第24話 旦那様からご伝言を承りました
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今話から第3章が始まります。よろしくお願いします
(* ˊᵕˋㅅ)
ジークハルトの親族との顔合わせの食事会から、約半月ほどが経った土曜日の朝。
「奥様。今晩なのですが、旦那様から奥様に居間にてお待ちいただきたいとのご伝言を承りました」
朝食が終わり食後の紅茶を飲んでいたソフィアに、侍女のテレサは穏やかに切り出した。
最近では、ジークハルトと共に朝食を摂っているのだが、今朝は彼が早朝から出かけているので給仕の手を煩わせるのは好ましくないと思い自室で摂ったのである。
また、ソフィアの私室は夫人の部屋ではなく、元々割り当てられていた部屋に戻っている。
「居間ですか?」
「はい。本日旦那様は商会のお仕事で外出をなさっており、ご帰宅は二十一時を超える予定です。ですが、もし奥様のご都合がよろしければお茶をご一緒になさりたいと仰っておられていたそうです」
「なんとっ!」
これは一大事である。
これまで朝食は共にできていても、夕食はジークハルトが多忙のためにほとんど共にできていなかった。
今回の深夜のお茶の誘いは夕食の招待の代わりなのかと思い、ソフィアは心を躍らせた。
だが、同時にふとある疑問が過る。
「あの、旦那様はお疲れではないでしょうか? それに、その……」
少々言いづらいために指をモジモジと合わせるソフィアに、なぜかテレサは温かい眼差しを向けた。
「はい。いかがいたしましたでしょうか」
「二十一時といいますと、わたくしは湯浴みを終えたあとで、その、寝巻きを着ております」
ソフィアは公爵家の屋敷に到着した当日から、毎晩テレサや古参の侍女のマサの手で湯浴みを行っていた。
最初は、人前に肌を晒すことさえも不慣れだったのでかなりしどろもどろだったのだが、最近ではようやく慣れてきたところだった。
「はい。左様でございますね」
「わ、わたくしの寝巻き姿など、とても見せられるものでは……はっ!」
ソフィアは慌てて弁明する。
「決して、ご用意をしてくださったネグリジェに不服があるわけではなく……」
「はい。存じておりますのでご安心ください」
テレサは、より暖かい眼差しをソフィアに向けた。
「あくまで、寝巻きの上に室内用のガウンを羽織っていただきますので問題はないかと思います」
「そ、そうですか」
そう言い切ってもらうと不思議と安心感が湧き上がるが、だが依然と不安感も残っていた。
何しろ、これまで殿方の前で寝巻き姿など見せたことがないのだ。
実家ではいないものとして扱われていたために、二歳年下の実の弟にすら寝巻き姿は見せたことはなかったのだ。
「ガウンを羽織るのなら、問題はなさそうですね」
「はい。まったくございません」
なぜか、テレサの温和な笑顔がいつもより強く感じるが、あくまで纏っている空気は穏やかなので彼女は普段どおりかとも思う。
そうして、ソフィアは残りのお茶の時間を今晩の居間での段取りをイメージをして過ごしたのだった。