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私たちはようやくシューンエイゼット国の王都に到着した。
王都は、アレンや彼が率いている軍が見えた途端、大きな歓声に包まれている。平民たちは手を振り、勝利を喜んでいるようだ。
カインディール国の王都もかなり大きな都市だったが、シューンエイゼット国の王都は更に大きいように感じた。
そして、統一された建物の造りや街道のあちこちから歓声の間に聞こえてくる楽器の音。この国はとても豊かだと実感する。
馬車は王宮へと辿り着き、私とダリアたちは王城の客間に連れていかれた。ダリアたちは私の従者として従者の部屋を与えられた。
半月もの間馬車に揺られている間にアレンから少しずつ話を聞いた。
アレンは自国に戻ってから私を妃に迎えようと、すぐにケルノッティの国王である父に連絡をしたけれど、カインディール国が邪魔してきたらしい。
アレンの父である皇帝に話をしたが、『自分の力で叶えてみろ』と発破をかけられたそうだ。
そして今回の戦争になったと。最初は戦争ではなく、アレン主導で協議を行っていたようだが、相手の王子は貿易品に対し高い関税を吹っ掛けてきたのだとか。
リヴィアのことについても、ドルク王子は知らぬ存ぜぬ、俺は関わっていない。どこにいるのかも分からないと答えようともしなかった。
話にならないと怒ったのは同行していた外交官や貴族たち。
何度も協議を重ねてはいたけれど、彼は虎の尾を踏み続け、とうとう戦争になった。
もちろんこれだけ早い期間に収束したのは、カインディール国に内通者や協力者がいたことが大きい。そして王家の政治を行う姿に疑問を抱き、腹に据えかねた人が多かったのかもしれない。
部屋に着いて早々、謁見の間に呼ばれた。すぐに戦勝報告をするのだとか。一番の功績は、軍を率いていたアレンなのだとか。
「リヴィア様、お迎えにあがりました」
アレンは満面の笑みを浮かべ、手を差し出した。私はアレンのエスコートで、謁見の間に向かった。
「アレン殿下、お待ちしておりました」
副官と思われる人と、軍の関係者三名がアレンに礼を執る。
「待たせたな。では行こう」
扉が開かれると、赤絨毯の先にはシューンエイゼット国の陛下と王妃様、宰相が立っていた。
陛下は武人ような体格で父よりも若く感じる。王妃様も同じで、凛としていて七人の子を産んだとは思えないほどだ。
私たちが歩いて陛下たちの前まで来た時、アレンと軍の関係者は礼を執った。私はケルノッティの礼を執った。
「アレン・ドルフ・ケネット、カインディールに進軍し、勝利を収め、この度カインディール国より戻りました」
アレンが口を開いた。私と軍の関係者は礼を執ったまま静かに待った。
『楽にせよ』陛下の言葉で私たちは元に戻り、陛下の言葉を聴いた。
「アレン、無事に戻ってくる事を祈っていた。ご苦労であった。ケルノッティ国の王女リヴィアよ、我が国によく来た。ゆっくりと我が国で過ごされよ」
「有難き幸せに存じます」
「アレン、よく戻りました。リヴィア・ジョール・ケルノッティ王女、アレンから話をきいています。アレンを助けてくれて有難う。感謝しているわ」
「シューンエイゼット国の王子殿下だと知らずご無礼をしてしまいました」
「無礼ね、ふふっ。そのおかげでカインディールが我が国になったのだから安い物よ」
王妃様は上機嫌のようだ。
そこからアレンの部下である軍の報告があった。死者の数が少ないことを考えると、カインディールの協力者は内部に深く入り込んでいる者なのかもしれない。
国民には一週間後に戦勝報告をすることが決まったらしい。
報告を終えて私は客間に戻った。
「ティポー、私たちはこれからどう動くのか聞いている?」
「大まかな流れは聞いています。一週間後に貴族や国民に向けての戦勝報告その後の舞踏会があるようです。リヴィア様が出席なさるのは舞踏会です」
「カインディール国は今どうなっているのかしら?」
「第三王子殿下がカインディールに入り、暫定的に治めていると聞きました。
カインディールが国として残るのか、領地の一部となるのかは治めてからになるようです。そしてカインディールの王族方はリヴィア様の後を追うような形でこちらに向かっているようです」
「シャーロット様は?」
「情報は入ってきておりません」
「そう、ありがとう」
シャーロット様は王都から離れているし、離縁したはずだから捕まってはいないと思うけれど、彼女のことを思うと心配でならない。
私はこの後どうなるのかしら。




