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催眠術師の端っこ教室  作者: ぴあす
第ニ章

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10/11

踏み外す

 フレアは夜空をふわふわと舞う。師匠もいない、王国に戻れば処刑される。

 フレアは何もすることがなかった。


 背後から紫色の魔弾が飛んできた。警備の生き残りがフレアを追ってきたのだ。

 フレアは急停止して警備に向けて魔術を準備する。


「泳ぐ火球<スウィラーム>」


 ふわふわと動く軌道を読みにくい火球が警備に襲いかかる。

 二人いた警備のうち一人は火球に命中し地面に落ちていった。二人目はうまく回避してフレアとの距離を縮める。


 ホバリングしていたフレアが警備に急接近する。警備は魔弾を連射するがすべてフレアの防御魔法に弾かれた。

 警備は防御魔法を展開した。


「魔剣刺突<レ・ドーレ>!」


 フレアの魔剣は勢いよく防御魔法を貫き警備の胸に突き刺さった。

 少しもがいてから警備の飛翔魔法の効果が切れ落下していった。


 もはやそのへんの魔術師ではフレアの敵にならなかった。落ちていく死体を少し眺めてからフレアはまた何も考えずにふわふわと夜空を舞う。


「やっぱり強いねー「火魔女」さん」


 目を開けるとフレアの真上にズタ袋を被った異様な雰囲気の生き物が覗き込むようにフレアを見ていた。

 魔術を構えたフレアにズタ袋は慌てて敵意がないことを示した。


「待って待って!僕は敵じゃないって!大事な話があってきただけなんだよ!」


 フレアは半信半疑で警戒を解きズタ袋の話を聞く。

 ズタ袋はフレアの様子を見てゆっくり話しだす。


「話が聞ける人で助かった。僕はアンジーよろしくね。じゃ本題。今君は国を追われた異端者、だよね?」


 そうだね、というフレアの答えを聞きアンジーは小さく笑いながら言う。


「実は僕もなんだ!それで君に話したい一番大事なこと、それは異端者のコミュニティへの招待さ」


 言い終えるとアンジーは白い封筒をフレアに渡す。中を開くとそこには異端総会という安直な名前の組織についての詳細が記されていた。

 内容は


「王国から迫害を受けた異端者たちが共に助け合う平和を重視する組織」


 という趣旨のものだ。

 フレアは考えた。今はなにもない。師匠も、杖も、家も。

 そして楽しみもない。


「いいよ。その話乗った。楽しそうだしね」


 フレアの答えは単純。楽しそうな方に行く、それだけだった。

 フレアの答えを聞きアンジーは少し驚いていた。まさか今日すぐにとは思っていなかったのだ。


「あはは、話が早いね!それなら早速案内するから僕についてきて!」


 アンジーはそう言うとフレアの腕をがっしりと掴みものすごい速度で飛行した。

 ものの数分でアンジーの目指していた目的地に到着した。


「ここだよ!異端総会の本拠地、アジサクソウル!」


 巨大な城の中庭に二人は降り立った。

 壮観な城の中は信じられないほどに静かでフレアはなにか嫌な予感がした。

 王国から離れた辺境の地に生者の寄り付かない場所がある。

 フレアは学園の授業で習ったことがあった。

 その地の名はアジサクソウルだった。


 アンジーの高速移動に酔ったフレアは四つん這いで呻いている。


「大丈夫!?誰にやられたの?」


 お前だ、フレアは無理やり体を起こしてアンジーを捕まえようとした。

 アンジーと追いかけっこをしていると背後から何者かに声をかけられる。


「君がアンジーの言っていた「火魔女」さんかな?」


 柔らかくも荘厳な男性の声だった。

 振り向くとそこには、知命の年を超えたであろう男性が立っていた。


「はじめまして、私はダスハ。ダスハ=グイドだ」


 低く耳に響く声でダスハは言う。年配であるにも関わらず存在がどこか他と違うようにフレアは感じた。


「異端総会の会長を務めている。これからよろしくね、フレアさん」


 紳士的に話すとフレアに向けて一礼した。

 気づけばフレアも礼をしていた。自分の意志ではなく勝手に。

 ダスハが顔を上げると同時にフレアも顔を上げた。


「おや、君には精神操作魔術が効くのかい?君の師匠には効かなかったんだけど、まだ教えてもらってないのかい?」


 フレアは一瞬だけ躊躇したが口を開く。


「師匠は、死にました。私のせいです」


 ダスハはフレアの顔を数秒凝視して不気味な笑みを浮かべた。

 その顔には会ったときの荘厳さはなくただただ恐ろしくフレアは悪寒を覚えた。


「ああ、知っている。君が死のことについてはっきり言うのかが気になっただけだ」


 フレアはこの瞬間確信した。この人は危ない人間だと。

 ダスハそう言うと何かを思い出したかのように、ではまたと言い塵になって消えた。


「ダスハさんちょっと怖いよね。新入りの人全員にああいう態度なんだ。でも此処の人みんながみんなああ言う感じってわけじゃないよ!」


 アンジーが慌ててダスハのフォローをした。


 ◇◇◇


「ここが君の部屋だよ。自由に使ってね!」


 少し古めかしい内装がフレアに師匠の家を思い出させた。フレアはベッドにダイブした。あの時のような匂いはしなかった。

 今日は体を休め明日に備えようとフレアは思った。明日は総会のメンバーと顔合わせをする。

 アンジーはああ言っていたが異端者であることに変わりはない。フレアは少しだけこの空間にいることを後悔する。


 誰かがドアをノックする。

 ベッドの上で寝転んでいたフレアは飛び起きる。外から何処か聞き覚えのある声がした。


「フレア様、お久しぶりです。夕食をお持ちしました」


 ドアを開けるとそこにはスケルトンの召使、クレシェコがトレイを持って立っていた。


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