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【書籍発売中】1年間お飾り妻のお役目を全力で果たします! 〜冷徹公爵様との契約結婚、無自覚に有能ぶりを発揮したら溺愛されました!?【完結】  作者: 清川和泉
第2章 お食事会

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第18話 食事会の始まり

ご覧いただき、ありがとうございます。

 定刻になり、食事会が開始された。


 食事会の会場の中央に置かれた長方形のテーブルには、招待客らを含めた十名が一堂に会して食事をしている。


 始めは皆黙々と食していたのだが、前菜が終わりスープが運ばれてくると、徐々に会話が交わされる。 


「今日は、久しぶりにこの屋敷に来られて安心した」


 そう切り出したのは、ジークハルトの叔父のハリーである。

 ハリーには一人娘がおり、彼女が爵位を継ぐことになっていると記憶している。

 ちなみにこの国では、女性でも爵位の継承が認められているのだ。


「ハリーは、前回ここに来たのは十年ほど前だったか」

「いや、もっと前だろう。何しろこれまで……」


 ハリーは迷ったのか、そのあとの言葉を紡ぐのを躊躇っているようだ。


(最近まで、あまり交流がなかったのでしょうか?)


 ソフィアは疑問に思うが、立ち入ったことだと思いその疑問は胸にしまうことにした。


「そうだな。……そういえば二人は指輪をしていないようだが、まだ作っていないのか?」


 その質問にソフィアはドキリとするが、ジークハルトは涼しい顔をしている。


「はい。現在、指輪は注文をしており完成するのに三ヶ月はかかるそうです」

「そうか。大切なものだからな」

「はい」


 もちろん、それは架空の話である。

 実際に指輪の注文などしてもいないし、そもそもソフィアはこれまで指輪を一度も嵌めたことがなかった。


(結婚指輪ですか。わたくしは、きっとこれからもそういったものとは縁はないかと思いますが、せめて一度くらいは嵌めてみたかったですね。……いえ、やはりそれはわたくしには過ぎたことです)


 契約結婚の身とはいえ、ここ一週間ほど実家よりも遥かに好環境で生活していたからか、いつの間にか幸福な享受を当たり前のものだと思っているのかもしれないとソフィアは警戒の念を抱いた。


(いつか、このお屋敷を離れるときに辛くなるので、できるだけそういった幸せはいっそのこと知らない方がよいのです)


 もう現実を何も知らない、夢をだけを見ることのできる子供ではないのだ。

 自衛をしなければ、不意打ちを突かれて手酷い傷を心に負うことになるだろう。


 そう思い、何となく左手の薬指を眺めていると、ジークハルトが軽く咳払いをし、皆食事へと戻る。


 皆の動向を注意深く見守りながら、ソフィアは目前のアスパラガスのガスパチョをスプーンで口に運んだ。


(とても、みずみずしくて美味しいです‼︎ シェフには後で改めてお礼を言いにいかなければ! ああ、この感動を今すぐ誰かに伝えたいです‼︎)


 心が躍りそう思っていると、周囲の視線が自分に集中していることに気がついた。


(思わず表情に出してしまいました)


 慌てて戻そうとしていると、黒髪の女性が声を掛けてきた。ジークハルトの姉のアリアである。


「ソフィアさんは、とても美味しそうに食事をなさるのね」


 和やかな表情でそう言われたので、瞬間固まった身体が徐々に柔らかくなってきたようだ。


(これは、言葉どおりに受けとってもよろしいのでしょうか)


 ソフィアは、幼い頃から現在に至るまで貴族令息や令嬢らとほとんど交流をすることができなかったので、これがよく貴族同士で行われているという言葉の駆け引きなのかどうかの判断がつかなかった。


 なので、言葉通りに受け取ることにした。


「はい、とても美味しいガスパチョですので」

「そう。美味しく食事を摂ることはとてもよいことね」


 そう言って、アリアも食事を再開し始めたので、嫌悪感は抱かれていないのだとホッと胸を撫で下ろした。


 そして、ソフィアも再び食事をしようとガスパチョをスプーンで掬っていると、周囲に何かが床の上に落ちる音が響く。


 瞬時に音がした方を確認すると、アリアの息子のテナーがスプーンを床に誤って落としてしまったようだ。


「すみません」


 ソフィアは誰よりも早く右手を上げると、すぐさま駆けつけた給仕に小声である指示を与えた。

 

「かしこまりました」


 給仕は頷くと一度隣の控室へと移り、すぐに戻るとテナーに「特別製のスプーン」を手渡した。


 その様子にアリアは目を見開き、しばらく間を置いてから口を開いた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 自宅にボーイ?使用人やメイドじゃなく? レストランじゃないんだし貴族の使用人なら、手を上げなくてもすぐに来るような気もする。 というか視線で合図したりしないのかな? [一言] ちょっ…
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