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C3−P0 重なる気持ち

 あいつを殺す。

 その決意を宿した瞳は、暗く、深く、悍ましかった。


「待ってよマウ。私、政治は詳しくないけどさ、暴力以外で国を変えられるはずだよ。時間は掛かってもさ」


「言っただろうルージュ。僕と君は、もうそれぞれ違う道を歩んでいる。もう、ずっと一緒の幼馴染ではいられないんだ」


「殺したところで、絶対バレる!! マウも処刑されちゃうよ!!」


「構わない。平等な世界のために、この命、捧げるつもりだよ」


 どうしてそんな悲しいことを平然と口にできるのだろう。

 勘弁してよ。たとえゲームキャラでも、そう簡単に見捨てることなんてできない。

 まして相手は、ゲームの序盤から登場していたマウなのだから。


「行かせない」


 咄嗟に杖を出す。

 こうなったら、力づくだ。


「ここでマウを眠らせる!!」


 攻撃の意思を見せているのに、マウは杖を構えようともしなかった。

 ただじっと、私を見つめたまま、動かない。


「どうして、そこまで……」


「ほっとけないからだよ。マウ言ったよね? 私のこと危なっかしいってさ。マウの方が何倍も危なっかしいよ。……ねえ、やめようよこんなの。入学して間もないのにさ、マウを失いたくないよ」


 どうしよう。

 視界がぼやける。

 胸が苦しくって、楽になろうと言葉が吐き出る。


「最初はマウのこと怖い人だと思ってた。でも、マウはただ不器用で猪突猛進なだけで、本当はすごく優しい人だってわかった。私を心配して、守ってくれて、嫉妬深いとこも可愛いし、告白してくれて嬉しかった。嬉しかったんだよ」


 たとえその告白が、私ではなくルージュに向けられたものでも。


 目が熱い。

 頬を伝う雫は冷たいのに。


 虚しい怒りがどんどん込み上げて溢れ出す。

 マウの決意とプライドを前に、私はあまりにも無力だ。


「私のこと好きなんでしょ? じゃあもっと一緒にいようよ、マウ」


 瞬間、マウの腕が私を包んだ。

 優しく、でもしっかりと、私を抱きしめ離さない。


「ありがとう。愛してるよ、ルージュ」


 顔を上げる。

 綺麗な水色の瞳に私が映っている。


 マウ。

 マウ。


 あぁ、わたし、マウを好きになってる。


「行かないでよ」


 彼を繋ぎ止めるように、私はマウと唇を重ねた。

 私の、人生初のキス。


「マウ、大好き」


「僕もだよ。けど、ごめん……スリープ」


 あれ、意識が遠のいていく。

 魔法を使ったの?

 やだ、マウ。待って、待ってよ。


「マーー」


------------------------------


 目を覚ました時、私は保健室のベッドで横になっていた。

 死んだ? 違う、魔法で眠らされたんだ。


 保健室の先生が近づいてくる。


「起きたのね」


「あの、マウは?」


「マウくん? あなたをここに運んで、どっか行ったわよ」


 まさかマウ、もうルルクスを殺したのか?

 それとも失敗した?


 待って、だとしたらもっと騒ぎになっているはず。先生だって悠長にお喋りしていないはずだ。


「い、いま何時ですか!?」


「15時よ」


 私はベッドから降りると、走り出した。


 まだマウを止められる。

 きっと、ここが最後の分岐点。これ以上介入すれば、たぶん私は死ぬ。

 コンテニューになる。記憶が消えて最初からになる。


 マウのことも、サレナのことも、みんなのことを忘れてしまう。


 でもいい。構わない。

 マウを止めたいんだ。




 ふと、廊下の窓から外を見やる。

 ルルクスと付き人たちが校舎から出ていた。

 帰るのかな。


 狙うとするならここが最後のチャンスのはず。


 即死魔法エンドストームの射程距離は約5メートル。なら、マウは必ず彼に近づくはず。


 瞬間、ルルクスの付き人の1人が、杖を構えた。

 そして、


「ルルクス」


 姿が変貌していく。

 髪は青くなり、背も伸びる。


 変身の魔法!?


「父さんの仇だ、エンドストーム!!」

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