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【BL】裏アカ男子はバレたくない!  作者: おもちDX


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5.僕のせい

 翌日、目をしょぼしょぼさせながら登校した僕は、午前中の授業をほぼ夢の中で過ごしてしまった。


 やばい。これで模試の点数が下がったら桂に怒られる。弁当も食べられないのは結構悲しい。

 昼はしゃっきり勉強しているところを見せよう。これも昨日やらなかった宿題なんだけど……と内心考えつつ多目的室に向かうと、そこには誰もいなかった。


「あれ?」


 いつも桂が先に来ていたから今日は自分が先になって、拍子抜けしてしまう。

 そのまましばらく待ってみて、それでも来ないから僕はようやくスマホを見た。昨晩ディスプレイを見すぎたので、今朝から全く見ていなかったのだ。


 すると今朝桂から来たメッセージに気づき、目をぱちくりとさせる。


『悪い。数日休むことになったから』

「え。休み? しかも数日? 理由書いてないし……」


 風邪でも引いたのだろうか。昨日の時点ではすごい元気そうだったのに……

 しかも三日後には夏休みが始まる。会えないまま夏休みに入ってしまうってこと? 

 

 僕は気づいてしまった事実を受け止められずに、一人でぼんやりと昼休みを過ごす。


 桂に脅された日からこれまで、平日は毎日昼に会っていた。なんとなく習慣となり、いつの間にかそれが楽しくなっていた。だから一日会えないだけで寂しさが胸に募っていく。


 それどころか夏休みに入ってしまえば一ヶ月以上会えなくなるのだ。会うようになってたった一ヶ月ちょっとだが、これから一ヶ月以上会えなかったら関係がリセットされてしまうような気がした。僕だったら話しかけるのさえ緊張する。


 これまでろくな理由もなく会っていたけれど、簡単に会える学校と外では全然違う。そもそも僕は、桂の家の場所もよく知らないのだ。

 不安になってきて、桂に返信する。向こうから教えてもらえないのにこちらから質問するのは、すごく勇気がいる。


『理由、聞いてもいい?』

『いや、大した理由じゃないから』


 すぐに返信があって、スマホを取り落としそうになる。桂からの返信の内容にズキンと心臓が痛んだ。

 結構仲良くなれたと思ってたのに……他人に言えない理由ってなんだろう。言いたくない理由があるのかな。


 傷ついたものの、それでも僕はすぐに引き下がらなかった。なんだかこのままだと……桂との関係が終わってしまうような気がしたのだ。僕の芽生えたばかりの恋心が「それは嫌だ!」と叫んでいる。


『家まで会いに行ってもいい?』

『ごめん』

「うわーーーっ!!」


 大ダメージで、叫ばずにはいられない。勇気を出した問いはあっさりと両断されてしまった。もしかして、昨日のことがきっかけで嫌われた……?

 桂が長年のフォロワーなんじゃないかと疑っていた自分が馬鹿だった。自惚れすぎ。そんなはずないじゃないか。


 よろよろと教室へと戻り、ふと教室内を見渡したときだった。


(あれ、山梨も休み……?)


 桂と山梨と、昨日取っ組み合っていた二人が同時に休んでいる。そういえば、昨日の昼校内放送で呼び出されていたのは何だったのだろうか。

 あまり素行がよろしくない、というか自由な桂はときおり生徒指導室に呼び出されている。先生とわいわい楽しく話しているだけだと以前本人が言っていたから、気にしたことはなかった。


