かめ合うように、静かに寄り添い続けた。
世界を救うための過酷な旅路の前に訪れた、束の間の、しかし永遠に等しいほどに甘く、温かい時間。
泥の末裔たちは、この「護るべき日常の温かさ」を魂の底に刻み込み、やがて来る次なる激闘へ、そして遥か未来の世代へと、その熱を繋いでいくことになるのである。




