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【書籍発売中】1年間お飾り妻のお役目を全力で果たします! 〜冷徹公爵様との契約結婚、無自覚に有能ぶりを発揮したら溺愛されました!?【完結】  作者: 清川和泉
第2章 お食事会

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第22話 話しておきたいこと

ご覧いただき、ありがとうございます。

 翌日の午後。

 ジークハルトは、父親のポールと姉のアリアを見送ったあと、一人執務室にて書類のチェックを行っていた。

 一時間ほど作業をすると、軽い疲労を覚えたので椅子から立ち上がり両腕を組んで伸びをする。

 すると、ふと窓の外から心地のよい笑い声が聞こえてきた。

 

 何気なく覗いてみると、簡素なデイドレスを身につけたソフィアが、侍女のテレサと共に中庭のベンチに腰掛けて談笑をしている姿が見えた。


 ジークハルトはソフィアの笑顔を一目見ると、胸の奥がざわつくような感覚を覚える。


「私は、彼女のことを……」


 呟くと、再び椅子に腰掛けて息を小さく吐き出した。


 ◇◇


 時は遡り、昨日。

 ソフィアとアリアが応接室を退室してから、約一時間後。


 ジークハルトと父親のポール、姉のアリアは、屋敷の二階にある居間(パーラー)のソファに腰掛けていた。


 ジークハルトは、食事会の後処理などを執事のセバスに命じ大広間の点検を終えると、元々声掛けしておいた二人が待つ居間へと向かったのだった。

 彼は先ほどの食事会用の衣服から私服のラフな白いシャツに黒のスラックスを身に着けている。

ポールも白のシャツにスラックス、アリアは先ほどよりもラフなデイドレスを着ていた。


「彼女ならば問題はないだろう。執務室に赴きエドワードから説明を受けたが、問題なく仕事を行っているようだ」


 そう言ったポールのその目は、どこか遠くを見ているように感じる。


「ありがとうございます、父上」

「私から夫婦関係の助言はあまりできないが、そうだな。妻の話を聞く機会は設けた方がよいだろうな……」


 ポールは更に目を遠くし、そんな彼の様子を受けてかジークハルトの脳裏には幼き頃の光景が過っていた。


(思えば、父上とあの人が会話を交わしているところを見たことがない)


「それでは、私はこれで失礼する」

「父上、ありがとうございました」


 ジークハルトは立ち上がり辞儀をすると、ポールは片手を上げて応えてから退室をした。


 ジークハルトはポールを見送ると、再びソファに腰掛けてアリアと向き合う。

 まるでそれが合図かのように、アリアが間を置かずに口を開いた。


「あなた、ソフィアさんとはどこで出会ったの?」


 アリアは開口一番、畳み掛けるようにジークハルトに疑問を投げかけた。


「以前にも話したとおり、友人の紹介で出会ったんだ」

「本当に? 夜会ではなく? そもそも、あのような女性が慣例どおりではない求婚をよく受け入れてくれたわね。正直なところ、なぜ彼女はこれまで婚約者がいなかったのかと疑問に思うほど素晴らしい女性だわ」


 自分にも他人にも厳しいはずの姉のアリアが、人を褒めている。それはとても珍しいことだ。


「ああ。俺もそう思う」


 アリアは目を細めた。


 ちなみに、ジークハルトが自分のことを「俺」と言える相手は限られており、今では数名の気心のおける友人と姉ぐらいである。

 ただ、姉とは幼い頃にはよく会話を交わしたが、ここ十年ほどは会ってもあまり会話を交わさなかったので、今夜は久しぶりの会話であり内心少し落ち着かなかった。


 また、ジークハルトは普段思考をしているときも大方俺とは使わないので、その人称には自分自身で違和感を覚えている。


「ジーク。わたくしは、実のところあなたが結婚した以上、テナーがこの家の爵位を授爵しなくてもよいのではないかと思っているのよ」

 

 アリアのその言葉は、ジークハルトにとっては予め予想をしていたことであった。

 ただ、当初であれば「ソフィアが子を授かるかは分からない」ためだと言ってその案は完全に突っぱねるつもりだった。


 だが、今は事情により方針は変えられないが心からはそう思っていない。


「そうだな。……ただ、子は授かり物であるから、授爵状の発行自体は取りやめないつもりだ」

「……そうね」


 アリアはティーカップを手に持ち、一口含んだ。

 ただ、ジークハルトは授爵状の発行に一年もかかることには違和感を覚えていた。


 審査期間があるとはいえ、事前に収集した情報では授爵状の発行は長くとも大方半年ほど完了するようなのだ。


 おそらく、国王が何かしらの圧力をかけておりそれはアリアも気がついているとは思うが、何分国王が絡んでいることなので強く追求することができないのだ。

 

「ともかく、あなたが結婚をしてくれて本当によかった。あなたには色々とあったから、これからも一生結婚はしないのだと思ったわ」


 ジークハルトの胸がチクリと痛んだ。

 そもそも、今回の結婚はエリオン男爵からの一方的な提案を引き受けたものであるし、一年間の契約なので周囲に報せるかは迷ったのだ。

 また、父と姉に真実を打ち明けることも躊躇した。


 ただ、箝口令を敷いてはいるがすでに一部の使用人には報せてあるし、万が一どこかで情報が漏れる可能性もある。


 そもそも、契約結婚でなくとも、結婚をしていること自体を隠すことは何かと難しいし、周知せずに親族が知ってしまえばそれは争いの火種になりかねないので結婚の報せは行ったのだ。


 ともかく、できるだけ早いタイミングで自分の口から事情を説明しようと思った。


 ただ、父親には打ち明けるタイミングがなかったので、まずは姉に打ち明けようと決意する。


「姉さん、実は俺たちの結婚について話をしておきたいことがあるんだ」

「……やはり、何かあるのね」


 アリアは小さく溜め息を吐いた。


「いくらなんでも、色々と不自然だもの。……一部の使用人はどこか目が泳いでいたし、不思議な緊張感があった。もちろん、お父様も気づいているとは思うけれど、あえて気づかないふりをしてくださっているのだと思うわ。まあ、叔父様は多分気づいていないと思うけれど……」


 その言葉にジークハルトは苦笑をするが、内心どこか安堵もした。

 やはり、父と姉には秘密にしておけないと実感する。


 そうして、ジークハルトはこれまでの経緯をアリアに打ち明けたのだった。

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