 とはいえ今はちょっと気になってきた。僕は自席に座ってスマホを弄っている長野に近づいて行って、ぼそぼそと話しかける。


「……長野」

「っはぇ!? み、三廻部?」


 びくっと肩が揺れて、声を裏返させて長野が振り返る。話しかけたのは初めてだから、想定以上にびっくりさせてしまった。

 昨日のことでもやもやしている部分はあるけど、改めて指摘したり謝ってほしいという気持ちまではない。桂が僕の分も感情をぶつけてくれたおかげだろう。


「山梨って、なんで休んでんの」

「あ~……あいつに食らった肘鉄が痛いんだと」


 ……おそらく僕を二人から引きはがしてくれたときに、桂がやらかしていたらしい。正直、スカッとしてしまった。

 でも、それなら桂は関係ないか? 喧嘩は慣れてるっぽいというか、ダメージはなかったように思う。


「……じゃあ、森苑は違うか……」

「え、えぇ~~……? あいつから聞いてないのか? 校内の秩序を乱したって、二日間の自宅謹慎だよ」

「えっ……」


 どうやらあの一触即発の雰囲気になったとき、誰かが先生を呼びに行ったらしい。僕と桂がいなくなったあとに山梨と長野が連れていかれて、その後桂も呼ばれた。

 桂は上級生のクラスで問題を起こしかけたことで、謹慎処分となったのだそうだ。


 事情を聞いた僕は、頭から血の気が引いていくのを感じていた。


「三廻部のことは誰も言ってねーよ。昨日は、なんか調子乗って……悪かった」

「……普通に、嫌だった」

「ごめん」


 あれは僕じゃないとか、ツイスタグラムもやってないと言おうかと考えていたけれど、こっちも嘘ばかり塗りかためるのは誠実じゃないと気づいた。だってあれは『僕』だ。

 だから、あのときの気持ちだけを長野に伝えておくことにする。謝ってくれるとは思ってなかったから、僕もどんな顔をすればいいのかわからなかった。


(……そんなことよりも!)


 チャイムが鳴って、席につきながら僕は嫌な汗が背中に滲むのを感じていた。

 桂の謹慎は僕のせいだ。だから理由を教えてくれなかったのだろう。これで内申点が大きく下がってしまったらどうしよう。あいつは、特待生でいないといけないのに……!




 放課後になり、僕は桂のクラスへと向かった。とにかく会って話がしたい。けれど桂の住所がわからないため、クラスメイトから聞き出せないかと考えたのだ。

 絶対怪しい人だと思われるし、後輩とはいえ知らない人に話しかけようとするなんて僕にとっては前代未聞の出来事だった。でも、なりふり構っていられない。


 桂のクラスに到着し中を覗き込むと、もう半分ほどの生徒がいなくなっていた。桂の友だちらしき人を捕まえたいけど、金髪は……桂くらいなんだよなぁ。

 しかし茶髪やピアスをした派手そうな男子の三人グループが、入り口から近くの席でだべっている。


「今から桂んとこ行く? あいつついに謹慎とかやっちまったな~」

「いこーぜ! 先輩のためとか、あいつもやるな」

「揶揄いがいのあるやつだよほんと。桂んち、間違いなくちびっ子たちが突撃してくるけど……」

「あはは、毎回子守になるよな。可愛いけど」

「……あああああの!」


 立ち聞きは申し訳ないと思いつつ、明らかに桂の名前が聞こえてきたため耳をダンボにしてしまった。彼らが桂の家を知ってるという確信を得て、僕は震える声を絞り出した。


 三人の輪の後ろから話しかけると、振り返った一人が「うおっ」と飛び上がる。驚かせてしまった申し訳なさと緊張で、僕はなかなか伏せた目を上げられなかった。


「え。もしかして、桂の推し……?」

「えぇっ。桂が絶対に見せたがらない、例の先輩じゃね……? ちっこくて白いし」

「えええ! 確信が持てねー。ていうか誰、ですか!」

「ど、どういうこと? ……あの、三廻部純那といいます。桂とはお昼によく話してて……もしよかったら、桂の家に僕も連れてってくれませんか!」


 一人一人が呟いた言葉の意味はよく分からなかったけど、誰かという問いには簡潔に答えておく。その勢いで目的だった頼み事までしてしまった。


 コミュ障ゆえに変に声が大きくなってしまう。とはいえ断られたら困る。もしそうなったら、三人を尾行するくらいの気持ちだぞ……!

 自分が変な方向に暴走しはじめているのは分かっていても、止められない。


「き、キター! ……ごほん、もちろんお連れしましょうみくるべ先輩」

「いいの……? ありがとう!」

「あっキラキラしてる……」

「小動物っぽい……」

「???」


 反応が不思議だったものの、もしかすると桂が僕のことを友だちに話していたのかもしれない。いつも昼に桂を独占してしまっているし。

 とにかく三人は快諾してくれて、僕はやっとみんなの目を見てお礼を言うことができたのだった。

 勇気を出して、よかった……!

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