第十一話「商人アスンハルトの一手」
ぼくはマクレーンたちを捕らえた。
「うまくいきましたね」
「ああ」
「ギンチヨどのがきたときは何のことかと思いましたが、まさかこの者たちの悪事を我らにしらせるためだったのですね」
そうシャスタはうなづく。
「そう。 このギルドがこの事を知っているなら、必ず他のギルドに連絡したり助けをこうはず。 なのになにもしないから、彼らもマルテロ一家とグルなのだと思ったんだ。 こっちに証拠があるといえば必ず動くからね」
「それで私にドラゴニュートに話をしに行くようにといったわけですね」
ギンチヨはそういった。
「ああ、ただ問題はこの後だよ。 ダダントが領主だから、このままつれていっても無駄だ。 検問もこいつらの仲間だし、外につれだすのも難しい」
「ふむ、ではこの者たちをなぜ捕らえたのです」
「ドラゴニュートにぼくたちは敵じゃないことをしってもらいたかった。 それと力を借りたい」
「力を...... 一体なにをするつもりです」
シャスタは首をかしげた。
「なんだと!? 鉱山がドラゴニュートに制圧された! なにをしている! マクレーンはどうした!」
怒号が部屋の外までひびいた。 そこはマルテロ一家の屋敷だった。
「へいボス...... どうやら姿を消したそうでして」
「姿を消しただと! やつは有名な冒険者がこの事に感づいているから消す、と伝えてきていた...... なら、返り討ちにあったのか。 兵隊をあつめろ! まずそいつをさがす!」
「探さなくてもここにいるよ」
ぼくは部屋にはいる。 十人ほどのマルテロの部下が構える。
「な!? キサマ! まさか噂の冒険者か! そいつはマクレーン!」
縛ったマクレーンを転がす。
「なるほど、だがわざわざきてもらえるなら好都合だ。 おまえら! こいつらをやれ!!」
ぼくとギンチヨは襲ってくるマルテロの部下を全員のした。
「なっ......」
「外の部下たちものびているよ。 諦めなよ」
「ふ、ふん! いくらお前らが強くても俺を捕らえることはできん!」
「マルテロ...... これはどういうことだ」
小太りで貴族風の中年の男が数人を従え部屋にはいってきた。
「ああ! ダダントさまよいところに! この者たちが屋敷におしいってきまして助けてください!」
「それは、聞き捨てならんな。 兵士たちをここへ」
ダダントが部下にそういうと、部下は外へでていった。
「ダダントさま、このマルテロは鉱山を違法に採掘しています」
そうぼくがいうとダダントは横目でみた。
「......ふむ、その証拠は」
「これはモーナスロ湖の水です。 違法な鉱山の開発で水が汚染されています。 いずれ飲み水などに影響がでるか、もうでているでしょう」
そういって淀んだ水のはいったビンを見せた。
「......それでは証拠にならんな。 水などどこかからでも持ってこられる」
「では、実際に湖にいきご覧ください」
「そんなことは無用だ。 それより勝手に人の屋敷に押し入ったことが問題だろう。 そなたたちは強盗として拘束する。 おとなしく捕縛されろ」
そういってダダントはマルテロとにやついた。
「......そうですか。 ではもうすぐつくと思うのでお待ちください」
「誰をだ。 まあよい捕らえろ」
兵士たちがぼくに縄をかけている。 ダダントとマルテロは勝ち誇ったように、にやついてそれをみている。
「それでマルテロ、私に何のようだ」
「は? 私はお呼びしてはいませんが......」
「なんだと?」
「よんだのはぼくです。 そして」
「シンゴどの。 これはどういう状況ですか? あなたはダダントさま」
そこには困惑するアスンハルトさんがいた。
「アスンハルトさん。 待ってました」
「アスンハルト...... あの商人か」
ダダントが怪訝なかおをした。
「実はアンデルアのことなんですが......」
ぼくは事情を話した。
「そんな...... それではアンデルアの露は......」
「そうなんです。 もう手に入らないでしょう」
「何の話だ」
ダダントは眉をひそめる。
「困った。 アンデルアの露はフィアナ王女のたっての希望だったのに」
「フィアナ王女だと!?」
ダダントとマルテロの顔色が変わった。
「ええ、これがモーナスロ湖の水です」
ぼくはビンを渡した。
「これはひどい...... これではアンデルアの花は枯れて手に入らないな。 正直に王女にお伝えするしかあるまい」
「そ、そんな! まってくれ!」
「ですがダダントさま。 これは王女のたっての願い。 早速帰って伝えます」
そう足早にアスンハルトさんはさっていった。
「では我々もこれで」
「まて! 貴様たちどこにいく!」
「ダダントさま。 今はぼくたちのことより、なにか手をうった方がよろしいのではないですか? このままだと調査に国から人がやってきますよ」
「ぐっ!」
「ダダントさま! どうしましょう!」
情けなそうにマルテロがいった。
「しらん! 私はこの件に関係しておらん! お前が勝手にやったことだ!」
「そんな!」
二人が言い争ってるなか、ぼくたちは屋敷をぬけだした。
「シンゴ、アスンハルトさんを呼んでいたのですね」
屋敷をでてギンチヨがそうきいた。
「ああ、手紙を出したんだ。 アンデルアの花のことで話があるからすぐきてくれって」
「確かに検問がありますが、手紙なら外に連絡できますしね」
「高貴な方が欲しがってるって言ってたからね。 必ず来ると思ってた。 まさか関わってるのが王女さまだとは思わなかったけど」
「彼らはどうなるのでしょう?」
「ああ、ダダントはどうなるかわからないけど、マルテロはきっと切られるよ。 これで鉱山も終わりだ。 ただ......」
「ドラゴニュートですか」
「......あの鉱山が閉山したとして、汚れた水はなくならない。 もとに戻るのかさえわからないな。 とりあえず会いに行こう」
ぼくたちはドラゴニュートにあいにむかう。




