第4話「対話」
「伊東さん。下の名前は?」
「そっか。言ってなかったか。『春花』だよ」
「じゃあ、春花さん?」
私がそう言うと、彼女が笑う。
「春花さんって……。春花でいいよ」
「あー。わかった」
なんだか、人を呼び捨てするのはソワソワする。
「ところで、ファンレターどうする?」
私がきくと、春花がうなる。
「うーん。うぅーん。悩むな」
レイの活動休止へ対するショックが全く見られないが、まぁ、いいだろう。
「春花自身の、レイへの好きっていう気持ちを書けば?」
私がそう提案すると、春花が目を見開く。
「ジャストアイデア! やっぱり、奈美ちゃんが言うことは、しっかりしているねぇ」
彼女の顔に笑顔があふれる。
「ファンレター、書いたら奈美にも読んでほしいな」
「うん! いいよ」
私たちが笑いあう。
「ファンレター、書いたら見せてね」
私がそう言って、今日は解散した。
公園で話をした日から、私はバイトや学校を「なんとなく」こなしていた。ふと、自室でスマホを見ていたら、ベリアからお知らせが届く。
「ライブ開催のお知らせ」
私の心臓が高鳴る。詳しくお知らせを読むと、どうやら三原駅の隣にある松浦駅の近くで行うみたいだ。
「でも、レイ君は……」
元々ベリアのメンバーは三人なので、今は実質、私が推しているジュン君とカナト君のみになっている。
「運営も、ぶっ飛んだことするな」
そう思いながらも、春花にメッセージを送る。
「ライブやるってね」
……なかなか返信が来ないが、まぁ、しょうがないか。
テレビをつけると、どのニュースもベリアのライブ一色だった。
「今は十一月だから、あと一か月か……。待ちきれないな」
そんな独り言を呟く。
「ごめん! ファンレター書くのに集中していた!」
春花から返信が届く。
「ライブ、どうしようかなぁ」
さらに春花が送ってくる。
どう返事をしようか考えていると、店長から電話がかかってくる。