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19.看病

夜、目が覚めたらベッドのそばにはルークがいた。


「目が覚めた?水、飲むか?のど乾いてるだろう?」


「……うん」


言われてみればのどが渇いてる。

まだ熱は高いらしい。


身体が重くて起き上がれないと思っていたら、

ルークが背中の下に手をいれて起き上がらせてくれた。


「ありがと……」


「コップから飲めるか?」


「うん」


口元まで運ばれたコップから水を飲む。

うまく飲めなくて首筋にこぼしてしまったら、

それもルークが手でぬぐってくれる。


「まだ二日は熱が下がらない。

 竜熱は治す薬がなくて寝ているしかないから、

 苦しいだろうけど何か欲しかったら言って」


「うん」


水を飲み終わった後、

また寝かされるとルークが額の上に手を当ててくる。

重さは感じないけれどひんやりして冷たい。

昼間に手をつないだ時はルークのほうが温かかったのに。


「エリナは?」


「帰ったよ。もう夜だから。

 エリナは警備隊長が迎えに来て毎日家に帰ってるんだ」


「そっか。結婚してるって言ってたもんね」


まだ会ったことはないけれど、王宮の警備隊長が旦那様だと言っていた。

ハンスの息子でもあるらしいけど、どんな人なんだろう。


熱が高くて苦しいけれど、ルークの手のひらが冷やしてくれるから気持ちいい。

それに甘んじていたけれど、そのうち時間が気になってくる。

いつまでルークはここにいてくれるんだろう。


「ルークは部屋に戻らないの?」


「戻らないよ。熱があるうちは誰かがそばにいたほうがいい」


「ずっとここに?」


「看病って、そういうもんだろう?」


当たり前のように言うけれど、私は誰かに看病されたことはない。

風邪をひいたことやお腹が痛かったこともあるけれど、

部屋で一人放っておかれるのが当たり前だった。


苦しい、痛いと言っても、めんどくさそうな顔をされるだけ。

病気になったら嫌がれると思っていたのに。


「一人でいるのは嫌だろう?熱がある時は特に。

 俺じゃ嫌かもしれないけど、いさせてよ」


「ううん、ルークでいい」


「そうか」


ほっとしたように笑うルークに、どうしていいかわからなくて目を閉じた。

こういう時、頼り方、甘え方がわからない。


私が目を閉じたからか、ルークは髪をなで始めた。

ゆっくりと頭をなでられるようで気持ちいい。

されるがままになっているうちに本当に眠ったようで、

次に目を開けたらもう朝になっていた。



それから熱がしっかり下がるまでルークにお世話されることになった。

エリナがたまに様子を見に来てくれたが、

ルークはほとんどの時間を私のそばで過ごしていたようだ。


「熱が下がっても、まだ身体の中の竜気は安定していないの。

 しばらくは魔術を使わないようにしてね」


「ええ、わかったわ」


四日目の朝、もう大丈夫だとエリナに診断された時に、

そう注意を受けた。


竜熱は竜気の成長を促すためのものではあるが、

急激な成長のためにしばらく安定しなくなるらしい。


「使えなくなるというのならまだ問題はないけれど、

 暴発して王宮を破壊してしまったら困るでしょう?」


「……それはたしかに困るわね」


「大丈夫。俺がそばで使わないように見ているから」


「そう。リディ、ルークから離れないようにね」


「はぁい」


エリナにも面倒をかけてしまったからか、

素直に従おうという気持ちになる。

お母さんというよりかはお姉さんという感じだと思う。


私が素直に返事をしたからか、

エリナは私の頭をなでてにっこり笑って出て行った。


「リディはエリナに気に入られたね。エリナも気難しい人だから、

 竜族の令嬢なんかは話しかけることも難しいって言われている」


「そうなの?エリナは最初から優しかったと思うけど」


「まあ、リディはあいつらとは全然違うから。

 俺もエリナの気持ちはわかる」


「竜族の令嬢かぁ…そんなに違うのね」


何か思い出したのかルークはしかめっ面になる。

それほど嫌な令嬢たちなんだろうか。

そういえば竜王国にも貴族はいるって言ってたな。

会うとめんどくさいことになるから気をつけてって、ラディも言ってた。




その心配が現実になったのは回復してから二日後のことだった。

まだ無理はしないようにと言われていたけれど、

身体の調子は問題なく動けている。


目の前で熱を出して倒れたせいで、

ルークは必要以上に過保護になってしまった気がする。


いつもの外宮の食堂の個室で食事をしようとしたら、

ルークが食事を取りに行っている間に、三人の女性が入り込んできた。


「ルーク様に付きまとっている女ってあなた?」


中央のえらそうな女性が私を見下すような目で聞いてくる。

おそらく貴族令嬢なのだろうけど、

初対面の私にまともな挨拶をする気はないらしい。


そのうち来ると思ったけれど、

どうせなら個室じゃないところにしてほしかったな。

ここで暴れてしまえば、正当防衛だと主張するのが難しくなる。


「聞いているの!?答えなさい!」


「どうして答えなきゃいけないの?

 ここは一部の者だけが利用できる個室なのに、

 あなたたちは使う許可を誰から得たというの?」


外宮の食堂の個室は誰でも使える場所ではない。

本宮には食堂がないため、本宮で働く側近たちは、

ここにきて食事をする。


外宮で働く者たちは個室を使うことはできないと聞いた。

本宮で働く側近は竜人だけ。

目の前にいる令嬢たちは竜人ではなかった。


「なによ!それをいうなら、あなたこそ、

 ここを使う許可を得たというの!?」


「ええ。私は竜王様の側近だもの。

 ここで食事するようにと言われているわ」


「はぁ?」


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