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◇2話 遊戯

恐らくは一週間くらいは毎日投稿が出来る予定です。

ですが、予定は予定なので忘れても笑って許してください!

 別に姿形が変わった訳では無い。

 ただ、持った瞬間に分かった。この得物は俺の望みに合わせて持つ力を変えたのだ。何故と聞かれれば上手くは伝えられないが……確かに刀からそう言われた気がした。もしも仮に正しかった時、永遠と俺の望みのままに能力が変わる得物となればミシックに適した物だろうな。でも、今はそこまでの力は必要が無い。


「名前も無いのは嫌だろ。不刃、勝手に付けはしたが絶対に刃を失わない俺だけの得物だ。せめて、俺のためだけに力を行使すればいい。俺なら不刃を損なう事は無いからな」


 はぁ……なぜ、告白じみた事を口にしたんだ。

 不刃が喜んでいるのは握れば分かる。それでもこういう事を口にするのは……唯に見られれば弄られる事は間違いない事だったからな。今いる環境に興奮している自分がいる事は理解していたが、こんな事でそうなってしまっている俺を見られたら爺ちゃんに殴られてしまいそうだ。


 軽く不刃の鞘を撫でて気持ちを鎮めておく。

 おかしな話かもしれない。それでもこうしてやると俺も得物も鎮まるから悪くないルーティンだと思っている。ましてや、猛る得物に触れる事によって俺は本当の意味で強くなる方法を知れるからな。


「この先に同じゴブリンが九体。この程度の敵なら多少の差があれども俺には勝てない。少しばかり手を焼くだろうが……雑兵に首を掻き切られる程のヤワな仕打ちは受けてないんだわ」


 どれだけ酷い打ち方でも零れぬ刃。

 それがどれ程に俺の求めていた刀なのかは誰かが知るものでも無い話だ。唯が、妹のために、全てを敵に回したとしても俺は刀を振るうと決めた時から何をしても今の気持ちに少しの差異も無い。いや、そう決めたからこそ、この得物を俺は待ち望んでいたんだ。


「不刃、少しばかり無用な扱いを行う。俺が倒れない範囲であれば何をしても構わない。最大限、俺の最高峰の得物である事を示してやれ」


 少し震えた。そうだな、それでいい。

 俺達の世界に、不必要な言葉は無くていいんだ。欲しいのはどのようにするべきかの未来の展望、未来を笑えずにどうして今も笑えると言うんだ。狂った世界に牙を立てるためには誰もが未来を笑えなければ少しの価値も無い。


 気配遮断の効力を強めて不刃へ魔力を注ぐ。

 扱い方は今の戦いで学んだ。やはり、この得物というのは俺の望みに合わせて動いてくれる。ましてや、これ以上に何かを望まないとなれば本当に最高の逸品でしかないな。ミシックだとか、価値はどうでもいい。ただ、俺の得物であれ。


「火魔法付与……身体強化。───一閃」


 なるほど、感覚は変わらず地球のままだ。

 あの世界にも似たような何かが漂っていた。それが俗に言う魔力というものならば同様に転じてやればいい。不刃なら本気で戦ったところで刃毀れの一つも見えないようだしな。


 とはいえ、四体しか狩れなかったのは微妙だ。

 縦一閃で殺せるのが四体だったに過ぎないが……狭い洞窟の道の中ならば六体は倒しておきたかった。感覚や殺し方に関しては地球の時とは違うみたいだね。イノシシのように楽に倒せるかと思ったけど……多少は研究した方が良いかもしれない。


 まぁ、それでも既に勝敗は決まっている。

 不刃を強く振って血を払う。あくまでも俺がするべき行動は少しの傷すら負わない戦闘だ。獣共との連戦の時もそうだったがサバイバル環境では怪我や得物の管理が最重要となってくる。今回だってダンジョンから出られるか分からない以上は怪我を負わない選択肢を取るべきだ。幸運な事に得物は雑に扱おうと壊れはしないのだから。


「居合抜刀」


 獣よりは知能が高いようだがそれでも駄目だな。

 仲間が死んだ事から意識を取り戻すまでの時間がどの個体も同程度に必要だった。その間約五秒、それだけの時間があれば三体は確実に狩れる。この程度ならば唯ですらも防げるレベルだというのに……少しばかり気をやり過ぎたかもしれない。


「済まないが手は抜かない」


 残り一体の首を飛ばして血を払っておく。

 払った時に違和感も無いし、切る時も居合の時すらも何百と振ったかのような手の馴染みすら感じられた。俺の要望に応えてくれている時点で当たり前の事なのかもしれないが……ただの刀であれば今みたいに簡単に倒し切れはしなかったかもしれない。


 一先ず、鞘に戻して軽く柄を撫でておいた。

 これで合計十二体のゴブリンを狩った訳だがステータスの確認でもするべきだろうか。それと先程は捨ててきてしまったがゴブリンの遺体も持っていくべきかどうか……悩むのも面倒だから先にステータスを確認しよう。遺体は後回しだ。




