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17.番って本当?

「コリンヌ嬢、リディとは先日会ったばかりだ。

 だが、一目見て俺の番だとわかった。

 だから、婚約する許可が竜王様から下りた」


「「はぁ?」」


コリンヌ様と同時に私も声をあげてしまったが、

そのことは気がつかれなかったようだ。


え?番?私がルークの?

驚いている間も、ルークにぎゅうぎゅうと抱きしめられている。

苦しくはないけれど、誰かに抱きしめられるという行為は初めてで、

人の体温に包まれて温かいけれどなぜか苦しい。


「どういうことですの!?」


「そのままの意味だ。

 コリンヌ嬢を迎えに行って戻ってきたら、

 リディが新しい側近として採用されていた。

 私とリディはその日のうちに竜王様に認められ婚約者になった」


「番だなんて、そんな!嘘よ!

 そんなことは信じられませんわ」


「さきほどコリンヌ嬢も言ってただろう。

 竜人と竜族が結婚することはありえないと。

 ありえるとしたら、それは番だということだ」


「そんな……」


真っ青な顔をしたコリンヌ様は、ふらりと倒れそうになる。

侍女たちに付き添われ奥の部屋へと行ってしまった。


「今日はもう話せないようだな。

 行こうか、リディ」


「え、ええ」


抱きしめられていたのは解放されたけれど、

手をつないだまま部屋から出る。

それを見送る侍女たちにはにらまれたまま。


「あ、あの。ルーク?」


「話は執務室に戻ってから」


こんなところで話ができないのはわかってる。

そうじゃなくて、つながれたままの手をどうにかしてほしかった。


仕方なく、そのまま本宮の執務室まで移動する。

誰にも見られることはなかったけれど、

つながれた手はルークと同じ体温になってしまった。


執務室に入りドアを閉めた後、すぐさまルークに抗議する。


「あんなこと言って、どうするのよ!?」


「仕方ないだろう。竜人が竜族と結婚するなんて、

 考えてみたら番だと言うしかなかったんだから。

 クライブ様もラディも、ちょっと考えたらわかるはずなのに」


「それもそうね……。

 婚約を言い出したのは竜王様だし、ラディもそれでいいって」


私たちを婚約させた時、気がつかなかったのだろうか。

数年後には竜人になるからいいと思っていたとか?


「こうなったら仕方ない。番だってことで通そう」


「え?そんなことしていいの?」


「……問題ないと思う。少なくとも」


「え?」


つないでいた手を離したと思ったら、

また腕の中に閉じ込められる。


「リディを抱きしめても、手をつないでも違和感がない」


「ん?それって、どういう」


「本当にリディが俺の番かもしれないってことだ」


「はぁ?」


確認しようとしているのか、ぎゅうぎゅうと抱きしめられる。

腕の力が強くて少し苦しいけれど、私としても嫌な気持ちはまったくない。

だけど、それが番だってことなの?


「そもそも、番って、どうやってわかるの?」


「竜人の番がわかるのは、普通は百歳をこえてからだ。

 その前にわかるのはよほど竜人として強いものだった場合。

 アーロン様がそれにあたる」


「百歳になっていないルークではわからないってこと?」


「探すことはできない。

 だけど、番なら身体が拒否しないはずなんだ。

 こうして抱きしめて嫌じゃないのなら、本当に番だって可能性が高い。

 さっき抱きしめてから番だと言ったのは、

 違和感があった場合は嘘をつかずに謝るつもりだったからだ」


竜人にとって番というのは本当に大事な存在だ。

簡単に嘘をつけるようなものじゃない。

だから、抱きしめて確認した。

違和感がないのであれば、番かもしれないから。


「どうしたら本当に番だとわかるの?」


「竜人同士であれば、竜化した状態で会えばわかる」


「私が竜化すればわかるってことなのね」


「ああ」


どちらにせよ、婚約は私が竜人になった時に判断されることになる。

それまで番だってことにしておいても問題はないのかもしれない。


とりあえず、このことは竜王様に報告したほうがいいのかな。


「ねぇ、いつまで抱きしめてるの?」


「ん?このままじゃダメか?」


「えええ。このままじゃ何もできないんだけど」


「わかってるけど」


竜人に力で敵うわけはないし、魔術で弾き飛ばすほどのことでもない。

ルークが機嫌良さそうにしているのもめずらしいし、

しばらくは好きにさせることにする。


でも、このままの体勢ではつらいと言ったら、

抱き上げられてソファに連れて行かれる。

隣に座った状態で腕をまわされ、ルークの首元に寄りかかる。


まぁ、この体勢ならいいかと力を抜いていたら、

身体がだんだん重くなって動けなくなってきた。


あれ……なんだかおかしい?


「……リディ?どうした?……熱が!?」




次に目を開けたら、私室のベッドに寝かされていた。

そのベッドの脇にいたのはエリナだった。


「目が覚めた?でも、起き上がっちゃだめよ」


「エリナ?」


「熱があるの。竜熱と呼ばれるものよ。

 リディは近くに竜族も竜人もいない場所で生活していたのでしょう?

 竜族なら子どもの時にかかるものなのだから安心して」


「竜熱?子どもの時にかかる?」


どうやら私は竜族のものがかかる竜熱という病気になったらしい。

成長するために必要なものでもあるので、いいことなのだとか。

三日ほど熱が出るが、それが下がった時には身体も竜気も成長する。


「竜王国に来て、竜気にふれる機会が増えたことで、

 身体の中の竜気が目覚めたのだと思うわ」


「もしかして、これで竜化する?」


「まだよ。竜熱は成長を促すためのもの。

 身体の成長が止まった時に竜化するわ。

 クライブ様の予想通り、数年後だと思うわよ」


「そっか」


まだ私は竜族として成長が始まったばかりなんだ。


あれ、そういえばルークはどこに行ったんだろう。

あんなにべったり張り付いてたのに、看病してくれたのはエリナなんだ。


なんとなく面白くなくて不貞腐れてたら、エリナがふふっと笑った。


「ルークはクライブ様に叱られているわ。

 さっきまでリディにくっついて離れなかったのだけど。

 番だと言ったことを説明しろと怒られてね」


「竜王様、怒っているの?」


「勝手なことをしたのだから怒られるわね。

 番かもしれないっていうのは、なんとなくわかるけど」


「わかるものなの?」


「だって、あの女嫌いだったルークが抱きかかえて連れてきたのよ?

 リディが熱を出した!助けてくれって。

 竜熱だって説明されてほっとしていたけど、

 クライブ様が呼び出さなきゃずっと付き添うつもりだったのでしょうね」


「……そうなんだ」


ルークは付き添わなかったわけじゃないんだ。

必死で助けを求めてくれた。


それがわかったらなんだか不貞腐れてたのが恥ずかしくなって、

毛布にもぐりこんで顔を隠した。



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