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残念ですが、生贄になりたくないので逃げますね?  作者: gacchi(がっち)


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33/61

33.慌てるラディ

竜王国に戻ってきて、二週間。

レンデラ国のことが嘘だったのかと思うくらい穏やかな日々を過ごしていた。


だけど、あれからクレアは呼びかけても出て来てくれないことが増えた。

出て来てくれても、ぼんやりしていて、すぐに竜石に戻ってしまう。


心配だけど、クレアにしてあげられることはない。

元気になってくれるのを待つしかなかった。


「どうすればよかったのかな……」


「クレアが気が済むようにしたし、復讐も終わった。

 リディができることはしたと思う。

 だけど、復讐を終えたとしても家族は戻ってこない」


「そっか……そうだよね。私は最初から家族なんていなかったから、

 それを失うつらさもわからない。

 だけど、もしクレアを奪われたとしたら……。

 相手を直接殺しても納得しなかったかもしれない」


「俺もそうだ。家族はクライブ様だけだった。

 もし、クライブ様に何かあれば相手を許さなかっただろう。

 今、クレアはそういう状態なんだ。

 時間はかかるだろうけど、待つしかないよ」


「わかった」


それから、私とルークはいつも通りに仕事をしていた。

同盟国や属国からの後宮を維持してほしいという嘆願書に目を通し、

竜王様の決定は覆らないとの返事を書いて送る。

何度も同じ国から届くこともあり、きりがない。


わかるのは、後宮の解体を誰も望んでいないということ。

簡単には認められない妃候補になるということが、

同盟国の中での立ち位置争いに利用されていたのがわかる。


多分、それもあって竜王様は後宮を解体しようとしているんだと思う。



今日も昼食を終えて執務室に戻り、仕事を再開しようとしたら、

誰かが荒々しくドアを開けた。


「あれ?ラディ。戻るの早かったね」


護衛騎士に止められないのなら、側近の誰かだと思った。

入ってきたのは、息を切らしたラディだった。

しばらく戻らないと言っていたのに、こんなに早く戻ってくるとは。


よほど急いで来たのか、ぜいぜいと息を整えている。


「そんなに急いでどうしたの?大丈夫?」


「……ああ。できるだけ早く後片付けを終わらせて戻ってきた」


「何かあったの?」


「落ち着いて聞いてくれ。俺の番はリディかもしれない」


「え?」


「はぁ?何言ってんだよ、ラディ!」


ラディの発言に、ルークが私を背中に隠す。


「言った通りだ。リディが俺の番だという可能性が高い」


「ふざけるな!そんなわけないだろう!」


「俺だって信じられなかった。だが、そうかもしれないんだ!」


「黙れよ!」


驚いて何も言えないうちに、ルークとラディは言い合いを始めてしまった。

私がラディの番かもしれない?

今までそんなそぶりはなかったと思うけれど、どうしてそんなことを。


「だから、俺の番かもしれないからリディと話がしたい」


「そんなこと許せるか!リディは俺の」


「ルークの番かもしれない、けど、番だと確定したわけじゃないだろう」


「っ!だけど!」


「リディはまだお前のものじゃない。俺の番かもしれないんだ。

 確認させてくれてもいいだろう?」


「……ダメだ!」


ラディは宥めるようにルークに言い聞かせているけれど、

ルークは話を聞く気がないようだ。

とにかくルークを落ち着かせようと手を握ったら、

私を隠すように抱きしめられる。


「リディは渡さない!ラディの番だとしても!」


「そんなことはできないってわかってるだろう。

 番なら、誰であっても引き離せない」


おそらく、それは竜王国での決まり。

番であれば、誰であっても引き離せない。

それでもルークは納得できないようで私を強く抱きしめる。


「ルーク、少し落ち着いて?」


「リディ……だけど」


「ラディがどうしてそんなことを思ったのか、理由を聞いちゃダメ?

 だって、ラディが番だって言い出すの、おかしいと思うの」


「……それはラディのこと番だと思えないということか?」


番だと思うかどうか。

ルークに番かもしれないと言われた時は驚いたけれど、

そうかもしれないと思う自分もいた。


だけど、ラディに言われても信じられない。

違うんじゃないかと思ってしまう。

これが竜族の本能なのかはわからない。


だけど、本当に番なら何かしら感じ取れるんじゃないかと思う。


「少なくとも、今までラディはそんなそぶりなかったもの。

 私が番かもしれないなんて、思えないわ」

 

「わかった……話を聞くよ」


話を聞くと言ったものの、私を離す気はないらしい。

ルークに抱きしめられたまま、ラディへ顔だけ向ける。


「それで、ラディはどうしてそんなこと思ったの?」


「最初はリディを竜王国に連れてきた時だった。

 俺の番は竜王国の外にいるはずだったのに、居場所がわからなくなって。

 探すために他国に行ったら、なぜか竜王国に戻りたいと思うようになった」


「番の居場所がわからなくなった?」


「もとから番の気配はあったりなかったりで、

 俺の竜気が弱いわけじゃないのに、おかしくて」


ルークの話では竜気が強ければ番を探しやすいと言っていた。

竜気が弱いわけじゃないのに、見つけにくい番?


「はっきりわかったのは、レンデラ国からリディたちが出て行った後だ。

 番の気配が竜が飛ぶ速さで遠ざかっていくのを感じた。

 あんなにはっきりと番を感じたのは初めてだった……。

 あの時、竜に乗って移動していたのはリディだけだ。

 だから、竜王国に戻っていったリディが番なんじゃないかと思って」


「竜に乗っていた番の気配が……」


それって……もしかして。でも、違ったらどうしよう。

そう思ったけれど、そうじゃない。

番だったらどうしよう、だ。


だって……


「ルーク、もしかしてラディの番って」


「……まさか」


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