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翌日、ゆっくりと起床し、後宮へと向かった。
後宮前にいた従者に話をすると、従者は『確認してきます』と私とティポーを置いて後宮へと入っていった。
しばらく待った後、従者が戻ってきた。
「付いてきて下さい」
従者は表情を変えることなく私達を連れて歩き出した。後宮に入ると一番に花が咲き誇る庭園が目に入ってきた。
その中に一人優雅にお茶を飲んでいる人がいる。きっとあの人が王妃様なのだろう。お茶を淹れている若い執事は王妃様のお気に入りなのかもしれない。
王妃様は花々に守られているかのように凛としてとても美しい人だ。私は王妃様の前に立ち礼をすると、王妃様は微笑んで席につくよう促した。
「初めまして。リヴィア・ジョール・ケルノッティ王女。私はこのカインディール国の王妃エリス・アンブロシュ・ベルツよ。謁見の間にいなくてごめんなさいね」
「いえ、こちらの方こそお気を使わせてしまい申し訳ありません」
「ごめんなさいね。ヴィリタス陛下が無理やりドルクの側妃にって貴女を指名してしまって。私がこちらに移っている間に全てが終わっていたのよね。
息子のドルクには私も呆れているのよ。午後はシャーロットに会うのでしょう?貴女ならきっと彼女と仲良くなれると思うわ」
気になることを聞いてみた。
「あの、王妃様。どうして私がドルク様の側妃に選ばれたのでしょうか? 飢饉の支援の交換条件として私は牛と一緒に送られたのだと聞きました」
王妃様は少し困った顔をしながらも微笑みながら答えてくれた。
「気分を悪くさせてごめんなさいね。本当はそんなことをするつもりは無かったのよ? 貴女を教えていた教師達から貴女の評判を聞いてこちらに呼び寄せようと思っていたのよ。
でもオリーディ王妃は貴女を女王にさせようと頑張っていたわ。
私としては三男のフェルツを婿にさせてケルノッティをより良い方向で治める手筈だったの。
けれどケルノッティの王は貴女のためだと思ってこちらが話をする前にさっさと婚約者を宛てがってしまったわ。
フェルツは私から見てもいい子なのよ。残念で仕方がなかったのよね。
そこからあなたをこちら側に引き込む機会を窺っていたの。
アンバーと息子達が馬鹿で良かったわ! 私もこっちで色々動いている間にまさかカインディールに送られてくるとは思わなかったけれど。
今回の件は陛下が勝手に決めたことだから覆すのは難しいけれど、ドルクの側妃にさせるのはもったいないと私は考えているわ。
私がどうにか出来ればよいのだけれど、後宮に下がってしまった身なの。
こちらから出来る限り動いてみるけれど、ごめんなさいね」
「こちらこそ、お気遣いありがとうございます」
「何か困ったことがあれば手紙を寄こしてちょうだい。これから色々とあるでしょうけれど、シャーロットと仲良くしてほしいわ」
「わかりました。こちらこそ宜しくお願いいたします」
そうして短い時間だったけれど、王妃様と話をすることが出来た。思っていたよりも私の評価は悪くない、のね。
一度部屋に戻った後、私はカレンデュラの間へと向かった。




