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ここには冒険者しかいない(+ガランド視点)

 ガランド視点


「やぁお疲れ様だ、警備隊長君・・・まぁ一杯やりたまえ」

「は、はぁ・・・それじゃ失礼します」


 デューク=エアドの屋敷で行われたパーティーの警備で駆り出されていた俺。本当なら今日はアザヌとイチャラブする日だったのに当主様から仕事を任された。


 結婚式こそしてもらったがお給金は何も変わらねェ。きっとスラクのヤツが当主様に取り入って金を独り占めにしてるんだろう、元パーティーのリーダーは俺なのに。


 そして今、パーティーが終わって後片付けも終了し帰りかけたところをエアド閣下から止められて、直々に客間に連れてこられた。この人には俺達の結婚式の費用を立ててもらったらしく、結婚生活のアドバイスもしてもらったので頭が上がらない。


 言われるままにワインを味見すると途端に果物の香りが頭を襲う。


「く~~~~ぅめぇ!何だこりゃ最高級のワインじゃねぇか・・・はっ、す・・・すいません!!」

「はっはっはっ!正直で宜しい!そんな君に相談があって残ってもらったんだ」


 エアド閣下の話は・・・つまりはエアド家に鞍替えしないかという提案だった。

 当主様に恩のある俺は瞬時にお断りの返事をしようとしたが、閣下曰く「ウルカン領は旨みがない所」らしくこのままではお給金は更に減っていくのは間違いないそうな。


「ここだけの話だ・・・マィソーマ・ウルカン卿には良き縁談がある、相手はなんとこの国の第2王子・・・未来の王太子殿下だ」


 意外な話に驚いてしまう。それがホントなら当主様は王太子妃になってそれに仕えていた俺もやがては王国軍隊を預かる軍務職、いや将軍になるのも夢じゃねぇ!


「このまま何も生みださない領地を抱えて当主と共倒れになるか?それともここで方向転換して当主と共に高みに至る階段を駆け上がるか・・・簡単な問題だろう?」


 頭の悪い俺でも理解出来るように説明してくれる閣下。しかし・・・


「君の心配は分かる・・・この計画に邪魔なのはあの護衛君だ、彼はどうやら当主にただならぬ想いがあるようだな・・・しかし貴族の婚姻に恋愛は不要、君が私の手足となりこの話を進める事で当主に更なる栄誉を与える事になる、さぁ私の手を取りたまえ!」


 一時は当主、いやマイやスラクを裏切る事にはなる。けどマイにはカウンテス=ウルカンよりも格上の王太子妃になってもらえれば最高の恩返しができるじゃねぇか!

 マイに惚れているスラクもマイが王族になるなら諦めがつくってモンだ。何ならアザヌに頼んで新しい女を見つけてやってもいい。


「しかし閣下、おれ・・・ぃや私も恥ずかしながらご存じの通り妻を抱えておりまして何分にも」

「皆まで言うな、給金の事なら任せたまえ!!」


 フランクに笑う閣下。この人になら全部任せても大丈夫だ。

 俺と閣下はがっちりと握手を交わした。



 それ以降ウルカン家の警備の合間を縫ってエアド閣下に仕えている。閣下から支払われる給金を見ているとウルカン家のものなんざお小遣い程度だ。

 俺の気持ちはだんだんエアド閣下に傾き、忠誠を誓うようになっていった。


―――――


 ガランドの部下20人を倒した。電撃を流しているのでしばらくは起き上がれないだろうけどダメージは軽く済ませている。


「ぉ、俺の部下が全滅?・・・何だその技は・・・ホントに弱虫野郎なのか?!」

「ガランド、マィソーマお嬢様の臣下である君がどうしてデューク=エアドに従っている?」


「けっ、相変わらず真面目で融通の利かねぇ野郎だ・・・せっかく仕えるなら先の長い領主様って事だ」

「・・・なんだと?」


「あの女、下手にでてりゃ俺をアゴで使いまくりやがって・・・アザヌと結婚式挙げてもらったり初めのウチは羽振りが良かったが最近は給料賃上げ一つ聞きやしねえ!・・・そうだ、テメェを生かしたまま持って帰りゃアイツも言う事聞くかも知れねぇなぁ!!」


「・・・つまり、お嬢様を裏切ったと」


 僕の怒りが高まっているところへデューク=エアドがガランドを制止する。


「おぃ隊長君、遊んでいるヒマはないぞ!こうあっさり兵士達を倒されてしまっては作戦失敗だ!早く撤退を!!」

「ご心配なく旦那様、手早く終わらせるンで・・・作戦が失敗なら手みやげぐらいもらわねぇと・・・ぐはぁっ!」


 エアドと喋っている隙に間合いをつめた僕は右腕を振りかぶってシールドバッシュでガランドを叩きつける。


「っ・・・てめぇ!!」

「君は・・・こんな実力になってしまったのか?」


 錯覚でなければ冒険者時代の方が身体の動きにキレがあった。長い間のブランクがあったとは言え警備隊がこの腕ではお嬢様の身辺が心配だ。



「くそが、弱虫野郎が調子こいてんじゃねぇ!俺の真の力を見せてやる!ウィンドミルゥゥゥゥ!」


 そう言って距離を取ってから獲物のモーニングスターを振り回す。風属性で方向自在に的を射抜く恐ろしい技だが・・・。


「ミドル・シールド」


 シャバババババババッ!


