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第1話 ブルーシンガーライターの誕生

「ワーっ!!!!!!」


熱狂したファンの声がライブ会場に広がる。ステージ場で可憐に激しく孤独に踊る歌姫。彼女の一挙手一投足・歌声にファンが魅了されている。


「【夢を片手間にしてたあの頃】」


私はそんなファンの中で、ペンライトをギュッと握り、彼女の歌う様を遠くからモニター越しに見つめる。米粒くらいの大きさにしか見えない彼女は、目視じゃ捉えることができない。あーだから、双眼鏡が必要なんだって教えてくれたんだ。


「【私はどこへもいけなかったんだ】」


自然と曲に合わせて、身体が動く。体に電撃が走ったみたいに、言葉が身体の四肢に響いてくる。


「【心を殺す覚悟は持てるのに、自分を信じる覚悟は持てなかった】」


女友達に紹介してもらった天涯(テンガイ)という名前のシンガーライター。私と同じ21歳。


様々な有名アーティストによる楽曲提供と、若者の心を代弁する歌詞が評判を読んで、今やSNSのアイドルだ。


このライブのために私も全曲聴いてきた。全ての曲が、私の言いたいことを代弁してくれる。そして、今、このライブを聴いている。


「【やり残したことやればイイでしょって簡単に言わないで】」


私のことを歌ってくれているみたいに、彼女の歌は私の過去や現在や願う未来を言い当てる。まるで、彼女は私と同じ過去を歩んできたんじゃないかと、そう思ってしまう。でも、私と彼女の間には信じられないくらいの夢の車間距離が開いている。競馬で言えば100馬身差。到底追いつかない。


(カッコいい。ああなりたい)


周りからの賞賛。

共感。

好意。

尊敬。

天涯は、その全てを1人で背負う歌姫だ。


ステージの上でたった1人で。

自分の言いたいことが、みんなが求めてることなんて、そんな幸せなことはない。

もちろん、音楽が好きで、才能とか運とか人脈に恵まれて、精一杯努力して、今あそこにいるんだろうけど。


でも。


私の心の中は、


(けど、私もできそう)


この瞬間、

夢を叶えるのが難しいこの世界で、

私は夢を持ってしまったんだ。

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