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最後の前日

作者: 歩川 澪

─死のう。─

何でもない日の事だった。ただ、辛いこと苦しいことがあった訳でもない。いつも通りの今日。いつも通りの明日。変わったことといえば、明日自分を殺しにいくことぐらいだ。死にたいと思った理由はまぁ、強いて言うなら"生きたいと思う思い方が分からない"と言ったところか。これを言うとだいたいの人は異常者だと冷たい視線を送ってくる。何故そんな視線を送ってくるのか理解は出来なかったが、嫌悪されているのは分かった。嫌悪されながらここまで生きて分かったことだが、普通は皆、理由なく生きたいと思うものらしい。到底理解し難い世界だ。そんな世界に限界が来た。

─明日、生活費から余り出た財産全てを使って甘い飲み物と甘いお菓子を食べ、苦いコーヒーを飲んで、楽しい楽しいショッピングでもしてから死ぬか。─

そう決意して適当にテレビをつけた。丁度クイズ番組の時間らしい。それを意識半分注いで聴きながら、もう半分の意識で仕事を休む方法と"人生最後の1日"の計画を立てる。

─ふむ。やっぱり仕事を休むなら仮病だな。─

そうと決まれば早速連絡だ。電話だと声でバレてしまう可能性があるのでメールにしておく。『すみません。少し風邪をひいてしまったようで、明日はお休みを頂いても宜しいでしょうか?』そうメッセージを送って少ししたら返信が来た。メッセージを送ったのは上司にだが、暇なのか?返信が早い。『おお。明日は特に重要な会議もないし、大丈夫だぞ。お大事に。悪化させないよう気をつけろよ?』今返信を見て思う。恵まれた方だと。だが人はどれだけ恵まれても恵まれなくても、死にたいと思うもの、逆に生きたいと思うもの。『ありがとうございます。色々と、ご迷惑をお掛けします。』複雑な気持ちになりながらそう返した。

─色々と、ねぇ。─

自分で言いながらも保険をかけるというのは複雑な気持ちが付き物だ。と、考え事をしている内に一・二時間たっていた。クイズ番組はもう終盤。

─次回は番組十周年!特別SP四時間コースです!─

そんな台詞が聞こえてきた。次回なんて言葉は今の自分に存在しえない。唐突に思ったこととはいえ、本気なのだ。本気で終わらせる覚悟はある。さて、無事仕事は休めた。と言っても、もう永遠に行くことは無いが。

─次は明日、どう過ごすかの計画だな。─

計画プランはそう難しいものでは無かった。最後という言葉とは程遠いような、極々平凡な休日の過ごし方といったところだ。

1、お気に入りのカフェで抹茶のスイーツドリンクとスコーン、チョコデ二ッシュを食べる。

2、仕事でお世話になった缶コーヒーを買って飲む。

3、腹ごしらえが終わったら買いたいものを片っ端から買っていく。

4、買ったものを鑑賞したら死ぬ。

せっかく買いたい物を買ったのに、鑑賞するだけとは悲しいと思ったが、"買いたい物"というのは買えたならそこで欲は消える。だから買ってしばらく歓びに浸れれば十分だと思ったのだ。死ぬ、と簡潔にに書いたが具体的には飛び降りる。周りに迷惑はかかるだろう。だが今の自分が自分を殺すなら、飛び降りが一番出来そうだったのだ。人生初の殺人だ。加害者・被害者ともに自分。迷惑をかけることに罪悪感が無い訳では無い。ただ、それ以上に死にたいと思い行動に移すだろう。

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しばらくして主は眠った。明日をどう迎えようとしているのか、過去や真意は分からないが、自殺の意思は本物だ。明日、主は本当に死んでしまうのだろうか?ちゃんと死ねるのだろうか?全ては明日。明日という未来にかかっている。

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主の眠る部屋は、まるでもう主が死んでしまったかのような、そんな静けさだった。

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