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隣国に売られるように渡った王女  作者: まるねこ


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 私が刺繍を始めて半月が経った頃、シャーロット妃から手紙が送られてきた。不安になりながらも封を開けて読んでみる。


「リヴィア様、いかがしましたか? あまり良い表情ではなさそうですが」

 心配したティポーが声を掛けてきた。

「ティポー、状況はかなり厳しいと言っていいわ。邸の使用人たちを呼び集めて頂戴」

「畏まりました」


 しばらくした後、玄関ホールに使用人たちはみんな集まっていた。突然の呼び出しにどうしたのだろうかと不安そうな使用人たち。


 ざわざわと互いに話をしていたが、リヴィアの姿を見つけるとピタリと話を止めて彼女を見つめた。


「みなさん、お仕事の手を止めてしまってごめんなさいね。

 みなさんも街に住んでいるので、ここ最近の街の変化に気づいていると思うわ。

 もしかしたら近い将来戦争が起こるかもしれないの。

 そうすればこの街は重要視されていない分、全ての事柄が後回しにされてしまう可能性がある。ここ最近庭を畑にするのを手伝ってもらったりしていたけれど、これからの可能性を見越して今からこの離宮でもやれることはやろうと思っているわ。

 そのために協力をお願いしたいの。いいかしら? ああ、でも、まだ戦争が始まっているわけではないから口外しないでほしいの。何か質問はあるかしら?」



 ホールに集まった使用人達からどよめきが起こった。料理人がそっと手を挙げた。


「リヴィア様、戦争が起こるって本当ですか? 私たちはどうすれば良いでしょうか」

「詳しくは話せないけれど、絶対に起こるという確証はないわ。

 でも、現在王宮はそのことで対応に追われているらしいの。何かあってからの対策では遅い。まず、私たちのやることは門扉の強化、それと今まで一部だった畑を広げること。

 つまり、敷地内の庭を全て畑に変えようと思っているわ」

「畑、ですか……?」

「えぇ、そうよ。戦争が始まれば食糧は奪い合いになり、街に食糧が入ってこなければ治安はどんどん悪くなる。民衆が暴徒化したらこの邸は真っ先に狙われるでしょうね。それを防ぐためよ。そして自衛のための戦闘訓練」


 リヴィアがそう答えると、使用人たちの顔色はどんどん悪くなっていく。


「不安を煽ってごめんなさいね。でも、最悪の事態を予想して今から取り組むの。協力してもらえるかしら?」

「「もちろんです」」

「ありがとう。細かい指示はこれから出していくわ。これから忙しくなると思うけれど、頑張っていきましょう」


 私が笑顔で締めると、使用人たちも気を引き締めたようにキリッとした表情に変わり、挨拶をして各人持ち場に戻っていった。


「ティポー、これから忙しくなるわ。そうだ、この街の食糧事情はどうなっているのかしら?」

「この街の食糧事情ですか。街を管理している者に聞いてみても良いかもしれません。すぐに問い合わせてみます」

「お願いするわ」


 こういう時にサッと自分で行動出来れば良いのだけれど、私は邸から出ることを許されていないため歯がゆく思う。


 離宮には執務室がないため、今後のことを考え、客間の一室を執務室に変えた。


 ダリアにお茶を淹れてもらい、計画を立てていく。

 午前中は邸の使用人総出で畑作りを優先していく。下女達は午後には街に戻っていくためだ。


 下女達は戦争が始まるという話題を口外出来ないとはいえ、自分達の食料品の備蓄や家庭菜園など家でできることをすると思う。


 それが徐々に広がればいい。そして手が空いた者達は護衛の指導で戦闘訓練に励んだ。


 自分達の命に直結するため一人ひとりの意欲は高いようだ。


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