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推し活  作者: 梨音
3/8

第3話「休日」

 私はスマホでベリア(推し)のファンクラブのお知らせ欄を見ていた。

「グッズも出たばっかりだし、お知らせもないか」

そう思って、スマホを閉じようとすると、メッセージが届く。伊東さんだ。

「ひさしぶり(笑)ベリアのグッズ、何か買った?」

私は、レジを打ったので、伊東さんが何を買ったのか多少はわかっている。グッズは通販で買ったので、何を買ったか忘れた。

 ベリアのオンラインショップを見て、購入履歴を見る。

「缶バッチ、ブロマイド、ぬいぐるみか……」

自分こんなもの買っていたのか、と思う。忘れたころに届くことも「あるある」だと私は思う。

伊東さんに返信をする。

「缶バッチとか、ブロマイドとか買ったよ」

返事を待っていると、ファンクラブからメールが届く。

「今後の活動について」

……なんだか、怖いタイトルだな。メールを開くと、淡々と、情報が書いてある。なんとなく、読み進めると、恐ろしいことが書いてある。

「レイ……。活動休止……?」

メールの内容は、ベリアのメンバーであるレイ君が体調不良のため無期限の活動休止をする。ということだった。

メールを読み終えると、伊東さんから電話が、かかってくる。

「ねぇ! ファンクラブのやつ見た?」

伊東さんが非常に焦っているのが伝わる。この前よりも早口で、口調も強い。

「あぁ。見たよ」

「私、レイ君推しなのに。マジでヤバイ」

「うーん。えっと、その、大丈夫?」

私は言葉を選びながら言う。伊東さんの心情は計り知れない。

「大丈夫じゃないよ! 生きる価値を失った……。これからどうしよう」

確かに、推しの活動休止ほど気分が下がることはない。私は、何とかこの重い空気感を何とかしたい。

「無期限、っていうのも辛いね」

私がそう言うと伊東さんが呟く。

「ほんとだよ……」

とにかく、伊東さんには元気を出してほしいので、ふと思いついた提案をする。

「ベリアの事務所にファンレター送ってみたら?」

「え! レイ君に?」

「そうそう。レイ君をはげませたらなーって」

暗かった伊東さんの声が明るくなる。

「じゃあ、今から図書館行って、一緒に書こう!」

「いいよ。今から?」

「もちろん。いったん切るね!」

電話を終えて、私は家を出る。伊東さん、気分がコロコロ変わるタイプだな、と思いながら。

 図書館に着くと、入り口で、また、伊東さんが待ち構えていた。

「図書館の中じゃ、あんまり、しゃべれないから、ベンチにでも座って話そう!」

伊東さんに連れられ、図書館近くの公園に行く。それにしても、プランもコロコロ変わるのだなと思った。

「奈美ちゃんって、ファンレター送ったことある?」

今まで「手田さん」と言われていたのでドキッとする。

「昔に、何回か。でも今は送ってないなぁ」

伊東さんが腕を組みながら言う。

「私もあまり送ったことなくて。緊張しちゃう!」

「伊東さんって、すごい、しゃべるタイプだね」

「あぁ(笑)。名前、呼び捨てでいいよ」

今までこんな友達はできたことがなかったので、呼び捨ては少し緊張する。

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