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残念ですが、生贄になりたくないので逃げますね?  作者: gacchi(がっち)


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49.ジーナの家族

侍女として引き取ることにしたジーナの家族が来たと言われ、

外宮ではなく本宮の応接室で会うことにした。

外宮から本宮に入る際に厳重に検査させ、

応接室でしばらく待たせた上で、ルークが対応することになった。


ジーナが虐げられて追い出されるのを見たのはラディとクレアだけど、

次期竜王と竜王妃になる二人に対応させるわけにもいかない。

私も竜王様の娘になったので、簡単に面会できると思われては困るらしい。


仕方なく、応接室の隠し部屋でラディとクレアとこっそり見ることにした。


応接室ではジーナの父親と母親、そして妹だと思われる三人が座っている。

髪がうすくなった白髪の男性、茶色の髪を綺麗に巻いた厚化粧の女性、

綺麗に着飾った薄茶色の髪の若い女性。


女性二人は化粧を塗り直したいらしいが、

本宮に入る前に荷物を取り上げられている。

仕方なく服のしわを伸ばしたり、立ってみたり落ち着かない。


何の説明もなく待たされていることに腹を立てているのだろう。

朝早く王宮に来たらしいけれど、そんな時間に会うわけがない。

こちらが呼んだのではないから帰らせてもよかった。


対応することにしたのは、

クレアがジーナの家族が何を言う気なのか知りたいと言うから。

ジーナの今までのことを聞いて、

その家族に報復してやりたいと思っているようだ。


ノックもなく、応接室にルークが入ってくる。

三人が慌てて立ち上がり礼をする。


ルークはじろりと三人を見て、少し待ってから声をかけた。


「顔をあげていい。座れ」


「はいっ」


ルークがソファに座ると、三人も向かい側に座る。

ちょうど三人の顔が見える位置に私たちは隠れている。


「竜王様の側近ルークだ」


「アヒレス家の分家ガルデラ家の分家デオダ。

 妻のヒルデと娘のレーニです」


竜族の貴族で家名があるのは代表の五家とその分家の十二家だけ。

その後は、十二家からどれだけ分家なのかで身分がわかる。

ジーナの家は十二家の分家だから、それなりに身分は高かったらしい。


「そうか。それで用事はなんだ?」


「はい、あの、突然王宮から使者が来まして。

 娘のジーナを侍女にすると。

 しかも竜王様の養女となられた方の専属侍女だと。

 それは本当のことでしょうか?」


「それは聞いている。本当のことだ。

 何か問題でもあるのか?」


「はい。ジーナはガルデラ家の嫡男と婚約しております。

 次の春に結婚することが決まっていますので、

 ここにいるレーニが代わりに勤めさせてください」


「私がお姉様の代わりとなりますので、

 どうぞよろしくお願いいたします」


なるほど。王宮の侍女、しかも竜王の養女の専属侍女となれば、

その辺にいる竜族よりも身分は上になる。

ジーナよりも可愛がっている妹を勤めさせたいということらしい。


「ジーナに婚約者はいないはずだな」


「いえ、おります」


「夜会の日、婚約を破棄されたところを次期竜王が見たと」


「えっ……」


まさかラディに知られていたとは思わなかったのか、

デオダは何も言えずに黙ってしまう。


「しかも、ジーナではなく、そこにいる妹と結婚すると、

 そうも言っていたそうだな?」


「あ、あの……」


青ざめて何も言えなくなってしまったデオダに代わり、

レーニが口を開いた。

化粧のせいか、顔色がわからない。平然としているように見える。


「それはお姉様が悪いからですわ。

 婚約者よりも自分の仕事とやらを優先しているために、

 婚約者のジャック様が怒ってしまったのです。

 あの時は反省を促すためにそう言っただけで、

 婚約はそのまま継続されています」


「そ、そうです!婚約はそのままです!」


「ふうん。荷物も持たせず、追い出したのにか?」


「家に戻ってくれば、そのまま入れるつもりでしたから」


ジーナの妹なだけあって、賢いようだ。

この場合はずる賢いかもしれないけど。

あくまでも脅すために言っただけで、

婚約してることには変わらないと言いたいらしい。


ジーナに聞いたけれど、もともと夜会に行く予定はなかったのに、

普段着のまま無理やり、夜会の会場に連れて行かれたという。

他の令嬢たちに嫌味を言われ、ようやく会場から抜け出したところで、

荷物も持たずに出ていけと言われ暴力をふるわれた。


それを脅しだとごまかせると思っているのだろうか。


「まだ婚約は継続か。それでは、竜人の俺が破棄を命じる」


「え?」


「脅しだとしても、ジーナに暴力をふるったところを見ている。

 蹴り飛ばすような婚約者はいらないだろう」


「ですが!ジャック様の許可も得ずに」


「なぜ、俺が竜族の分家に許可を取らねばいけないんだ。

 王宮内で暴力事件を起こした犯人として捕まえてもいいんだが。

 その男と、妹だというお前も」


「わ……私は関係ありません!」


「その場にいて助けなかったのだから同罪だろう」


「そんな……」


ようやく黙ったレーニに、両親は青ざめて震えたまま。

母親は口を開くことすらできないようだ。


「お前たちがジーナを連れて帰りたいというなら、それでもいいが」


ルークの言葉に、三人の表情が明るくなる。


「その場合は、ジーナの分の税も払えるんだろうな?」


「「「え?」」」


「夜会でアヒレス家の当主に言ったのを聞いていなかったのか?

 お前たち竜族は百二十年分の税を納めていない。

 その分の税とこれからの税を支払わなければ、

 竜族はこの国から出ていかなければならないんだ。

 三人分だけでもかなりの金額だろうに、ジーナの分まで払えるのか?」


「……それは、どのくらいなのでしょうか……」


ひらりとルークが一枚の紙を見せる。

そこにはジーナが支払わなくてはならない税の金額が書かれている。

裕福な家で使う馬車二台分といったところだろうか。


「こ、こんなに!?」


「これはジーナが生まれてからの二十年分だ。

 当然、ジーナの親であるお前たちはもっとだな。

 竜王国で暮らした時間分、払ってもらうことになる」


五家と分家十二家に支払ってもらう金額は変わるが、

その下の分家以下には生まれてから今までの分の税。

そして今後竜王国で暮らすのであれば、これからも税が必要になる。


「ジーナは成人したので、親が払う必要はない。

 本人もここで無給で働いて返すと言っている。

 だが、親が引き取ると言うのであれば、今すぐ払ってもらおう」


「……いえ、ジーナをよろしくおねがいします」


「お父様!?」


「レーニ、これは無理だ……家族三人分を払えるかどうかもわからない。

 そんな時にジーナのために金を使えるわけがないだろう。

 それに無給で働くというのなら何のうまみもない」


「そうだけど……」


こそこそ話しているようだけど、全部聞こえてる。

無給じゃなかったら給料を搾り取ろうとしたんだろうな。



「わかったならさっさと帰れ。

 こちらは五家との話し合いの準備で忙しいんだ」


それだけ言ってルークは応接室から出ていく。

残された三人はジーナのことはもうあきらめたのか、

どうやって税を払うかで頭がいっぱいのようだ。


「本当に最悪な家族ね……ラディ、これで終わらせるの?」


納得いかなかったクレアがラディに怒っている。

ラディはクレアの頬を撫でながらにやりと笑った。


「竜族は全員追い出すって言っただろう。

 税なんて払ったって無駄なんだ」


「どういうこと?」


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