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13.先代の竜王とアーロン

「それにしても……本当にアーロン様の子孫だとは」


「俺も最初聞いた時は信じられなかったよ。

 ずっと探してたのに見つからないと思ったら、

 あんな辺境にいたなんて」


「探していた?」


「ああ。竜人でも他国と関わる仕事をしている者は少ない。

 だから俺とルークはアーロン様を探すように命じられていた」


「そうなの。探し出してどうするつもりだったの?」


「……あーそれは。言ったほうがいいのか?」


「あとから知るよりかましなんじゃないのか?」


ん?なんだろう。ラディとルークがこそこそと相談を始めた。


「あのな、落ち着いて聞いてほしいんだけど」


「うん」


「先代の竜王様の時代、竜王国は他国に侵略して、

 従わせていたの知ってるよな?」


「それはもう。世界の半分を属国にしたって」


「その原因、アーロン様なんだよ」


「は?」


意味がわからなくて首をかしげていたら、

ラディとルークも困った顔になる。


「まぁ、そうだよな。

 どこから説明したらいいかな。

 竜人っていうのは、番と呼ばれる相性のいい相手がいる。

 そして、なんとなく相手がいる場所がわかったりするもんなんだ」


「あぁ、だからアーロンはレンダラ国なんて辺境まで来たのね」


「さすがに辺境の国だとまではわからなかったと思うよ。

 でも、竜王国にいる竜人や竜族ではないとわかったんだろう。

 アーロン様は先代に番を探しに行くと言って出て行ってしまった」


「もしかして、許可を得なかったとか?」


出て行ってしまったという言い方に引っかかる。

何かしら原因を作ったのはアーロンなんだろうし。


「許可は一応は取ってたんだと思う。

 だけど、数年のつもりだったんじゃないかな。

 アーロン様が出て行って十年帰らなかった時、

 先代は怒りのあまり周辺国を攻撃し始めた。

 アーロン様を隠しているのではないかと疑って」


「えええ?そんな理由で」


「もともと人間が嫌いだったんだ。

 その上、大事な息子を人間の国に奪われたと思ったんだろう」


「なるほど……アーロンを探しているのはお父様ってことね」


「そういうこと。竜人は身内を大事にする。

 戻ってこなかったとしても、どうしているのか知りたかったんだと思うよ」


「そっか」


まだラディやルークにはアーロンが亡くなったことを言っていない。

竜王様に話した後で説明することになると思うけど。


「先代の怒りがおさまるまで戦争が続いたせいで、

 同盟国や属国が増えて管理する側は大変になった。

 それで先代も戦争をやめることにしたんだよ。

 あのまま続けてたら世界の全部が竜王国のものになっていたかもね」


「それは管理が大変そうね……。

 竜王国が戦争を始めたのは百三十年ほど前だっけ。

 その前の竜王国は竜人と竜族以外は入れなかったのよね?」


ずっと昔の竜王国は閉鎖的な国だったと聞いている。

今は同盟国や属国から人が来ていて、

人間でも竜王国に入れるけれど。


「今でも閉鎖的なところは変わらないぞ。

 竜人の中には竜族や人間を下等生物だと思っている奴もいるし、

 竜族でも貴族と平民にわかれている。

 平民の竜族は人間よりも自分たちは優れていると言い出す」


「そこは人間の国でも似たようなものだわ」


「それもそうか。

 まぁ、気をつけてほしいのは、

 リディはこの国で顔を知られていない。

 アーロン様の子孫だと公表するのは危険だし、

 ルークの婚約者だとしても反発するものはいるだろう」


「俺もなるべく離れないようにするが……」


ラディの心配にルークも顔を曇らせたが、

意味が違ったようだ。


「守るためとはいえ、やりすぎないようにな?」


「怪我をさせるくらいは平気?」


「は?」


「ルーク、こう見えてリディは結界もはれる魔術師だ。

 自分の身を守るくらいは問題ない。

 ただ意外と攻撃的な性格をしているから、

 相手を殺さないか心配している……」


「嘘だろう……」


「ええ?殺したりなんてしないわ。

 後々めんどくさそうじゃない」


「「………」」


どうせ絡んでくるのは竜王国の貴族だろうから、

殺してしまったら怒られるだけでは済まないだろう。

やられたらやり返すけれど。

怪我くらいなら許されるわよね。


「クライブ様に確認してくる……。

 多分、怪我くらいなら問題ないと思うが。

 くれぐれも!やりすぎないように。

 ルークもちゃんと見ててくれよな?」


「ああ、わかった。

 ラディはまた他国を回るんだな?」


「その予定」


「ラディの仕事は属国の監視?」


「そんな感じ。変な動きがないか属国を見て回るのが仕事。

 それと、俺も番が外にいる気がするんだ。

 だからクライブ様がこの仕事をくれた。

 竜王国を出ることなく、番を探せるようにって」


「そうなの。早く見つかるといいわね」


「ああ。リディのことはルークに任せて、

 明日からまた探しに行ってくるよ」


その言葉通り、翌日の朝、ラディは出発した。

数か国回ってくるから、しばらくは戻ってこないらしい。


仕方なくルークと一緒に行動をする。

まだ何となくぎこちないけれど、外宮の食堂へと向かう。

個室に入ると、ルークが食事を取りに行ってくれる。


「食事を取ってくる。ここで待っていて」


「わかったわ」


今までもラディと外宮の食堂に来ると、

竜族の女性たちからにらまれることが多かった。

だけど、ルークと一緒にいると、その数は数倍に増えた。


「どういうこと?

 ラディってもてないほうだったの?」


見た目はラディの方がもてそうなのに、

顔を半分隠しているようなルークの方がもてている。

血筋も身分もラディの方が上だったはずだけど。


その疑問は、エリナから渡された本を読んでわかった。





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