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隣国に売られるように渡った王女  作者: まるねこ


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 彼はどんな人なのだろう? 黒髪はカインディール国には少なかったはず。

 シューンエイゼット国王の一族は黒髪。そちらの国の出身なのかもしれないわね。

 それにしても彼を見れば見るほど疑問が浮かんでくる。


 日焼けして均整のとれた筋肉。

 商人ではないのかしら?

 目を瞑っているが、顔の造形は良い方だと思う。


 令嬢に人気があったのかしら?


 疑問が湧いては消えを繰り返しながら目が覚める事を楽しみに世話をしていたリヴィア。



 そうして彼が目覚めたのは三日後のことだった。


「目覚めた? ここはケルノッティ国の森の離宮よ」

「ケルノッティ……?」

「そうよ。貴方は怪我をして枝に引っかかったまま意識が無い状態だったの。私の名前はリヴィア。あなたの名前は?」

「アレンだ」

「アレン、あなたはなぜここに迷い込んできたの? ケルノッティの国民では無い服装だったわ。どこの人なのかしら?」


 私の質問に警戒心を露わにしたアレン。


「そう警戒しなくてもいいわ。森の離宮には私たちしか住んでいないわ」

「森の、離宮……? リヴィア様は王族なのですか?」


 アレンは目を見開き驚いている様子。まぁ、普通はそうなるかもしれない。権限など何にもない王族とは名ばかりだけれど。


「まあ、一応王族の籍には入っているわ。でも私はこの通り、離宮に幽閉されている身よ。

 気ままに暮らしているだけなの。アレンを助けたのも色んな話が聞けると思ったからよ?貴方が着ていた服は商人たちが着ている服でしょう?」


「……ええ。私はシューンエイゼット国とカインディール国を行き来する商人でした。私たちが行き来するのを良く思わない一部の人間に襲われて命からがら逃げてきたのです。他の仲間とはぐれてしまった」


「そういう理由があったのね。怪我が治るまでここに居ても構わないわ。置いておく代わりにカインディールやシューンエイゼットの街について教えてくれない? 人々の暮らしがどんなものなのか知りたいの」


「そんなことでよいのですか?私はスパイかもしれませんよ?」

「ふふっ、そうね。スパイだったらどうしましょう? 政治に携わっていたわけではないし、道具としても使えないと離宮に送られた私を人質にしたところで何も得はないわ」


「自分をそこまで卑下してはいけません。私はスパイではありませんが。しばらくここに置いていただけるのであれば助かります。私の行った街でよければお話ししましょう」


「嬉しいわ。でも、今日は目覚めたばかりだし、ゆっくり休んでちょうだい。ダリア、アレンの食事をお持ちして」

「畏まりました」


 目覚めたばかりで長居するのは彼の負担になると思い、早々に部屋を後にする。自室に戻り、ティポーにお茶を入れてもらいながら先ほどのことを思い返す。


 目を開いた彼。黒い瞳だった。


 話した言葉はケルノッティの言葉。流暢に話すのを聞いてシューンエイゼットの商人ではないのかもしれないと感じたわ。


 私を暗殺するために雇われた? 

 こんな役に立たない私に向けられた刺客? 


 馬鹿らしい。あの人たちがそんな手間を掛けるわけがないわ。それこそ富豪に嫁がせた方が利があると考えるだろう。


 ならばシューンエイゼットの間者?

 こんな何もない場所に?


 それこそ意味はない。まあ、政治に関わっていない私がどうこう考える問題ではないわ。

 彼が商人だと言うのなら商人として扱うのがいいように思う。


「ティポー、彼のことどう思う?」

「アレン様ですか?」

「ええ」

「どこかの貴族、というような感じは受けますね。カインディールとシューンエイゼットを行き来する商人という割りにケルノッティの言葉を流暢に話している。

 こんな小国の言葉を覚える必要はないですからね。もしかしたら上位貴族かもしれませんね。保護した当初は暗殺者かと思いましたが、持ち物を見てもそれらしい武器は持っていませんでした。

 商人ではないとしても襲われて逃げてきたのは本当かもしれませんね」


「ティポーもそう思う? まぁ、商人というのであれば商人として扱うしかなさそうね」「畏まりました」



 翌日、ティポーとモニカを連れて食事とお湯が入った湯桶とタオルを持ってアレンの部屋を訪れた。


「アレン、具合はどうかしら?身体を拭きに来たわ」

「!!! 王女殿下自ら!?」

「? ええ、そうよ? あなたが目覚めるまでこうして看病していたもの。それとリヴィアでいいわ」


 アレンは私の言葉に目を見開いて驚いて困惑している様子。


 ここは他にダリア家族以外いないのだし、私が拾ったのだから私が世話をして当然だと思っていたが違うのだろうか?


 ああ、そうよね! やはり同性のティポーに任せた方が良いいはず。すっかり忘れていたわ。私は一人納得した。


「そうよね、殿方が人前で裸を見せるのは駄目よね。ティポーの方がよいかしら?傷口の確認だけにするわ」

「リヴィア様、色々と違うと思いますよ……」


 ティポーが少し呆れているのを見て意味が分からず首を傾げる。


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