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残念ですが、生贄になりたくないので逃げますね?  作者: gacchi(がっち)


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45/61

45.ダンスと同盟国の使者

「クレア、踊ろうか」


「ええ」


そんなことはおかまいなしに、

ラディがクレアをダンスに誘っている。

いいなぁと思ってみていたら、すっと手を差し出される。


少し不安そうな目をしたルークが、私に向けて手を差し出していた。


「俺と踊ってくれる?」


「ルークも踊れるの?」


なんとなく何でもできるラディと違って、

ルークは貴族的なことはできなさそうな印象がある。


「一応は。側近になる前にできるように指導されるから」


「そうなんだ」


「ダメか?」


「ううん、誘われたのが初めてだから驚いたの。

 よろしくね」


「ああ」


うれしそうに笑うルークの手をとって、ダンスが行われているフロアに移動する。

そこでは竜人たちが踊り、周りで竜族がうらやましそうにながめている。


番になっている竜人はパートナーをつれて参加している。

番がいない竜人の女性は夜会には出席しない。

そのため、竜人の男性がおもしろがって男性同士で踊っているらしい。

竜族の女性はそれを見て、自分が誘われるのを待っている。


ルークに背中を支えられるように踊りながら、

あれでいいのか聞いてみる。


「男同士で踊っているのはどうして?」


「あれはね、番ができた時の練習のため?

 異性よりも同性のほうが好きだというものもいるし。

 まぁ、半分以上は面白いからだと思うけど」


「竜族の女性を誘う人はいないんだね」


「ごくまれに、夜会で番が見つかることもある。

 それを狙って竜族の女性が集まっているんだ。

 ……今回のことで竜族は王都からかなり減るだろうね」


「これから税を取るから?」


さっき竜王様はこれから竜王国内で税を取りたてるって言ってた。

今まで支払わないで済んだものが必要だと言われたら、

払えない竜族もいるだろう。


「それだけじゃないよ。ずっと竜族は問題ばかりだったんだ。

 だけど、属国が多すぎて手がいっぱいだった。

 だから先代の竜王は目をつぶった。

 竜族が横領していても後回しにしようと。

 それだけ必死でアーロン様を探していたから」


「犯罪を見なかったことにしてもいいほど、

 アーロンが大事だったってこと?」


「そうだ。そもそも竜人は竜人だけで生活していた。

 アーロン様が外に出なければ、他国と交流する必要もなかった。

 先代の竜王様は竜人以外は必要としていなかった。

 それなのに竜族を受け入れるほど、アーロン様を探すのに必死だったんだ」


「そんなに……」


もともと竜王国は竜人以外は入れないほど鎖国していた国なのは知っている。

戦争を重ねて、属国が増えて、

考えが変わったのかと思っていたけれど、そうじゃなかった。


「税を払っていないだけで追い出してしまうの?」


「いや、本当は税の問題じゃない。竜王国は属国から税を取っていた。

 お金はそれほど必要としてない。

 何が問題かっていうと、許可していない場所に竜族は建物をたてているんだ」


「許可していない場所?そこに勝手に建ててるってこと?」


「そう。王都の街を見ただろう?

 本当はあちこちに隙間があるはずなんだ。竜が降りれるように」


「あぁ……それは困るね」


ルークがわざわざ私の私室のテラスに降りてきたように、

竜が降りてこられる場所は少ない。

竜人だけが住んでいたころは違うんだろう。


王都の街並みを思い出すと、隙間なく建物があった。

本来は竜がおりられるように作られた街なのだとしたら、

違法に建てている竜族が多いということになる。


もしかして、竜族を追い払いたいっていうのもあって、

今までの税が払われているか調べさせたのかな。

ルークのこともあるだろうけど。


「勝手にあちこち建てるから、争いも起きてるし、

 治安も悪くなっている。

 竜族の貴族が勝手に許可をだして、竜族を受け入れている。

 しかもこの国に住むためのお金を取ってね」


「それって勝手に税を取ってるってこと?」


「そう」


それはあまりにも重罪だ。

竜王様の国なのに、勝手に竜族だけの税を決めるなんて。

しかも、それを竜王国に納めていない。

こんな重罪を放っておくなんて。


「みんな竜族が害なのはわかっていた。

 だけど、アーロン様が見つかるまでは仕方ないってあきらめてたけど、

 それが百年をこえた頃、我慢ができなくなった。

 だから竜人はみんな隠れ里に行ってしまったんだ」


「そうなんだ。

 そんなことがあったから、竜人は少なくなってしまったんだね」

 

気持ちはわからなくもない。

竜族の横領を見逃し、王都の土地も好き勝手され、

戦争ばかりする先代竜王に呆れてしまった竜人もいたのだろう。


だけど、このままでは竜王国は竜族の国になってしまう。

竜人が竜族のために働く、そんな国に。

それは竜人として認めるわけにはいかない。


「竜族を排除できるのかしら」


「全員を排除する必要はない。

 犯罪を犯した者、竜人に従わない者は出て行かせる。

 きっとリディも忙しくなるぞ。

 後宮の解体が終わったら、その仕事を命じられそうだ」


後宮に解体もあと半年ほど。

それ以降は竜族との交渉になりそう。

ブソナやローズのような貴族とのやり取りになるのかと思うと、

少し気が重くなる。


二曲続けて踊ったら、のどが渇いて一度休憩することにする。

飲み物をもらってテラスに行こうとしたら、

ルークが近くにいた男性に話しかけられる。


「失礼、ルーク様ではないですか?」


「ああ、何か?」


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