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この結果を招いたんだよ!!(+スラク視点)

 スラク視点


「おいガランド、お前最近当主様に慣れ慣れしくないか?結婚して気分がデカくなったのか?」

「けっ、当主様は元仲間だ・・・多少の無礼は目ぇつぶってくれるじゃねぇか」

「お前・・・その態度は当主様が他の貴族にバカにされるキッカケになる、言う事を聞かないなら」

「分かったわかった!ったく執事サンは厳しいぜ・・・以後気を付けまぁす!」


 そう言っていた矢先、ガランドはデューク=エアドに随従して隣国スティバトで何者かによって殺された。俺はアイツに間違った事を言ったつもりはなかったが最後に和解できなかったのが残念だ。



「護衛君、君は頭が切れすぎる・・・もう少しゆったりと構えて冷静に物事を見る必要がある、でないと大事なものが見えなくなるぞ?」


 クロン・デューク=エアド前宰相の言葉が思い起こされる。でも俺は何としても当主様、マィソーマを助けてやれるように早く力をつけなきゃならねぇ。

 今ウルカン領を管理している代理人とは一度エアド閣下の紹介で顔を合わせたが、いかにもお坊ちゃんという感じが忘れられない。経営学を勉強中の俺が言うのも何だがこんなヤツにマィソーマの大事な領地を任せていいのだろうか?


 そのクロン・エアドも寝たきり状態となって会う事も出来ない。恩人である彼をこんな目に合わせた犯人を突き止めたいが、令息の新当主様は父親とは違い俺との面識がないから犯人探しの協力も仰げない。



 そうこうしている間に今度はアザヌが殺された。全身打撲で至るところが骨折しとどめは頭がい骨までやられていた。惨たらしい殺され方だ。

 情報を集めていると彼女は死ぬ前にウルカン領へ訪れていたらしい?執事の俺も足を運んだことが無いのに一体何をしていたんだ??



 当主様はアザヌの死をきっかけに王都屋敷の従業員を解雇し、王城でトラブルを起こしたウィンドルと同じく王命により王都を退去する事になった。

 「喧嘩両成敗で良かった」と当主様は喜んでいたけど俺は納得がいかねぇ。俺のマィソーマをバカにしたアーリン・ウィンドルなんぞちょっかいかけてきた使用人もろともダブルソードで切り裂いてやりてぇ。


 そんな中一枚の手紙が俺宛に届いてきた。


「依頼の件、該当者を確保・・・至急ギルドまで来られたし

                          -グラーナ-」


 やっと来たか。2ヵ月前に俺達の古巣のギルド・グラーナに依頼していた「エアド前当主に随行していた兵士の捜索」の件。もちろんガランドを殺害した犯人を捜すためだ。

 誰の仕業かは知らないがエアド閣下の兵士達は国に戻ってきた後、職を解かれてちりぢりにされてしまったようで見つけるのに時間が掛かってしまった。

 当主様をウルカン領に落ち着かせて食料の買い出しがてら、ロザリスの町に足を運んでみよう。



 ギルド・グラーナに入ると受付嬢が個室へ通してくれる。中にはクエスト受給者と該当者たる元兵士がいた。


「依頼を達成してくれて助かる、これは酒代にでも使ってくれ」

「おぅ、ありがてぇ!じゃ後は任せたぜ!!」


 クエスト受給者は喜んで部屋から出て行った。話の分かるヤツで良かった。


「お前はガランドの指揮下にいたエアド閣下の部下だったな?さっそくだが」

「お、俺は悪くねぇ!隊長の指示で動いたら気を失っちまって・・・気が付いたらギルドの治療室にいたんだ!その時には隊長はもう・・・」


「心配するな、別にガランドが死んだ責任をお前に押し付けたりはしねぇ・・・俺が知りたいのはガランドを倒したヤツの事だ、外見を覚えてないか?」

「あの時の事は正直記憶にねぇ・・・ただ隊長が言ってた事は覚えている、『弱虫野郎』とか『元パーティーメンバー』とか言ってたような」


 その単語を聞くと俺は頭の中の血が沸騰したような感覚になった。思わず元兵士の胸倉を掴む。


「なんだと!?テメェ、聞き間違いとかじゃねぇだろうなぁ!!」

「ち、違う!そう言ってた時はちゃんと意識はあったんだ!とにかく俺が言えるのはそこまでなんだよ・・・悪ぃがもう帰らせてくれよ、もうゴタゴタに巻き込まれるのはゴメンなんだ」


 泣き出しそうになって出ていく元兵士。俺はあり得ない事実を知って動けなくなっていた。

 もしかしてアザヌを殺したのもアイツなのか?こんな事マィソーマには言えねェ。


 犯人がヤツなら必ず俺のところへ来る。今のマィソーマには身を守る家臣はいない。だったら俺一人でアイツを片付けてやる。それで決着をつけた上でマィソーマを抱いてやる!


 デルト、いつでも来やがれ!



