第七話「死霊島の王バルシュア」
「本当に帰っていいんですかい? ここは【死霊島】ですぜ」
ベテランの水夫がそう眉をひそめ島をみながらいった。
朝になり水夫たちに島まで運んでもらったのだった。
「俺たちが帰ったらこの船動かせやせんぜ」
「ああ、大丈夫。 危なくなったらその小舟で二人で帰るから」
そう曳航した小舟を指差した。
「そうですかい。 じゃあ、俺らも先に帰らせていただきますわ」
そう気味悪そうな顔をして水夫たちは曳いてきた小舟にのり、去っていった。
「みんなもうでてきてもいいよ」
水夫が去っていったのを確認してゴブリンたちを呼んだ。 みんなおどおどしながら船内からゆっくりでてきた。
「ふぅ、なんとかばれなかったな」
「一応大量の食糧や工具を壁にして隠してましたからね。 ゴブリンたちは小さいですしね」
「ココ、イヤナ、チカラカンジル......」
リーダー格のゴブリン【ブラス】がそういった。
「嫌な力、アンデッドがいるって話だけど」
「ええ、ですが、私やシンゴなら魔力で攻撃が通じますから」
「じゃあ、ゴブリンたちは船で待ってて、ぼくたちはみてくるから、もしなにかがきたら、買っておいた武具をつかって」
「ワカッタ、シンゴ」
そういってゴブリンたちは緊張した顔で答えた。
「よし、上陸してゴブリンのすめる場所を作ろう」
「ええ」
「ギンチヨはもとに戻らなくていいの?」
「あちらの方が戦いやすいのですが、こちらなら手で武器を扱えますし、この体に少しなれておきます」
「そう、じゃあいこう」
「確かに町らしきものがあったみたいだ」
上陸してかなり歩くと町の跡のようなものがある。 しかし、石造りの家々はくずれ土台ぐらいしか残っていない。
「ええ、元ガルドリエという国があったようです。 英雄【ビルフォーテ】がいて、魔人との戦いで滅んだそうですね」
「人魔大戦でか...... でも魔人もいないんだよね」
「人間の国がまわりにありますから、ここでは孤立してしまうからかもしれませんね」
「なるほど」
「......どうやら、きたようですね」
そういってギンチヨは剣をぬいた。
地面が揺れると土の中から武器を持つ人骨が這い出てきた。
「スケルトンたちです」
スケルトンは次々でてきてぼくたちを囲んだ。
「本当に大丈夫......」
「ええ、あなたならば...... きます」
スケルトンたちは一斉にこちらに迫る。
「わぁ!!!」
魔力の剣で切り裂くとバラバラになった。
「えっ!? よわっ!?」
「本来は周囲の魔力によって固いのでしょうが、シンゴや私は魔力をたちきる力がありますからただの骨です」
「そうか、なら!」
剣を伸ばし横にないだ。
スケルトンは吹き飛び骨が四散する。 しかし骨が動きくっつこうとしている。
「うおっ! まだ動いてる!?」
「シンゴ、魔力を結晶に。 でないと周囲の魔力を得ていずれよみがえります」
「あ、ああ、わかった」
ぼく骨から魔力を結晶にかえていった。 動いていた骨は動かなくなった。
「ふぅ、全部結晶にできた」
かなりの数の魔力結晶かできた。
「しかし、なんなんだこの数? この世界の人は死んだらみんなアンデッドになるの?」
「いいえ、誰かの魔法か、それに近い魔法の道具を使ったのでしょう」
「死者を操るなんてひどいことをするな」
ぼくたちは町を進む。 奥に城らしきものが見えてきた。
「城か...... アンデッドは?」
「今のところはいないようですね」
城の中に入る。 柱や壁の細工などは細かく、昔は壮麗だったのがみてとれた。
「かなり豪華な城だな」
「ええ、昔は小国ながら魔法使いが多く栄えていたそうですね。 あれは」
柱がたくさんならぶ部屋の奥に、大きな椅子に座る杖をもち王冠をかぶった人骨があった。
「何者だ......」
「話せるのか! モンスター!?」
「......我はガルドリエの王、バルシュア...... 貴様は何者だ」
「ぼくはシンゴ、この土地にゴブリンを住まわせたい」
「ならぬ...... 魔人の眷族なぞ許さぬ......」
「魔人の眷族じゃない。 魔人に追われて行き場がないんだ」
「何者も我が土地に踏みいることは許さぬ...... ここは我が支配する土地」
そういうとバルシュアは杖を地面につきたてた。 すると地面からスケルトンたちが這い出てくる。
「どうやらアンデッドを使役してるのはあのもののようです」
「自分の部下をアンデッドにして動かしてるのか...... やるよ」
「はい!!」
ぼくたちは襲いくるスケルトンを切り裂きたおしていく。
「なんど倒しても、そのものたちは永遠に戦い続ける。 その命、はてても我が命でな」
そういってバルシュアは笑った。
「それなら解放する」
「なんだと......」
ぼくは倒れたスケルトンを次々魔力結晶にかえた。 スケルトンは動かなくなった
「立ち上がらぬ...... 何をした貴様」
「もう動くことはないよ。 あなたももう眠るべきだ」
「......ならぬ、我は永劫にこの地を統べるのだ! 魔人などにこの大地は渡さぬ!!」
そういうとバルシュアのもつ杖から複数の巨大な火球を放たれた。
ギンチヨがぼくを抱いてとび柱に隠れた。
「あ、ありがとう」
「しかし、あれほどの魔法を使うとは...... 当たれば即死ですね」
「ああ、盾でも防ぎきれそうにない」
柱に火球があたる。
「逃げても無駄だ」
無数の火球が部屋に降り注ぐ。
「ぐっ! 熱い!!」
「この部屋を焼き尽くすつもりです。 ここは私が囮になりますから、そのすきに退避を......」
(さすがにギンチヨでもこの炎にたえるのは無理だろう。 ここからバルシュアを倒さないと、柱から出したら火球で焼かれる...... なんとか柱からでないようにあいつを)
集中して魔力結晶をにぎる。
うねうねと魔力結晶の形が変わる。
「これなら......」
「隠れても無駄だ。 この部屋を灼熱の炎でみたす!」
「いけ!!」
魔力で作った棒はのびていく。
「何のつもりだ...... そんな棒届くものか。 顔を出した瞬間やきつくしてやろう」
棒は生き物のように動き、バルシュアへ向かっていく。
「なっ!!」
その体を貫く感覚があった。
「これは......」
(やはり動かすことができるな。 ただ消耗も激しい。 早く決着を!)
ギンチヨが近づき、バルシュアのその腕を切り裂く。 バルシュアは杖をふろうと掲げる。
「くっ、なめるな!!」
「させるか鞭!!」
もう片腕の魔力結晶を伸ばしバルシュアへふるうと、しなった魔力のムチがバルシュアの頭を吹き飛ばした。
「がっ......」
「死者はもう眠れ。 死んだものじゃなく、生きているものがこの土地を使う」
「ふざけるな...... ここは我が......」
「革命......」
バルシュアの体にふれ魔力を結晶にかえると、バルシュアの体がチリになっていった。