 ____________________

 名前 《未設定》

 種族 人族

 年齢 13歳

 レベル 3

 ジョブ 1.【侍LV2】2.【未開放】

 HP 540/540

 MP 1080/1080

 物攻 G(45)

 物防 G(45)

 魔攻 G(50)

 魔防 G(50)

 速度 G(70)

 幸運 S(100)

 固有スキル

【熟練度上昇】【経験値上昇】【ステータス操作】【従魔創造】

 スキル

【隠蔽LV1】【気配遮断LV1】【剣術LV10】【料理LV7】

 魔法

【火LV1】【水LV1】【空間LV1】

 得物

不刃ミシック

 ____________________




 おお、数値の上昇としては悪くはなさそうだ。

 実際問題、この数値がどれだけのものなのかは分からないけど容易に倒せる敵で、こうも楽にレベルが上がるとなれば強くなれる速度も遅くは無いだろう。少なくとも獣共を狩るよりは余っ程、早く強くなれる。


「くっ……ふっ……ははっ! あーはっーはー!」


 ああ、楽しいな。面白くて笑いが止まらない。

 こんなにも容易に強くなれるのなら死にかけた日々なんて馬鹿みたいじゃないか。いやいや、爺ちゃんの扱きがあるから今が楽なのは分かってはいるが本当に……技術の無い馬鹿は弱くて助かるよ。それでも、この愉快な気持ちを失ってしまうのはつまらないよなぁ。


「不刃、少しだけ遊びに付き合ってくれ。ここから先は技無しの本物の愉悦だ。俺の得物として本物の業物としての力を見せてくれ」








 とは、確かに言いはしたが遊び過ぎたな。

 いや、俺の動きに合わせて力を示してくれた不刃のおかげもあるよ。それでも、斬る事の楽しさを思い出してしまったせいで……こうも山を作る事になってしまうとはね。いやはや、そういう感情は爺ちゃんに叩き潰された時に消し去ったと思ったんだけどな。


 数からして……二百は狩っただろうか。

 まぁ、マップがあるとはいえ、だだっ広い空間だからな。一階層のゴブリンを狩り尽くしても二百はいたとなればかなりのものだろう。それこそ、マップが無ければ容易に迷って死にかけていた可能性すらあるからな。


 ましてや、ここまでやって分かった事もある。

 最初に、この階層は魔物のリポップというものは無さそうだ。狩ればそれで終わりの空間、無駄に戦わなくても良い反面、無理やりなレベル上げは不可能だと言っていいだろう。だから、愉悦とは言ったが殲滅したというのに無駄な努力だったらしい。


 そして二つ目、今はコチラが重要だろう。

 この山を作れたように、多少なりとはいえ、空間魔法というものの扱いは会得した。火魔法や水魔法は地球にいた時から近しい事は出来ていたから応用だったものの、この空間魔法というものに関しては完全な未知数だったからな。今では倒した全ゴブリンの遺体を回収して、出し入れすらも無意識に行えている。


 最後に三つ目、それは俺の目の前にある扉だ。

 他とは違って置かれた扉、加えて酷く豪勢で押したところで容易に動くとは思えない。まぁ、最悪は不刃で斬ればいいから気にしてはいないが……これは俗に言う、ボス部屋というものなのかもしれないな。そう思えるくらいには他の部屋は温過ぎた。


「ギィ」

「ああ、ごめん。打ち漏らしたな」


 本音を言えば今みたいな細切れは余裕だった。

 マップがあれば敵の位置は容易に追えるし、敵の速度も熊や鳥に比べれば簡単に叩き切れる。それ以上を加えなかったのは面倒でしかなかった事と今みたいな奴がいる事の二つ。どうも、マップに映らないゴブリンがいるようだからな。


 名付けてゴブリンアサシン、そのままだけど。

 本音を言うとコイツらは少しだけ手間がかかってしまうからな。他に比べて強く、他のゴブリンのように出会う事すら出来ない。あるとすれば俺が隙を見せた時くらいだから殺すのは容易だとは言えども……いいや、今は必要無いか。


「爺ちゃんの心得……三十二だったか。戦を前にして休息を取らない武士はいない。危険だからこそ、その身を十全に扱えるように休息を行えだったな。爺ちゃん……今はその言葉に甘えさせてもらうよ」


 アンタの教えが俺を生かしてくれるなら笑おう。

 それが通じるのなら……この先も笑いながら戦えるって事だからな。安心してくれよ、爺ちゃんの最高の弟子がどうして雑魚に狩られると思う。俺の強さは爺ちゃんが一番に理解しているよな。






『なら、進め。退路なぞ、考えるべきでは無い』


 ああ、こんな時に爺ちゃんの言葉が浮かぶのか。

 そうかい、この先の敵は今のうちに戦うべき相手だって言いたいんだな。いいや、俺の中の本物の化け物がそう口にしているんだ。それなら今は愉悦のままに戦うべきだろう。何より……俺の最愛の師匠の教えなんだからな。

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