―――――



 スラクが僕に詰問してくる。


「その技の使い方・・・やっぱりテメェがガランドとアザヌをやりやがったのか、何であの2人を殺しやがった!?お前にとっても元仲間だろ?!」

「僕を追い出した君達を恨むなとでも?君の言ってる事は理不尽だよ」


「逆恨みなんだよテメェのは!!戦力ダウンにしかならねぇお前なんざすぐにでもボコってやったトコなんだ、マィソーマが庇ってたからみんな何もしなかっただけなんだよ!こっちぁ追い出しただけで済ませてやったのに恩を仇で返しやがって・・・ニコライ・ガルナノとエアド閣下をやったのもお前なのか??」


 この様子だとガランドとアザヌがお嬢様を裏切っていたのにも気づいてないな。面倒だけど説明してやろう。


「ガルナノにトドメをさしたのはガランドさ、アイツはクロン・エアドについてお嬢様を裏切ってたんだよ」

「なんだと?」


 やっぱり気づいてなかったか、ついでにエアドが言っていた青写真も教えてやろう。


「君はエアドに心酔しているようだけど知っているのかい?奴がお嬢様とこの国の第2王子と婚約させる予定だった事は」

「っ・・・なんだよそのふざけた話ぁ・・・?」


 スラクの顔が愕然としていく、いつも人に軽口ばっかり言ってくる顔しか見ていなかったのでかなり新鮮だ。


「エアドは2人を婚姻させてこの国の王太子とその妃にして国を牛耳ろうとしたかったようだ・・・だからガランドと一緒に適切に処理してやったんだ、お嬢様が大事な君なら理解できるだろう?」

「どこに・・・・・・そんな証拠がっ」


「そんなものはないよ、君達がそんな危ない橋を渡っていた事にすら気付いていなかったなんて・・・その上貴族が何よりも大事にしなければいけない領地や領民を放置していた領主に意見もできないとは・・・君はお嬢様の家臣失格だよ」


「な、ナマ言ってんじゃねぇぇぇぇぇぇ!マィソーマは俺のモンだ、俺は領民の事なんかよりアイツのモノになれればいいんだよ!!テメェなんざブッ殺してやる!!!真空波ぁぁぁぁあああ!!!」


 逆ギレして訳のわからない怒声を放ったスラクが再び真空波を放つ。

 僕も再びシールドを形成する、ただし。


「スモール・シールド・・・ぐっ」


 威力の弱いスモールではスラクの真空波の衝撃を受けてしまう。しかし予想通り瞬時に間合いを詰めてくるスラク。


「ハッ、やっぱりテメェは弱虫野郎だ!防御に専念しやがって願ったり叶ったりだ・・・小せぇ盾ごと切り裂いてやる、四枚おろし!!」


 振り下ろされるスラクの剣と下から受ける僕の盾が触れる瞬間・・・最大の電撃を放つ。隙の小さいスモールで対処したため次の技を放つタイミングはバッチリだ。


「シールド・インパクト!」


「ぐぁっ!ぅぐぅぅぅぅぅ!!」


 驚いた事にスラクは倒れず立っている。スラクのダブルソードは僕の電撃を思いっきり通したハズ、それでも倒れず耐えているなんて・・・仕方ないな。


 後ろで構えた左手に鬼力をこめて・・・前に振りかぶって放つ!


「アッパァァァアアア・ロォォォォド!」


「ぐぁぁあああ・・・ぎゃぁあああああああああああああああああああ!!!」


 水流に突きあげられたスラクは3メートル上のエントランスの天井に叩きつけられ落下する。


 そのまま起き上がってくるが目や鼻から血を流し痙攣している。アッパーロォドはアークさん直伝の技。シールド・インパクトの電撃も合わせてまともに食らった彼はもう致命傷のハズだ。


「はぁはぁ・・・て、テメェにマィソーマがヤれんのかよ・・・お嬢様お嬢様っつってた軟弱野郎が・・・」


「最後に一つ教えてあげよう、国王陛下ならびに貴族達はマィソーマ・カウンテス=ウルカンの爵位と領地の剥奪を決定している・・・6日後には現当主マィソーマ・ウルカンは公開処刑の予定だ」


「そ、そんなフカシ・・・マィソーマは王国のために戦」


「君も知っているアーリン・マークィス=ウィンドルがウルカン領の財政帳簿を国王陛下に提出して貴族達に訴えたんだよ、マィソーマ・カウンテス=ウルカンは領主の資格が無しだってね」

「な!・・・ウィンドル・・・あの野郎ぉ」

「そのウィンドルにウルカン領の財政帳簿を渡したのはアザヌだ、そうでなきゃ領の帳簿を他家のウィンドルが持っているハズがない」

「あ・・・アザヌまで・・・」

「貴族というのは領地に住む領民を守るのが義務なんだ、領主が権力闘争に明け暮れて領民達の生活を守れない・・・そんな領主を国王陛下や敵対している貴族達が野放しにすると思っているのか?」

「・・・・・・」


「そこまでお嬢様を追い詰めたのは誰だ?もちろんエアドに加担したお嬢様ご自身にも責任がないとは言えない・・・だが仲間達の裏切りにも気付かない君の杜撰な管理能力・・・いや君達の自分達さえよければという傲慢な気持ちがこの結果を招いたんだよ!」


 僕の言葉を聞いてスラクの顔が愕然となる。今まで理不尽に言い返していたスラクの口から返答がなくなってしまった。

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