9フェルディナンドside2
ロジーナは僕と一緒に過ごすことを楽しんでいたし、僕もロジーナと過ごすうちに彼女の良さに惹かれていたのもある。
そんなことが起こった数日後、リヴィから王宮のお茶をしようと誘われた。久しぶりに二人で会ったけれど、とても嬉しかったんだ。
嬉しくなっていつもより饒舌になり、つい、話が弾んでいたのにリヴィの顔色は悪かった。
……ごめん。
僕は彼女に指摘されるまで全く気づいていなかった。そうだよね。
婚約者がいるのに他の令嬢と行動を共にしているなんて変な目で見られてもおかしくない。
リヴィの言う通り、翌日からロジーナと距離を置くことにしたんだ。だけど、距離を置き始めてから何日かするとロジーナが急に僕を人気のないところに呼び出した。
「ロジーナ、急に呼び出してどうしたんだい?」
「フェルディナンド様っ!」
突然、彼女は涙目で抱きついてきた。僕は突然のことで動けずにいた。
また令嬢達から虐められたのか??
だが、リヴィア様にも言われているし、これ以上彼女に関わることは出来ない。そう思って彼女に言った。
「ロジーナ嬢、困るよ。僕はリヴィア様の婚約者だ。これ以上、君と関わることは良くない」
「だってっ、だってっ。いじめられているのが辛くて、悲しくて、ごめんなさい。でも、フェルディナンド様に会ってお話が出来ると嬉しくてっ……」
「……ごめん」
「ならっ、学院で人の目があるのなら街に行きませんか?それなら誰も知らないし、人の少ないお店、私、知っているんです! そこなら何も問題ないですから」
「いや、でも……」
「大丈夫ですからっ! 私の知り合いのお店の人は口が堅いんですよっ! じゃぁ、私、放課後、ここで待っていますからっ!」
そうして押し付けられるように渡された小さな紙。そこには一軒の店の名前が書かれてあった。
彼女が一人店で待つ姿を想像して申し訳ない気分になり迷った挙句、その店に行った。
店内に人気はなく、とても過ごしやすい雰囲気で久々に彼女とおしゃべりを楽しんだ。
それからずるずると分かってはいたけれど、彼女と放課後落ち合って話をして時間を過ごすことが多くなった。
次第に場所はいつものお店だけではなく、様々な場所に出かけるようになっていったのは言うまでもない。
そして公爵家の馬車で彼女を家まで送り、自宅に帰る日々を過ごしていた。
……なのに。
あの日、僕はつい、軽い気持ちで彼女の誘いに乗ってしまったんだ。いつものように街へ出掛けて家まで送り届けた時。
「フェルディナンド様っ。良かったら家でお茶でも飲んでいきませんか?」
「え、いや、今日はこれで帰るよ」
「そう言わずに! 何とですね! 隣国でも滅多に手に入らない氷穴洞の茶葉を入手したんですっ!」
「そ、そうなんだ?」
「貴重品なんですよ?フェルディナンド様も絶対飲んだことのないお茶ですからっ」
僕は押し切られるように彼女の邸に入っていった。すると数人の侍女がすぐに彼女の部屋へと通してくれてお茶を味わうことになった。
……そこで僕はお茶に薬が盛られていたことに気づいた。
が、気づくのが遅かった。
段々と呼吸が荒くなり体温が上がって頭が回らなくなる。
……不味い。
すぐに部屋を出ようとしたが、ロジーナに抱きつかれて動けない。
「フェルディナンド様、お慕いしております」
そこから薬が切れるまで彼女と過ごしてしまったのだ。薬が切れ、冷静になるにつれて事の重大さに顔色が悪くなる。
「ロジーナ嬢……。君は最低だな」
「だってっ。こうでもしなければフェルディナンド様は私の元には来てくれないでしょう?」
抱きつきながら笑顔で話すロジーナに恐ろしさを感じた僕。
彼女を押しのけてすぐに公爵家へ戻り、父のいる執務室へと飛び込んだ。