変化の始まり
「あっくんお〜そ〜い!女の子を待たせるなんて最低!」
約束の時間前に集合場所に着いた俺だが、先に着いてた日向が腕を組んで頬を膨らませてる。
「あの〜日向さんや、約束の集合時間まで後5分もあるんですが‥」
俺は右手に付けいてる腕時計を日向に見せ、集合時間前に到着している事をアピールする。
そもそも道具一式準備してるんだから、2人より時間がかかるの仕方ないじゃないか!!と思う‥
「あのね、あっくん‥」
日向が先程までと違って哀れんだ表情をしている。
いつもと違う日向の表情を見ると、俺も思わずドキッとするものだ。
「どうしたんだ日向‥」
「あっくんよ‥将来、彼女が出来た時の為に教えとくね。
約束の時間前でも女の子待たせると【この人、計画性がない人なのかな?】ってマイナスの印象を与える事に繋がる場合があるから気をつけた方が良いよ」
「そうなのか!?因みに何分前に到着してた方が良いんだ?」
「待ち合わせ時間の30分前かな!」
「30分前!?」
それは流石に早く着き過ぎなのでは思ったが、紗夜もウンウン!と頷いてる為、あながち間違ってないのかも知れない。
「そもそも、あっくんに彼女が出来るかは分かんないけどね。もしかしたら一生、彼女出来なかったり!笑」
からかいモードへ突入した日向が俺を煽ってくる。
「あっくんは女の子理解度が乏しいからな〜今年の誕生日は女心について書かれた本でもプレゼントしようか?笑」
「それは余計なお世話だ!」
お気に入りのおもちゃ(俺)で遊んでる日向はとても楽しそうだ。
「どぉどぉどぉ!落ち着きなさい淳さんや〜
20歳になっても彼女が出来なかった時はこの女神、日向さまが彼女になってあ♡げ♡る♡」
ぐぬぬぬ‥どうにかして日向にー矢を報いたい。
なにかしら良い策がないかと考えてる内に【これだ!!】と1つ思いつくも、それを実行するには紗夜の協力が必要だ。
「紗夜、ちょっと耳貸してくれ」
先程、思い付いた作戦を紗夜に告げ協力を依頼する。
「どんな反応するか楽しみだね!笑」
意外にも紗夜も乗り気で何故か嬉しそうだ。
ここから俺の反撃ターンが始まる。
「ほらほら、女神の機嫌が変わらない内にお願いします!っ返事しなよ。こんなチャンス2度と訪れないかもよ!笑」
「確かにチャンスかもな‥」
わざと間を空けて言葉を続ける。
「実は日向に黙ってた事があるんだ。俺と紗夜‥付き合ってるんだ‥」
「え?嘘!?ホントに!?いつから!?紗夜、あっくん言ってる事は事実なの‥」
「事実だよ!ごめんね黙ってて‥いつかは日向ちゃんにも報告しなきゃと思ってたんだけど、話すタイミングが難しくて‥」
「そういう事だ。日向、悪いな」
さぁ、どうだ日向さんや!後は嘘で〜すとネタバラシするだけ、【今どんな表情してるんだ】と気になった俺は日向に視線を向ける。
「え??日向‥お前泣いてるのか?」
「あれ、なんで私‥泣いてるんだろう可笑しいな‥」
俺は驚いた。今まで長い時間を一緒に過ごしてきたが日向が泣いてる姿を一度も見た事が無かったからだ。
紗夜も【これ、どうするの!?】と視線で訴えかけてる。
これは、今すぐにでも謝るしかない‥最悪、男の最終奥義を使うか‥
「日向、悪かった。紗夜と付き合ってるのは嘘だ。ホントにすまない」
「日向ちゃん、私もごめんね」
俺と紗夜の2人は、日向に謝る。すると‥
「なんちゃって!本気で泣いてると思った?演技だよ!演技!2人ともどんな反応するかなって!笑」
俺は心の中で叫ぶ、【演技だとぉ???】
「そもそも、あっくんと紗夜が付き合ってるなら長い時間一緒にいる私が気付かない訳ないよ!それにしても、私って女優のセンスある!?将来、国民的女優になれちゃう感じだったり」
「完全に日向の演技に騙されたわ!未来の国民的女優の演技力パナイっす」
「えへへ!今なら無償でサイン書いてあげるよ!釣竿に書けばいい?」
「頼んでないし!やめろ!笑」
今、目の前にいるのは俺が知っている明るくて元気100%ないつもの日向だ。やはり日向には泣き顔より笑顔が良く似合う。まぁ演技だったけれども笑
「ほら、あっくん!早くイカ釣ろう!時間が勿体無いよ」
俺の釣り竿を持ち、堤防先端の灯台下へ走る日向。
「おい!走ったら転ぶぞ」
俺も残り道具を持ち、日向の後を追う。
俺達3人のいつもの日常が始まる。
けれど、永遠なんてのは存在せずいつか必ず変化が訪れるのだ。
ただ‥1人‥紗夜だけがその変化に気付く。
「日向ちゃん‥淳君のこと‥」