 僕の盾から水が噴き出す。その瞬間異物が横に飛ばされた。小さなカミソリだ。これみよがしにモーニングスターを振り回しているので鉄球の攻撃と思わせる。


 しかし実際は風属性でコントロールされた小さなカミソリの放射が本命。大振りの動きに気を取られている隙にカミソリを命中させとどめに鉄球を加えるという容赦ない戦術だ。


「て、てめぇ・・・俺の技を見破ったのか?」

「そばで何回も見ていればね・・・こちらも行かせてもらうよ?ロォド」


 僕はアークさん直伝のロォド・水流の攻撃を無手の左手で放ちガランドにぶつける。武器を持たずに片手でスキルを放つと僕の属性は水か電の片方しか使えないようだ。けど全身の力で扱う盾の防御とは違い、属性の切り替えが出来るので便利だ。


 しかしガランドはさすがに重戦士を名乗るだけあってこの程度の水流では倒れない。


「ぐ・・・こんなモンで俺がふっ飛ばせるかよ!今度ぁこっちから行くぜ!モォォォニングスタ・・・あぐっ?!」


 動き出した瞬間、ガランドの手足から血が噴き出る。さきほどのカミソリで腱と動脈を切断した。左手のロォドを撃つ前に電属性の発する磁力で落ちていたカミソリをとりこみ、そのままガランドに返して取りつかせた。水を介してならカミソリのコントロールも可能だ。


 ガランドは血塗れとなって何もできないまま崩れ落ちる。


「ぐぁ・・・ぅ動けねぇ・・・何だって急に手足が・・・」

「今までお嬢様から恩を受けてきたのに自分勝手な理由でよくも裏切ろうとしてくれたね・・・適切に処理してやる」


 小盾カエトラに鬼力をこめる。お嬢様に害をなすのは許せない。


「な・・・ま、待て!俺が悪かった!追放した事なら謝るしもう二度とマイを裏切らねェ!だからここは」


「スパァァァクル・ロォォォォォド!」


 僕の盾から噴き出す水流が倒れ伏しているガランドを向こう一直線にふっ飛ばす。地面を走る僕のスパークルロォドはモンスターがかすっただけで動けなくなる電撃を持つ、人間がまともに食らえば即死だ。


「あぎゃぁあああああああああああああああああああ!!」


 派手に10メートルぐらいふっ飛び大木に打ちつけられたガランドは黒こげとなり二度と立ち上がらなかった。思わず人を殺めてしまったけど心に波風は立たない。


 ガランドが死んだのを見てデューク=エアドが逃げようとする。


「く・・・ここは撤退・・・なっ!?」

「ここまでした張本人は逃がしません、マィソーマお嬢様の意志ならともかく政治の駆け引きにお嬢様の婚姻を使って弄ぼうとした貴方は許さない!」


「ぉ、お嬢様?わ、私を始末すれば王太子殿下に嫌疑がかかるぞ!君も殿下を窮地に陥れたくはあるま」


「ここには冒険者しかいない・・・そう言ったのは貴方ですよ、シールドインパクト!」


 シールドごと突進してエアドを撃つ!


「ぐっはぁぁああああああああっ!!」


 痙攣して倒れるエアド。盾から伝わる電撃を与え血液を通して身体中に衝撃を与える技だ。怒りに任せて鬼力を流したので強い目の攻撃になってしまったか。



「そこまでだデルト!それ以上の攻撃は俺が許さん!!」


 いつの間にか殿下とコオゥさんが僕のそばに来ていた。


「ご心配なく・・・こちらは死なせてはいません、辛うじて」


 僕の怒りは収まらないけどさすがに宰相と分かってて死なせるのはまずい。行動不能程度に威力は抑えている。コオゥさんがエアドを調べる。


「・・・デルトの言う通り、気絶しているだけ」

「そうか、ここが他国で良かったというべきか・・・冒険者ギルドに依頼して彼らを治療してもらい本国へ運んでもらおう、本国で俺を追及する事はできないだろうしな」


 殿下の仰る通り、エアドがこの件を告発すれば王太子襲撃の疑惑も浮上する事となり宰相と言えど無罪ではいられないからだ。


 また彼が政務に復帰したとしても、前もって第2王子殿下にエアドとの接触に注意するよう忠告しておけば問題ないだろう。

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