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残念ですが、生贄になりたくないので逃げますね?  作者: gacchi(がっち)


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25.怒る竜王様

なぜか怒っているルークにそのまま連れ出され、本宮へと戻る。

執務室に戻るのかと思いきや、そこは知らない部屋だった。


「ルーク……ここどこ?」


「俺の部屋」


「え?」


なんでルークの私室に?と思っていたら、ベッドに押し倒される。


「……ルーク?」


「なんであんな真似したんだ?」


「え?あんな真似って、コリンヌ様に会いに行ったこと?」


「罠だとわかってて、どうして行ったんだ?」


ルークが怒っているのはわかるけれど、

どうしてこんなにも怒っているのか理由がわからない。


「だって。コリンヌ様が私に何かすれば後宮から追い出せると思って。

 そしたらルークの仕事も減るし、いいなって……」


「自分を囮にするって、男たちにこの身体をさわらせる気だったのか?」


ルークの手が首筋から胸へとおりていく。

そのまま腰へするりと撫でられ、身体がびくっと震える。


「男に汚されるって、どんなことをされるのかわかってるのか?」


「……わ、わかってない」


「騎士たちが倒されるような状況だったら、

 リディはそのまま犯されていたってこと、わかってる?」


手がまだ下にと動く。

スカートのすそから手が入り、ふとももを撫でられる。


「ル、ルーク……?」


「怖い?襲われたらこんなものじゃ済まないよ」


「さ、されるのが怖いんじゃないの。

 ルークが怒ってるのが怖い……」


私にふれているのがルークだとわかっているから、怖くも嫌でもない。

だけど、ルークが冷たい目で私を見下ろしているのが怖くて、

耐えようと思ったけれど涙がこぼれていく。


「…………はぁ」


ため息と同時にルークがおおいかぶさってきて、ぎゅっと抱きしめられる。

さっきまでの刺さるような怒りは感じない。

ほっとしたけれど、ルークを怒らせてしまった。


「……怒らせるようなことをしてごめんなさい。

 騎士たちがいるから大丈夫だと思って」


「どうして頼るのが俺じゃなくて騎士なんだ」


「え?」


「リディを守るのは俺の役目だろう。

 どうして俺が戻るのを待たなかったんだ」


「だって、ルークは忙しいから……私も役に立ちたくて」


「はぁ……もういい、黙って」


まだ怒っているのか、言い訳を許してもらえなかった。

ベッドに押し倒されたまま、ぎゅっと抱きしめられている。


不思議とルークの重さは感じないけれど、

強く抱きしめられているのはわかる。

その身体が少しだけ震えているのがわかった。


「……頼むから、一人で無茶しないでくれ。

 まだ魔術を使えない状態なのに」


「……うん。ごめんなさい」


いざとなれば、暴走してでも魔術を使えばいいと思っていた。

騎士たちもたくさん連れて行ったし、何とでもなるだろうって。

それがこんなにもルークに心配されるなんて思わなかった。


「もう絶対にこんな真似しないで。

 次に同じことをしたら、この部屋から出さないから」


「わかったわ。もうしないから」


約束するようにぎゅっと抱きしめ返したら、

ようやくルークの雰囲気がやわらいだ。


それでもしばらくは気持ちが落ち着かないようで、

少しも離してもらえず抱きしめられたままだった。

食事も自分ですることはできず、

ずっとひざの上にのせられることになる。


貴族牢に入れたコリンヌ様のことを竜王様に報告できたのは、

次の日の昼過ぎになってからだった。




「妃候補を牢に入れた?」


「はい。報告書です」


説明するよりも報告書を見せたほうが早いと、騎士からの報告書を提出する。


あの時、私がコリンヌ様の部屋に入ってからの会話を、

騎士がすべて記録していたらしい。

たしかにそれを読んでもらえば、

コリンヌ様が私に何をしようとしたのかわかりやすい。


竜王様が報告書を読むのを待っていたら、ベキと変な音が響いた。


「え?」


なぜか竜王様の机が凹んでいる。

よく見れば、竜王様がひじで机をへこませた音だったようだ。


「リディを男に襲わせようとした?

 その上で顔を薬品で溶かそうとしただと……!?」


「わっ」


竜王様の竜気が漏れ出し、逃げようとしたらルークに庇われる。

ルークの背中に隠されると竜気の影響が少し弱まる。

それでも息を吸うのがやっとで苦しい。


「クライブ様、気持ちはわかりますが、リディが苦しんでます。

 竜気を弱めてください」


「あ、ああ。悪い、リディ。大丈夫か?」


「は、はい」


驚いたけれど、それほど影響はなかった。

竜気にも慣れてきたのかもしれない。


「こいつら、全員処刑でいいか」


「え?」


「いいと思います」


「ええ?」


竜王様とルークが処刑でいいとうなずくのを見て、

ハンスに目で助けを求める。


「お二人とも……リディ様が怖がっていますよ。

 未遂なのに処刑できるわけないでしょう」


「だが……」


「国外追放でいいではありませんか」


「しかしだな……」


「ねぇ、リディ様」


「はい!私もそう思います!」


ハンスの意見に賛成すると、竜王様とルークも渋々認めてくれた。

実際に何かされたわけじゃないし、侍女は命令されてただけだと思う。


それにコリンヌ様にとっては、

後宮から追い出され国に帰るだけでもけっこうな罰じゃないかな。

婚約破棄された王子とその婚約者がいる国に帰るんだから。


「仕方ないな……国外追放にするか。

 今、オリアン国の使者が来ていると言ってたな。

 そいつらに連れて帰らせよう」


「素直に連れて帰りますかね。

 使者はコリンヌ嬢の兄でしたよ」


「え?コリンヌ様のお兄様?」


「おそらく、後宮内にいた男三人を連れてきたのは、

 その兄なのだろう。その責任も取ってもらうか」


どうやらオリアン国の使者も共犯らしい。

呼び出して責任を取らせるというので、

竜王様が謁見するのをかげから見ることにした。


竜王様の謁見だと言われたからか、

オリアン国の使者たちは煌びやかな貴族服で部屋に入ってくる。


何がうれしいのか、にやにやと笑う真ん中の令息がコリンヌ様の兄らしい。



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