第7話「その日」
今日はやたら早く起きてしまった。いや、早く起きたかったのかもしれない。今日はライブ当日なので、持ち物のチェックをする。色々なブロガーさんの持ち物を参考にしながら、荷物を詰め込む。
まず、ライブが始まる二時間前にバイト先に行く。店長からチケットを受け取るからだ。そしたら、松浦駅で春花と合流して、ライブの物販に並ぶ。
三原駅から電車に乗って一駅で松浦駅に着く。しかも、各駅停車だ。
「私、意外と、いいところに住んでいるな」
そう思ったところで、家を出る。三原駅まで歩いて、バイト先まで行く。
歩き疲れたので、ベンチに座り、スマホで、ベリアファンたちのライブの感想を見る。ライブの雰囲気だけでも知りたい。また、歩き始める。
バイト先に着く。
「おっ。手田さん。これ、午前の部のチケットね」
店長がチケットを渡してくる。
「ありがとうございます!」
お礼を言って去ろうとしたら、店長が私に手を振る。
「楽しんでこいよー」
我ながら、いいバイト先を選んだな。と思いながら三原駅の改札を通る。
電車に乗って松浦駅で降りる。改札口で春花と合流した。
「やっほー! ついに当日だね!」
春花の髪に気合が入っているように見える。
「そうだね! ライブなんて、久々だから、なんか緊張しちゃう!」
私がそう話すと、改札口からベリアファンとみられる人々が松浦駅近くの、松浦ホールに向かっている。
「奈美ちゃん。私たちも向かおう!」
「そうだね」
春花と松浦ホールに向かう。
ライブの物販に並んで、グッズを買ったのちに、松浦ホールに入る。チケットを春花に渡して、入り口まで向かう。
「本当に……ドキドキしてきちゃった」
春花がチケットを握りしめて言う。
「……ファンレター、持ってきた?」
私がきくと、春花がトートバックをポンポンしながら言う。
「持ってきた」
そんな会話をしたところで、ホール内に入れた。時間が過ぎるのはあっという間で、あと十五分でライブが始まる。物販で長い時間、並んだから、より早く時間が過ぎる。
ホールで春花がうちわを取り出す。私はペンライトを取り出す。さっき買ったばかりの。
ライブは定刻通りに始まった。・代表曲をジュン君とカナト君が歌って踊る。
楽しみすぎて、脳みそが記憶をすることを放棄している感覚があった。しっかり覚えていたいのに。
ライブが終わると思った、そのとき、アンコールも終わったのに、カナト君が言う。
「今日は、大事なお知らせがあります」
ホールがざわつく。ジュン君が言う。
「じゃあ、出てきてください! レイ!」
歓声と拍手が上がる。私の隣で春花が舞い上がっているのが、わかる。
「今日から、活動再開します! レイです!」
レイ君がファンたちに、そう告げて、ライブは終わった。